11月から12月にかけて、直売所などで見かける菊芋。夏から秋にかけて咲く黄色い花が菊に、根が芋に似ていることから、この名が付いたとされています。しょうがに似た姿から中国では「洋姜（ヤンジャン）」と呼ばれ、味が似ているところから英語では「エルサレム・アーティチョーク」と呼ばれているのだとか。キク科ヒマワリ属に分類され、その肥大した根を食用にしますが、菊芋の豊富に含まれる水溶性食物繊維の一種であるイヌリンという成分に注目が集まり、近年はスーパーフードとして健康意識の高い方の間で人気を博しています。

　公益財団法人日本特産農産物協会が発表した令和2年産地域特産作物に関する資料によると、チップやパウダーなどの加工用と生薬原料として栽培している菊芋のうち、最も生産量が多いのが山形県で116,720kg、2位は熊本県の50,096kg、3位福島県の42,574kg、4位は佐賀県の36,745kg、5位は福岡県の24,720kgと続き、長野県や青森県をはじめ各地で栽培されています。

菊芋の歴史と種類

　原産地は北アメリカの北部といわれ、アメリカ大陸の原住民であるアメリカインディアンが古くから栽培していたのだそうです。日本へは1859年に来日したイギリス駐日総領事によってもたらされ、明治以降に栽培が本格化し、食用、飼料、アルコール製造用などに広く利用されていました。戦後に入り、その存在はすっかり忘れ去られていましたが、非常に強い繁殖力を持つことから生き残ったのだそうです。

　菊芋には、よく見かける白菊芋と、全体に赤みを帯びた赤菊芋があります。白菊芋はあっさりとした風味で、ゆでるとじゃがいものような柔らかさになります。赤菊芋の皮をむくと中は白菊芋と同様に白いのですが、味わいが濃厚で、加熱しても歯ごたえがあります。

菊芋の栄養学

　菊芋100g当たりの栄養価をチェックしてみると、たんぱく質は1.9g、体内の余分な塩分（ナトリウム）の排出を助けてくれるカリウムは610mg、赤血球の生産を助ける葉酸は20μg、腸内環境を整えるのに役立つ食物繊維は1.9g含まれています。

　菊芋に含まれる栄養素の中でも特に有名なのは、水溶性食物繊維の一種であるイヌリンという成分です。イヌリンは、ごぼう、にんにく、たまねぎなどにも含まれていますが、菊芋には特に豊富に含まれているといわれています。イヌリンは100％腸内細菌に利用される食物繊維で、腸内菌を増やして腸内環境を調え、血中に含まれる中性脂肪を減らすといった効果が注目されており、食後の血糖値の上昇を緩やかにする効果が期待されることから、「天然のインスリン」と呼ばれるようになりました。ただし、食べ過ぎるとお腹がゆるくなる場合があります。

　また、キク科の植物にアレルギーのある方の場合、菊芋でアレルギー症状を発症する可能性がありますので注意が必要です。

菊芋の選び方、保存法、調理のポイント！

　購入の際は、丸みがあって大きく、硬く引き締まっていて、皮につやがあり、傷がないないものを選びます。柔らかくなっているものは鮮度が落ちていますので避けましょう。

　保存するのであれば、土付きのまま新聞紙などで包み、冷暗所や冷蔵庫の野菜室へ。あまり日持ちしないため、1週間以内に使い切りましょう。

　調理するときは、皮が薄いため、気になる硬い部分などを取り除けば、皮ごと食べられます。

生のまま皮をむいてスライスや千切りでサラダや和え物にしたり、薄くスライスしてチップスにしたり、揚げ物や煮物にしたりと、使い勝手のいい菊芋ですが、今回はきんぴらにしてみました。たくさん入手したときは、きんぴらにして小分けにし、冷凍保存しておくと、あと一品欲しいときやお弁当に便利です。