夏から秋にかけて私たちを楽しませてくれる梨。もうそろそろ旬も終わりかと思ったら、まだまだ収穫が続いています。梨には、和梨とも呼ばれるおなじみの「日本なし」、ラ・フランスやルクチェで知られる「西洋なし」、国内ではほとんど流通していない「中国なし」がありますが、今回は「日本なし」にスポットを当ててみました。

梨はバラ科ナシ属に分類され、同じバラ科の桜や梅にも似た愛らしい白い花を咲かせます。日本での歴史は古く、弥生時代にはすでに食べられていたようで、飛鳥時代には持統天皇が梨を植えるように命じたと「日本書紀」に記されています。明治時代に神奈川県大師河原(現・川崎市)で発見された新品種「長十郎」が江戸時代から栽培されてきた数多くの品種を席巻する人気を博し、千葉県松戸市で発見された「新太白」が「二十世紀」と改名されて大人気となりました。昭和以降は、今も人気の「新高」、「幸水」、「豊水」をはじめ多彩な品種が誕生し、現在栽培されている品種は50種類を超えるといわれています。
農林水産省が発表した令和5年産の日本なしの収穫量183,400トンのうち、第1位は12%を占める千葉県の22,400トン、第2位は11%を占める茨城県の19,400トン、第3位は9%を占める栃木県の15,800トン、第4位は8%を占める福島県の13,800トン、第5位は6%を占める鳥取県の11,700トンとなっています。最も多く作られている品種は「幸水」、次いで「豊水」、そして「新高」、「あさづき」、「二十世紀」、「新興」、「南水」と続きます。
品種別の梨カレンダー
梨の旬は品種によって異なります。代表的な品種でいうと、まず7月からは青梨の「菊水」と赤梨の「早生幸蔵」を交配させて生まれた国内生産量トップクラスの「幸水」が出回り始めます。8月には青梨を代表する鳥取県の代表品種「二十世紀」、鳥取県オリジナルの青梨「なつひめ」、青梨の常識を破る高糖度品種「秋麗」、鳥取県のオリジナル品種の大玉「新甘泉」など、9月には「幸水」と「二十世紀×石井早生」を交配して生まれた赤梨の定番品種「豊水」、「新高×豊水」と「幸水」の交雑で誕生した1玉500g以上に大きく育つ「あきづき」、果実が1kgほどになることから梨の王様と称される「新高」、「おさ二十世紀」と「豊水」の交配で生まれた鳥取県オリジナル品種「秋甘泉」、長野県生まれの赤梨「南水」など、10月後半から11月にかけては新潟県農事試験場で自然交雑実生から育成された大玉の赤梨「新興」、日持ちがよくお歳暮としても愛されている「にっこり」、大玉の赤梨品種「晩三吉(おくさんきち)」など、12月から1月にかけては1キロから2キロに育つ巨大な梨「愛宕」、新潟県で発表された赤梨の大玉品種「新雪」などが旬を迎えます。
梨の栄養学
100g当たりの栄養価をチェックしてみると、88%が水分で38kcalとカロリーが低く、食後血糖値が急激に上がりにくい低GIフルーツで、ダイエット中にもオススメです。そして、体内の余分な塩分の排出を助けるカリウムは140mg、造血のビタミンと呼ばれる葉酸は6μg、疲労回復に役立つアスパラギン酸も140mg含まれています。
特有のシャリシャリとした食感は、種子を守る石細胞という硬い細胞によるもので、食物繊維と同様にお通じの改善に役立ちます。また、甘み成分の一つとして含まれているソルビトールにも便を軟らかくする効果があるため、梨は便秘解消に最適の果物です。
さらに、梨にはプロテアーゼというタンパク質分解酵素が含まれているため、すりおろして肉料理の下ごしらえなどに使うと、肉がやわらかく仕上がります。韓国では焼肉やプルコギの漬けだれに梨をすりおろして加えるそうですが、梨のプロテアーゼの働きを生かした素晴らしいアイデアだと思います。
梨の選び方と保存のテクニック!
購入の際は、表面に傷がなく、果皮に色ムラがなく、形がいびつではなく均等に丸く、ずっしりと重みがあり、軸が太いものを選びます。
あまり日持ちしないので、すぐに食べるなら冷暗所の保存でOKですが、数日ならポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室へ。赤梨は赤みが強くて表面がザラザラしていないものから、青梨は果皮が黄緑色のものよりも黄色いものから先に食べるのがポイント。長く保存しているとシャリシャリ感がなくなり、シンナーのような過熟臭がしてきますので、早めに食べきりましょう。
梨のチョップドサラダ
梨のフルーティな甘みとサクサクとした食感がアクセントになった、大きめのスプーンでワシワシと食べたいチョップドサラダ。食材をもう少し細かい粗みじん切りにして、レモン果汁とオリーブオイルの量を増やせば、肉や魚のソテー、刺身のカルパッチョなどによく合うラビゴットソース風にも。

材料(2人分)
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梨 |
1/2個 |
| ● |
黄パプリカ |
1/4個 |
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紫たまねぎ |
1/2個 |
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きゅうり |
1/2本 |
| ● |
セロリ |
1/2本 |
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ミニトマト |
6個 |
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ブロッコリースプラウト |
1/2パック |
| ● |
レモン果汁 |
大さじ1 |
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エクストラバージンオリーブオイル |
大さじ2 |
| ● |
塩 |
小さじ1/2弱 |
| ● |
粗びきこしょう |
少々 |
作り方
- 梨と黄パプリカと紫たまねぎは1センチ角に、きゅうりは縦1/4に切ってから5ミリ厚に、セロリは薄い小口切りに、ミニトマトは4等分に切ってから半分の長さに切ります。
- ①にレモン果汁、オリーブオイル、塩とこしょうを加えて全体を混ぜ、よくなじませます。
- 器に②を盛り、洗って水気を切ったブロッコリースプラウトをのせます。
*バラ科ナシ属
・表面に傷がなく、果皮に色ムラがなく、形がいびつではなく均等に丸く、ずっしりと重みがあり、軸が太いものを選びます。
・種類:「幸水」、「二十世紀」、「なつひめ」、「秋麗」、「新甘泉」、「豊水」、「あきづき」、「新高」、「秋甘泉」、「南水」、「新興」、「にっこり」、「晩三吉(おくさんきち)」、「愛宕」、「新雪」などの品種があります。