実家があったのは田畑の多い地域で、季節ごとにいろいろな野菜をいただく機会が多かったが、叔母の野菜は、大きさ・みずみずしさ・素材の甘さがそれらとは別格だった。特に大根はおろして食べるとシャキシャキとしていて、味の違いが際立っていたように思う。叔母の畑は牛舎の横にあり、野菜は牛や家族の健康を考えた無農薬栽培だった。とても働き者の叔母で、早朝から牛の世話をして、ちょっとした合間に畑作業をしていたようだ。子どもながらにも肥えた土地で野菜を作ることのぜいたくさやおいしさを感じ、言葉ではなく味で教えてもらっていた。
野菜ソムリエとなったのは、こういった子どもの頃の体験を通して、野菜を食べるだけでなくもっとおいしく楽しむための知識を身につけたいとも思ったからだ。資格取得後は、家庭で料理を作る時に、旬・栄養・色・食べ合わせ・家族の体調の考慮などまで自然と心がけられるようになっている。今後は、様々な情報や商品がある中、安全な食べ物を選び、食べる事の大切さを伝える事ができる野菜ソムリエプロになりたいと思う。
さて、幼い頃から食べ馴染んでいる「小煮しめ」だが、今は、嫁ぎ先の父が自家用に栽培した大根をつかって、母がこしらえてくれている。実家の祖母の味と、嫁ぎ先の母の味では、家ごとの微妙な違いがあるが、どちらも大好きな味であることに変わりはない。そして、それらの味に近づこうと作ってはみるのだが、今ひとつ納得のいく味には至っていない。まだまだ修業中なのである。