菜果図録
国産品も続々登場!バナナ

 年間を通じて店頭に並ぶバナナ。ですが、私が暮らす沖縄で栽培されている島バナナは、6月から10月にかけて収穫され、とりわけ9月から10月が旬とされています。バショウ科に属するバナナの原産地は東南アジア。沖縄の島バナナも、フィリピンから小笠原へ伝わった「小笠原種」が、明治21年に沖縄へ導入されたのだとか。この島バナナは、形はモンキーバナナと呼ばれる「セニョリータ」という品種に似ていますが、甘みに加え、りんごのような爽やかな香りとほのかな酸味、もっちりとした食感で、フィリピン産の「ラトゥンダン」という品種と食味が似ており、近縁種とされています。原産地に近い亜熱帯気候の沖縄では露地栽培が可能で、導入から130年以上の歴史を持つ島バナナ(小笠原種)の他にも、三尺バナナと呼ばれる「ドワーフ・キャベンディッシュ」、ハワイ原産といわれる「アップルバナナ」、タイ原産とされる「ナムワバナナ」、ナムワ系の「銀バナナ」「アイスクリームバナナ」なども生産されています。

 また近年、「皮ごと食べられるバナナ」を筆頭に、全国各地でバナナのハウス栽培が増えており、国産バナナを入手できる機会が増えてきました。「皮ごと食べられるバナナ」は台湾バナナに近い「グロスミッシェル」という品種で、独自の栽培技術により無農薬栽培しているため、皮ごと食べられるだそうです。
 ちなみに、バナナを食べていても種が見当たりませんが、木のように見える葉が重なり合った仮茎の根元の脇から出る新芽を株分けして育てるため、種がなくても増やせます。仮茎が成長すると、苞(ほう)で包まれた大きなつぼみのようなものができ、苞が1枚ずつめくれるごとに2列に並んだ小さなバナナが現れ、やがて大きく実って収穫のときを迎えます。

バナナの歴史と多彩な種類

 バナナの歴史は非常に古く、紀元前5千年から1万年頃に栽培が始まったといわれています。マレー半島からインド、アフリカへと伝わり、16世紀頃にフランス人の神父が苗木を渡航先の中米ハイチで植え付け、そこからキューバ、メキシコ、ブラジルなどアメリカ大陸の亜熱低地域へ広がったといいます。
 日本へ初めて輸入されたのは、明治36年の台湾バナナ。戦後、昭和38年の輸入自由化を経て、昭和45年にはエクアドル産が輸入量の第1位に、昭和48年にはフィリピン産にトップの座を奪われ、現在に至ります。財務省貿易統計によると、2021年の国別バナナの輸入量の断トツの1位はフィリピンで、年間100万トンを超える輸入量の約75%を占め、そのほとんどは適度な甘みで日持ちがよい「ジャイアント・キャベンディッシュ」という品種。特に標高400~1000mで栽培された高原バナナは、甘さと栄養価がすぐれているといわれます。2位は約12%を占めるエクアドルで、多くは「グラネイン」という品種です。一方、かつて輸入バナナの代表だった台湾産バナナの輸入量は、わずか約0.3%と希少になりましたが、香り高く濃厚な味わいが人気で、「北蕉」「新北蕉」などの品種があります。
 世界各地で約300種以上ものバナナが栽培されているといわれ、ジャイアント・キャベンディッシュよりもひと回り大きく糖度が高い「ラカタン」、果皮が赤茶色をした「モラード」、調理用の「ツンドク」「カルダバ」「リンキッド」など、その種類は驚くほど多彩です。

バナナの栄養学

 バナナ100g当たりの栄養価を、身近な果物の代表であるりんご(皮なし)と比べてみると、エネルギーはバナナ93kcalに対し、りんご53 kcalで、非常に効率的にエネルギーを補給でき、マラソンなどアスリートの栄養補給にバナナが愛用されている理由がよく分かります。体内の余分な塩分(ナトリウム)の排出を助けるカリウムは360㎎で3倍、タンパク質の分解・合成を助けるビタミンB6は0.38㎎で約10倍、免疫力維持に欠かせないビタミンCは36㎎で4倍、造血のビタミンと呼ばれる葉酸は26μgで13倍も含まれています。また、腸内の善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖が豊富に含まれています。

おいしいバナナの選び方と保存法

 日持ちさせたいときは軸の付け根と先端が緑色のものを選びます。シュガースポット(黒い斑点)が出てきたら食べ頃のサインです。
 傷まないように保存するには、皮の接地面積を最小限にするのがポイントです。軸の付け根と先端を下に、カーブの丸みを上にしてするか、房のまま吊るしておくのがオススメです。ただし、吊るした場合、完熟すると、軸の根元からちぎれてしまうことがありますので、ご注意ください。一気に熟して食べきれないときは、皮をむいて1本ずつラップで包み、冷凍保存を。凍ったままアイスクリームのように食べたり、スムージーなどに活用でき、とても便利です。


焼きバナナスプリット

 縦半分に切ったバナナをアイスクリームに添えた、アメリカ生まれの「バナナスプリット」。こんがりとキャラメリゼしたバナナで作ってみたら、冷たいバニラアイスと熱々の焼きバナナが最高のハーモニーを奏で、とびきり美味しいスイーツに。アイスが溶けないうちに、大急ぎで作って、さあ召し上がれ!

材料(3~4人分)
バナナ 2本
バニラアイスクリーム 200g
生クリーム 50ml
バター(有塩ならほんのり甘じょっぱく仕上がります) 大さじ1
砂糖 25g
チョコレートシロップ(お好みのチョコレートを湯煎すればOK) 大さじ1
ミントの葉 適宜
作り方
  1. バナナ1本は縦半分に、もう1本は斜めに切ります。生クリームは砂糖15gを加えてよく泡立てておきます。
  2. フライパンにバターを入れて中火で熱し、バターが溶けたら砂糖10gをふり入れ、砂糖が溶けたらバナナを入れて火を強め、カラメル色になるまで焼きます。
  3. 器にアイスクリームを盛り、チョコレートシロップをかけ、②と生クリームを飾り、ミントの葉をのせます。
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written by

堀 基子

/文・写真

野菜ソムリエ上級プロ。J Veganist。冷凍生活アドバイザー。アスリートフードマイスター3級。ベジフルビューティーセルフアドバイザー。ジュニア青果物ブランディングマイスター。アンチエイジング・プランナー。受験フードマイスター。第6回・第8回野菜ソムリエアワード銀賞受賞。