菜果図録
秋の味覚の名脇役! すだち

 秋の味覚を代表する松茸や秋刀魚に添える柑橘類といえば、すだち。露地栽培のすだちは8月から10月にかけて収穫期を迎えます。すだちは、レモン、ライム、ゆず、かぼす、シークヮーサーなどと同じ香酸柑橘で、料理にギュッとしぼって清々しい香りと酸味を楽しみます。10月から3月にかけては露地栽培のものを陰干しして冷蔵した「冷蔵すだち」、3月から8月にかけては「ハウスすだち」が出荷され、年間を通じて入手が可能です。露地すだちは香りが強く、ハウスすだちは果汁が多くて酸味がやや控えめ、冷蔵すだちは酸味が比較的マイルドなのだそうです。

 農林水産省が発表した令和4年産特産果樹生産動態等調査の出荷量を見ると、全国の総出荷量2,278.7トンのうち、そのほとんど占めているのが2,229.6トンを出荷している徳島県です。

 徳島県全域で生産されていますが、神山町、佐那河内村、阿南市、小松島市、鳴門市、阿波市、徳島市、吉野川市、三好市などが主な産地となっています。その多くは山間部で、昼夜の温度差が大きく、降水量が多いため、質の高いすだちが栽培できるのだといいます。

徳島県が誇るすだち

 すだちの原産地は徳島とされ、江戸時代には食酢用の果実として栽培されていたようで、酢として使われる「酢橘(すたちばな)」が名前の由来になったのだとか。その愛らしい白い花は徳島県の県花に指定されており、すだちはまさに徳島が誇る特産物です。徳島県では1957年(昭和32年)に栽培が始まり、1960年代から生産が本格化。みかんの転換作物として1980年代から生産が広がり、徳島を代表する果物となりました。2023年(令和5年)3月31日には「徳島すだち」として地理的表示(GI)保護制度に登録され、徳島県をあげて消費拡大に取り組んでいます。

 すだちと混同されやすいのが、かぼすです。いずれも「ゆず」の近縁種で、緑色で丸い姿も似ていて、間違えやすいのですが、その違いは大きさを比べれば一目瞭然。すだちの果実が1個30gから40gでピンポン玉やゴルフボールほどのサイズであるのに対し、かぼすは100gから150gと大きめです。どちらも酸味がしっかりとしていて味わいもよく似ていますが、すだちは風味が強く爽やかで少量でもよく香り、それに比べると、かぼすはややマイルドだといわれています。

すだちの栄養学

 すだちの生の果汁100g当たりの栄養価をチェックしてみると、ビタミンC含有量は40mgと温州みかんよりも多く、体内の余分な塩分の排出を助けるカリウムは140mg、造血のビタミンとも呼ばれる葉酸は13μg含まれています。

 すだちの酸味はクエン酸によるもので、体内のカルシウムなどのミネラルの吸収率を高めるキレート作用や疲労軽減効果が期待されます。

 すだち特有の清々しく爽やかな香りを生み出す成分のうち、他の香酸柑橘にはない特有の成分が、その名もなんとスダチチンです。すだちの果皮だけに存在するポリフェノールの一種で、肥満抑制効果が期待され、研究が進められているそうです。

 すだちは量を食べる果物ではありませんが、料理に添えることで微量ながらビタミンやミネラルの補給に役立ち、しょうゆの代わりに焼き魚などにしぼれば、減塩にもつながります。

すだちの選び方と保存のテクニック!

 全体に濃い緑色で、つやと張りがあり、持ってみて重さを感じるものを選びます。収穫から時間が経ったものは、黄色い色ムラがでてきたり、果皮にしわが寄ったりして、香りや酸味が弱まってきますので、避けましょう。

 常温保存では3日ほどで黄色くなってしまい、酸味や香りが落ちてきますので、保存は冷蔵もしくは冷凍が基本です。表面に水分が付くと傷みやすくなり、一つ傷むと一緒に入れたほかの果実も傷み始めるため、キッチンペーパーなどで水分をしっかり拭き取ってから、4~5個ずつをポリ袋などに小分けにして冷蔵庫で保存します。使う際は、柔らかくなってきたものや黄色くなってきたものから使いましょう。

 たくさん入手したときは、横半分にカットし、個々にラップに包んで冷凍庫へ。使う際は常温で5分もあれば解凍できます。また、切らずに丸ごと冷凍すると、凍ったまますりおろして使えるほか、常温で10分ほど解凍すれば薄くスライスすることも可能です。

自家製すだちポン酢と塩ポン酢

しょうゆを加えるすだちポン酢は、煮沸消毒したガラス瓶に入れ、冷蔵庫で1カ月ほど寝かすと、まろやかな風味に。塩ポン酢は翌日から食べられますが、数日寝かせば、味わいがまろやかに。お好みのオイルを加えてドレッシングにしても美味です。

すだちポン酢

材料(すだち10個分)
すだち 10個(果汁50ml)
しょうゆ 50ml
みりん 大さじ2
昆布 5cm
かつお節 5g
作り方
  1. みりんは耐熱容器に入れ、電子レンジ600Wで30秒ほど様子を見ながら加熱し、ふつふつとしてきたら取り出し、粗熱を取ります。昆布はキッチンはさみで、くしの目のように切り込みを入れます。
  2. すだちの果汁を絞ります。
  3. 煮沸消毒したガラス瓶に①と②を入れてよく混ぜ、冷蔵庫で一晩寝かせ、清潔なザルでこして昆布とかつお節を取り除き、ガラス瓶に戻して冷蔵庫で1カ月ほど寝かせます。6カ月ほど冷蔵保存できます。

すだち塩ポン酢

材料(すだち20個分)
すだち 20個(果汁100ml)
みりん 大さじ4
大さじ2
小さじ2
昆布 5cm
かつお節 5g
作り方
  1. みりんと酒と塩を耐熱容器に入れ、電子レンジ600Wで1分20秒ほど加熱し、ふつふつとしてきたら取り出し、よく混ぜて塩を溶かし、粗熱を取ります。昆布はキッチンはさみで、くしの目のように切り込みを入れます。
  2. すだちの果汁を絞ります。
  3. 煮沸消毒したガラス瓶に①と②を入れてよく混ぜ、冷蔵庫で一晩寝かせ、清潔なザルでこして昆布とかつお節を取り除き、冷蔵庫で保存します。1か月以内に使い切りましょう。
*ミカン科ミカン属

・全体に濃い緑色で、つやと張りがあり、持ってみて重さを感じるものを選びます。黄色い色ムラがあるもの、果皮にしわが寄ったものは、鮮度が落ちていますので避けましょう。
・種類:「徳島1号」、「本田系」、2004年に品種登録された種なしの「徳島3X1号(愛称:ニューすだち)」などの品種があります。

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written by

堀 基子

/文・写真

野菜ソムリエ上級プロ。J Veganist。冷凍生活アドバイザー。アスリートフードマイスター3級。ベジフルビューティーセルフアドバイザー。ジュニア青果物ブランディングマイスター。アンチエイジング・プランナー。受験フードマイスター。第6回・第8回野菜ソムリエアワード銀賞受賞。