野菜ソムリエの思ひ出の味
野菜の色や形に感じた不思議。

 8歳か9歳の頃だったと思う。一緒に暮らしていた祖母からおつかいを頼まれ、大きなかごを持ってひとりで八百屋さんへ行った日のことだった。店先には、にんじん、なす、きゅうり、だいこん、ピーマン、今では珍しいマクワウリなどが並んでいた。にんじんはオレンジ色、なすは紫色、きゅうりは緑色、ほうれんそうは緑色だけど根っこが赤い。だいこんは白くて大きい、きゅうりは細長くてイボイボがある、キャベツは一枚ずつの葉が中に包まれている。それぞれの野菜の色や形がどうしてみんな違うのか・・・と、とても不思議に思えたのだった。

 子どもの頃に抱いた「野菜の不思議」への興味はずっと薄れることなく、大人になっても消えることはなかった。そして王理恵さんが野菜ソムリエになられたことを知り、いつか私も野菜ソムリエになりたいという思いが募っていった。
 時が経ち、多忙だった制作プロダクションを卒業し、母の介護を終えて、長い間温めていた野菜ソムリエの資格取得へとやっとたどり着くことが出来た。試験に二度も落ちてくずおれそうになる気持ちにむち打ち、やっとの思いでの資格取得だった。しかしそのおかげで、私の世界は広がった。素晴らしい先生方や友人との出会いは何よりの宝となった。また、野菜ソムリエとはまったくつながりのない方との出会いから、資格を生かせる依頼をいただくことにもつながっている。

 念願の野菜ソムリエとなってからも「野菜の不思議」への興味はもちろん尽きることはなく、元々好きだったイタリアの野菜にも興味が広がっている。なかでも、複雑な形状と緑のグラデーションに子どもの頃のような感覚で衝撃を受けた「プンタレッラ」に惹かれている。他にも、キオッジャ、フィノッキオ、チーマデラパなど、次々にイタリア野菜の面白さにはまっていった。独学ではあるが一つ一つの野菜の形や色などをイラストにしながら、原産地や歴史などの知識を深め、食材としてどんなレシピが向いているのかにも挑戦してみている。

 現在は、年配のお父さんたちを対象にした男の料理教室や、NPO団体 「富士見みんなでプロジェクト」で、ご両親がお仕事をされていて帰宅が遅くなる家庭のお子さんや、一人暮らしの高齢者、お父さんが仕事で帰宅が遅いお母さんと子供たちなど、みんなで一緒においしい食事をしようという月1回のイベントなどの活動をしている。今後はさらに知識を深め、いずれは料理企画やオリジナルメニューの開発などができればと考えているが、まだまだ勉強中である。

柴田 妙子さんのプロフィール
埼玉県在住。野菜ソムリエプロ、冷凍生活アドバイザー、メンタルフードマイスター2級。イラストレーター、エディター。小学校入学を1年遅らせようかと言われたくらい小さかった私が、大きな買い物カゴを引きずって野菜を買いに行きました。その頃から野菜の不思議が不思議でした(笑)半世紀を経て、野菜ソムリエプロとしては説得力のない体型になってしまいましたが・・・。
インスタグラム @okeat321
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タナカトウコ

/取材・文

野菜ソムリエプロ、ベジフルビューティーアドバイザー。薬膳や漢方の資格も複数保有し、「食」を軸に多角的に活動中。書籍に「日本野菜ソムリエ協会の人たちが本当に食べている美人食」「毎日おいしいトマトレシピ」「旬野菜のちから−薬膳の知恵から−」等がある。
ホームページ http://urahara-geidai.net/prof/tanaka/
インスタグラム toko_tanaka