秋の実りを代表する作物といえば、さつまいも。日本での歴史は、1605年に進貢船が中国から琉球へ持ち帰り、栽培に成功したことから始まります。栽培が簡単で収穫量が多く、台風や干ばつに強い救荒作物として、琉球から薩摩を経て全国へ広がり、天明や天保の飢饉の際には、多くの人命を救ったとされています。また、第二次世界大戦による食糧難においても、戦中戦後の飢えから日本人の命をつなぐ大切な糧となったそうです。
そんな貴重な歴史を持つさつまいもですが、今やその品種は日本だけでも数十種類と多く、味わいや産地で選ぶ楽しさが魅力となっています。ねっとり極甘の「安納芋」。しっとり派なら甘みが強い「紅はるか」や、なめらかな舌ざわりの「シルクスイート」など。ホクホク派なら東日本を代表する「紅あずま」をはじめ、西日本が誇る「鳴門金時」、加賀伝統野菜の一つ「五郎島金時」、鹿児島産の「紅さつま」など。カロテンたっぷりで果肉がオレンジ色の「アヤコマチ」や「安納こがね」、豊富なアントシアニンで果肉が鮮やかな紫色の「パープルスイートロード」や「アヤムラサキ」、芋焼酎の材料として知られる皮も果肉も白っぽい「黄金千貫」など、それは多彩な品種があります。
NASAも注目の準完全栄養食品!
さつまいもは、そのすぐれた栄養価から準完全栄養食品と呼ばれ、NASAも注目し、研究を進めているのだそうです。気になる栄養素は、それぞれ100g当たり、免疫力を高めてくれるビタミンCは温州みかんに近い29mg、体内の余分な塩分の排出を助けるカリウムは480mg、便通の改善に役立つ不溶性食物繊維は1.6g、腸内環境を整える水溶性食物繊維は0.6gと、健康を支える成分が満載です。また、切ったときに出る乳白色の液体には、整腸効果を持つとされるヤラピンという成分が含まれ、便秘の予防効果が期待されます。さらに、鮮やかな紫色の皮には、抗酸化力にすぐれたポリフェノールの一種であるアントシアニンが豊富に含まれています。
また、さつまいもは甘味が強いため、ダイエットには不向きな印象がありますが、100g当たりのカロリーは、精白米のご飯が168キロカロリーであるのに対し、蒸したさつまいもは131キロカロリーと低め。なので、さつまいもを米に加えて炊き上げるだけで、手軽にダイエットご飯が出来上がります。
選び方・保存法・調理のポイント
皮にツヤがあり、表皮がなめらかで色ムラがなく、傷がなく、ひげ根の穴が浅いものを選びます。表皮や切り口に蜜が出ているものは、糖度が高いとされています。
保存の際、冷蔵庫では低温障害を起こし、傷みが早くなります。新聞紙などで包み、風通しのいい冷暗所で保存を。使い切れないときは、皮つきのまま1センチの厚さに輪切りにし、保存袋に入れて冷凍を。そのまま煮物やみそ汁に使えて便利です。
皮つきで調理する際は、ぬるま湯にしばらく浸してから、歯ブラシなどで丁寧にこすり洗いすると、土が落ちやすくなります。また、デンプンが麦芽糖に変わる60~75℃の温度帯でじっくり加熱すると、甘みがきわ立ちますので、ぜひお試しになってみてくださいね。
ほうじ茶の香ばしさが、さつまいもの甘みと風味を引き立てる、心和む一品です。ほうじ茶を濃いめに淹れておくと、より香ばしく仕上がります。
- さつまいも1本(200g程度)は、きれいに洗い、皮つきのまま、いちょう切りにします。
- 2合を研ぎ、炊飯器の内釜に入れ、ほうじ茶を2合の目盛りまで注ぎ、①をのせて炊飯します。
- 炊き上がったら、さつまいもが崩れないように軽くさっくりと混ぜ、茶碗に盛り、ごま塩少々を振ります。