春から夏へと向かうこの時期は、トマトがおいしい季節です。トマトは意外なことに、なす、じゃがいも、ピーマンなどと同じナス科に属します。原産地は南米のアンデス高地で、そのルーツは現在のミニトマトに近い形だったといわれています。トマトはやがてメキシコで食用として栽培されるようになり、大航海時代の16世紀にヨーロッパへ渡り、日本には17世紀に伝来しました。しかし当時は観賞用で、食用とされるようになったのは明治以降になってから。洋食文化の広がりとともに、日本でもトマトの味が愛されるようになったのだそうです。
ちなみに、FAO(国際連合食糧農業機関)の統計でトマト摂取量を見ると、世界平均は1人当たり年間18kg となっています。日本はかなり少ない10 kgで、1日にミニトマト1~2個といった程度でしょうか。一方、トマトをたっぷり食べているイメージがあるイタリアは27 kg。断トツの1位はトルコの99 kgで、日本の約10倍も食べています。
リコピンの抗酸化作用にご注目!
トマトの真っ赤な色は、天然の色素成分カロテノイドの一種であるリコピンという成分によるもので、すぐれた抗酸化作用で知られています。私たちの体内の活性酸素は、紫外線、ストレス、喫煙、過度の飲酒、激しい呼吸を伴うハードな運動などによって増加します。体内で活性酸素が増え過ぎると、正常な細胞や遺伝子を傷つけ、老化を早め、動脈硬化などの生活習慣病やがんの引き金にもなります。この活性酸素を消去してくれる働きが抗酸化作用です。リコピンは加熱に強く、油に溶けやすく、細かく破砕すると吸収がよくなりますので、トマトを刻んで煮込んでソースにしたり、トマトジュース、ピューレ、ケチャップなどの加工品を利用するのもおすすめです。また、トマトには、うまみ成分のグルタミン酸も豊富です。アンチエイジングや生活習慣病予防を意識している方、運動習慣がある方は、ぜひ毎日の食卓に真っ赤なトマトを取り入れてくださいね。
大玉トマトとミニトマトの違いは?
おなじみの大玉トマト、最近よく見かけるミディトマトとも呼ばれる中玉トマト、そして小さなミニトマト。大きさ以外にも違いがあるのでしょうか。150g以上のものが大玉と呼ばれ、桃色系の「桃太郎」、先端がとがった「ファースト」などの品種があります。中玉は40~150g程度のサイズのもので、糖度の高い「フルティカ」、高糖度のブランドトマト「アメーラ」などが有名です。中玉よりも小さなミニトマトは、長楕円形の「アイコ」、イチゴに似た形状の「トマトベリー」、高糖度を誇る名ブランド「アメーラルビンズ」など様々な種類があり、それぞれに個性を競い合っています。
栄養価で比較すると、100g当たり、大玉トマトは19kcal であるのに対しミニトマトは29kcal、ベータカロテン含有量は大玉トマトが540μgでミニトマトは960μg 、ビタミンC含有量は大玉トマトが15mgで、ミニトマトは32mgとなっており、カロリーは大玉トマトの方が低いのですが、ベータカロテンやビタミンCの含有量はミニトマトの方が多いことが分かります。ダイエット中なら大玉、栄養成分を考えるならミニトマトという考え方もできそうです。
おいしいトマトの選び方&保存法
トマトを選ぶ際は、ずっしりと重く、表面にツヤと張りがあり、ヘタが緑色でピンとしているものを選びます。トマトの先端部から放射状の筋が見えるものは、糖度が高いといわれています。まだ緑色の部分が残っているトマトは、室温で追熟させれば、数日で真っ赤に熟します。
熟したトマトを保存する際は、ポリ袋に入れ、ヘタを下にして冷蔵庫の野菜室へ。たくさん入手して使いきれないときは、ヘタを取り除き、水洗いしてから水気を拭き取り、ポリ袋に入れて冷凍庫へ。凍ったまま煮込み料理に使うと、加熱後にツルっと皮がむけるので、湯むきが不要です。また、凍ったまますりおろせば、簡単にドレッシングやソースに使えて便利です。
色とりどりのミニトマトが手に入ったら、ぜひお試しになってみてください。子ども向けに作るなら、香辛料を控えめに、きび糖を多めにし、酢を加えた後にしばらく沸騰させて酸味をとばせば、すっぱくない甘めのピクルスに。サラダに、カレーの付け合わせに、お弁当にと、使い勝手のいい一品です。
- 水50ml、きび糖大さじ4、塩大さじ1/2、唐辛子1本、ローリエ1枚、黒粒こしょう10粒を鍋に入れて中火にかけ、沸騰したらリンゴ酢100mlを加えて火を止め、粗熱がとれるまで冷まします。
- ミニトマトはヘタを取り除き、洗ってキッチンペーパーで水気を拭き取り、味がしみ込みやすくなるように、爪楊枝で4~5カ所をつついて皮に穴をあけておきます。
- 食品用密封袋に2を入れ、1を注ぎ、空気を抜いて密封し、冷蔵庫へ。1時間ほどで食べられますが、ひと晩おくと味がよくしみ込みます。