菜果図録
マッシュルーム

 秋はきのこが美味しい季節。マッシュルームも9月から11月にかけてよく出回ります。マッシュルームはハラタケ科ハラタケ属に分類され、和名はツクリタケ、フランス語ではシャンピニオンと呼ばれます。一方、英語でマッシュルームというと、きのこ全般を指すというのは面白いですね。

 ホワイト種とブラウン種があり、世界的には消費量の9割以上がホワイト種。ホワイト種は上品でまろやかな風味が魅力で、生のままスライスするとサラダなどにもよく合います。ブラウン種は味も香りもホワイト種よりも強く、ソテーのように加熱調理すると濃厚な味わいを楽しめます。通常よく見かける直径3~5センチほどのサイズの他、6~10センチのジャンボマッシュルーム、13センチ以上のギガマッシュルームと呼ばれるものもあります。

 農林水産省が発表した令和4年産の地域特産野菜生産状況調査によると、全国の収穫量8,710トンのうち、第1位はその1/3以上を占める千葉県3,270トン、第2位は岡山県2,270トン、第3位は茨城県1,170トンとなっています。

マッシュルームの歴史

 原産地はヨーロッパの草原地帯といわれ、17世紀頃、メロンをきっかけに人の手による栽培が始まりました。温暖なアフリカなどが原産とされるメロンを寒冷なフランスで栽培するため、馬小屋の敷きわらを用いたところ、そこに白いきのこが発生したのだとか。パリ近郊の鍾乳洞などで大量に栽培されるようになり、フランスでは「シャンピニオン・ド・パリ(パリのきのこ)」と呼ばれるようになったのだそうです。

 欧米では広く知られるようになっていたマッシュルームが日本へ伝わったのは明治時代中期のこと。きのこ栽培の父と呼ばれた森本彦三郎氏がアメリカで栽培法を学んで帰国し、1922年(大正11年)に日本初の人工栽培に成功。国産マッシュルーム栽培を事業化し、発展させていきました。1964年(昭和39年)の東京オリンピックを機に、国産マッシュルームは最盛期を迎え、一時は年間30,000トンも生産されていましたが、やがて保存しやすい輸入缶詰が主流となって、国内生産量は1/10まで衰退。しかし近年、イタリア料理やスペイン料理などの人気に後押しされ、再び国産の新鮮なマッシュルームの需要が高まり、生産量が伸びてきています。

マッシュルームの栄養学

 マッシュルーム100g当たりの栄養価をチェックしてみると、15kcalと非常に低カロリーながら、たんぱく質は2.9g、体内の余分な塩分(ナトリウム)の排出を助けてくれるカリウムは350mg、ビタミンDは0.3μg、赤血球の生産を助ける葉酸は28μg、代謝やエネルギー産生などに関わるナイアシンは3.0 mg、善玉コレステロールを増やす働きが期待されるパントテン酸は1.54 mg、腸内環境を整えるのに役立つ食物繊維は2.0g含まれており、積極的に食べるべきヘルシー食材であることが分かります。

 ちなみに、マッシュルームのおいしさの秘密は、他のきのこにも含まれているグアニル酸に加え、トマトやチーズと同様にグルタミン酸が含まれている点にあります。うま味成分は2つ以上が組み合わさると相乗効果でよりうま味が強くなるという性質があり、グルタミン酸を含む昆布とイノシン酸を含むかつお節の合わせだしはよく知られていますが、マッシュルームにはもともと2つのうま味成分が含まれているため、うま味が濃いのです。

マッシュルームの選び方、保存法、調理のポイント!

 購入の際は、傘が開いておらず、軸が太く、表面がなめらかで、切り口が変色していないものを選びます。

 保存するなら、冷蔵で3~5日、冷凍で2週間は保存OKです。冷凍する際は、使いやすい大きさに切り、生のまま食品用保存袋に入れて冷凍し、凍ったまま加熱調理してください。

 調理の際、気になる汚れは水で湿らせた布巾などで拭き取ります。生食するときは、薄くスライスした後、レモン果汁をかけておくと変色が防げます。

マッシュルーム&ジャーマンポテト

定番のジャーマンポテトにマッシュルームをプラスしたら、マッシュルームのうま味が味のアクセントになって、おいしさ増し増しの一品になりました。ベーコンとソーセージのW使いで、食べ応えのあるボリューム感です。新じゃががあれば、ぜひ皮つきでどうぞ。

材料(2人分)
ブラウンマッシュルーム 6個
じゃがいも 2個
たまねぎ 1/4個
ソーセージ 3本
厚切りベーコン 2枚
刻みパセリ 大さじ1
オリーブオイル 大さじ1
小さじ1/4
粗びきこしょう 少々
作り方
  1. マッシュルームは半分に切り、じゃがいもは8等分に切って水にさらし、たまねぎは薄切りにし、ソーセージは斜め切りに、ベーコンは3センチ幅に切ります。
  2. ①のじゃがいもを耐熱皿に並べてラップをかけ、電子レンジ(600W)で3分ほど加熱します。
  3. フライパンにオリーブオイルを入れて火にかけ、①のたまねぎとベーコンとソーセージを中火で炒め、たまねぎがしんなりしてきたらマッシュルームを加えて炒め、マッシュルームに火が通ったら②を加えて炒め合わせ、塩と粗びきこしょうで味を調え、刻みパセリをふれば出来上がりです。
*ハラタケ科ハラタケ属

・傘が開いておらず、軸が太く、表面がなめらかで、切り口が変色していないもの選びましょう。
・種類:ブラウン種とホワイト種があり、サイズの大きな直径6~10センチのジャンボマッシュルーム、13センチ以上のギガマッシュルームもあります。

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written by

堀 基子

/文・写真

野菜ソムリエ上級プロ。J Veganist。冷凍生活アドバイザー。アスリートフードマイスター3級。ベジフルビューティーセルフアドバイザー。ジュニア青果物ブランディングマイスター。アンチエイジング・プランナー。受験フードマイスター。第6回・第8回野菜ソムリエアワード銀賞受賞。