菜果図録
だし効果、肉やわらか効果も!舞茸

 秋の味覚を代表する、きのこ。中でも、豊かなうま味と香り、シャキシャキとした食感で愛されているのが舞茸です。菌床栽培で生産されたものが年間を通じて店頭に並び、その生産量の約6割を新潟県産が占め、次いで静岡県、福岡県、長野県、北海道、群馬県と続きます。貴重な天然物が採れるのは9月下旬から10月にかけて。非常に希少なため、発見者が喜びのあまり舞い踊るので、この名が付いたともいわれています。

山深い森の奥で育つ幻のきのこ

 舞茸をはじめ、きのこは野菜売り場に並んでいますが、実は麹(こうじ)やカビと同じ菌の仲間で、きのこは子実体(しじつたい)と呼ばれる菌糸の集合体なのだそうです。また、「きのこ」という名前の通り、樹木の周囲や根元に生えることが多く、天然の舞茸はナラ、ブナ、シイなどブナ科の落葉広葉樹を好み、その根元に生えるのだとか。
 舞茸の中でもっとも希少価値が高いのは、「幻のきのこ」と呼ばれる天然物で、風味も食感も格別と称えられます。人工栽培のものでも、原木栽培で育てたものは、天然物に近い風味を持つといわれます。一方、菌床栽培のものは、安定した品質のものが、手軽な価格で購入できるのが魅力です。
 かさの部分が茶褐色、茎は白いのが一般的な舞茸ですが、近年はかさの部分も白い「白マイタケ」も店頭に並んでいます。舞茸を煮るとポリフェノールで煮汁が黒ずみますが、白マイタケは煮汁に色が付かないため、汁物や煮物に重宝します。

ベータグルカンとプロテアーゼに注目!

 舞茸には、カルシウムの吸収を助けるビタミンD、腸内環境を調える食物繊維など、健康を支える成分が豊富に含まれていますが、近年とりわけ注目されているのが食物繊維の一種ベータグルカンです。他のきのこにも含まれていますが、特に舞茸に多く、免疫力を高める働きが期待されています。
 また、たんぱく質分解酵素プロテアーゼも多く含まれているため、刻んだ生の舞茸を肉にまぶし、ラップで包んでおいてから調理すると、肉料理がやわらかく仕上がります。刻んだ舞茸は一緒に焼いて付け合わせやソースに使いましょう。一方、茶碗蒸しに生の舞茸を加えると、このプロテアーゼの働きで卵液が固まりにくくなるので、ご注意くださいね。

冷凍保存と加熱温度でうま味UP!

 きのこはあまり日持ちしないため、保存するなら冷凍がおすすめです。水洗いすると風味が落ちてしまうので、気になる汚れを湿らせたキッチンペーパーで拭き取った後、小房に切り分け、食品用ポリ袋に入れ、できるだけ空気を抜いて密封し、冷凍しましょう。冷凍なら1カ月は保存できます。しかも、冷凍してから加熱調理すると、細胞膜が壊れ、酵素の働きによってうま味が増えるといわれています。
 また、舞茸を含め、きのこのうま味成分が急増するのは60~70℃といわれ、この温度帯でじっくりと加熱するのがポイントになります。汁物や煮物を作る際には、火にかける前にきのこを鍋に入れ、鍋の底からふつふつと小さな泡が立ってきたら火力を弱めて加熱しましょう。


おかわり必須!舞茸ご飯

 舞茸のうま味と食感を生かすには、炊飯器に一緒に入れて高温で炊き込むのではなく、別に弱火で煮ておき、炊き上がりに加えるのがポイント。煮汁を加えてご飯を炊くことで、ご飯の一粒一粒にうま味がしみ込みます。冷凍しておいた舞茸を使えば、さらにうま味がアップし、より一層おいしく仕上がります。

おかわり必須!舞茸ご飯
作り方
  1. 舞茸1パックは小房に切り分け、油揚げ1/2枚は細く刻み、昆布だし汁100ml、しょうゆ大さじ1、みりん大さじ1を合わせた煮汁に入れて火にかけ、鍋底がふつふつと泡立ってきたら弱火にし、火が通るまで煮ます。
  2. 研いだ白米1合を炊飯器の内釜に入れ、1の煮汁をすべて注ぎ入れ、1合の目盛りまで水を足して炊飯します。1の具材は、鍋に少量残った煮汁ごと食品用ポリ袋に入れ、空気を抜いて密封し、味をしみ込ませます。
  3. 炊き上がったご飯に具材を加え、サッと混ぜれば出来上がりです。
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written by

堀 基子

/文・写真

野菜ソムリエ上級プロ。J Veganist。冷凍生活アドバイザー。アスリートフードマイスター3級。ベジフルビューティーセルフアドバイザー。ジュニア青果物ブランディングマイスター。アンチエイジング・プランナー。受験フードマイスター。第6回・第8回野菜ソムリエアワード銀賞受賞。