秋はきのこがおいしい季節。国産のエリンギは工場生産されているため、年間を通じて店頭に並びますが、もともとはイタリアやフランスなど地中海性気候の地域や中央アジアなどに自生する、ヒラタケ科ヒラタケ属のきのこです。エリンギウムというセリ科の植物の枯れた根に生えるため、プレウロータス・エリンジという学名がつき、日本ではエリンギと呼ばれるようになったのだとか。1993年に台湾から導入され、愛知県林業センターで人工栽培が始まり、その後、盛んに栽培されるようになった、おなじみのきのこの中では意外と新顔の存在です。
農林水産省が発表した令和2年の特用林産基礎資料によれば、国内生産量約38500トンのうち、1位が長野県の約15200トン、2位が新潟県の約12900トン、3位が福岡県の約2300トンで、この3県だけで全国のおよそ8割を占めています。
あわびのようなコリコリ食感!
エリンギの特徴といえば、白くて太い軸。その歯ざわりのよさが人気のポイントでしょう。コリコリと弾力のある食感が、あわびに似ていることから、「白あわびたけ」と呼ばれることもあります。一方、古くから食用として親しまれてきたヨーロッパでは、軸の部分よりも傘の部分の方が好まれるともいわれます。
味や香りに強い個性がないエリンギは、どんな食材とも相性がよく、和食、洋食、中華、エスニックなど様々な料理に活用でき、加熱調理しても食感が損なわれにくいのも魅力です。
エリンギの栄養学
エリンギ100g当たりには、カルシウムの吸収を促進してくれるビタミンDが1.2μg含まれており、これはぶなしめじの2倍以上、しいたけの4倍にあたります。発育のビタミンとも呼ばれるビタミンB2は0.22mg、体内の余分な塩分(ナトリウム)の排出を助けてくれるカリウムは340mgと、いずれもきのこ類の中では上位にランキングしており、腸内環境を整えてくれる食物繊維は3.4g、免疫力強化やコレステロール値の上昇を抑える効果が期待されるβグルカンも含まれています。そのうえ、他のきのこと同様、非常に低カロリーですから、ダイエットの強い味方になってくれる食材なのです。
エリンギの選び方、保存法、調理のコツ!
傘の裏のひだや軸が白く、傘が開き過ぎておらず、弾力があり、しなびていないものを選びます。他のきのこ類に比べるとエリンギは日持ちする方ですが、保存の際は冷蔵庫の野菜室へ入れ、3~4日以内に使い切りましょう。調理のポイントは、切り方によって食感が変わること。しっかりとした食感を楽しむなら縦に手で裂くか包丁で縦切りに、貝柱のような食感を楽しむなら厚めの輪切りに、柔らかな食感に仕上げたいときは薄めの輪切りにします。
真ん丸な野菜の断面が並んでいるだけで、楽しい一品。サブジとは、インド料理の一種で、野菜の炒め煮のことです。本来は、ターメリック、コリアンダー、ガラムマサラなどのスパイスを組み合わせますが、今回は手軽に市販のカレーパウダーとクミンシードを使いました。
● | エリンギ | 3本 |
● | ズッキーニ | 1本 |
● | にんじん | 1本 | ● | にんにく | 1片 |
● | オリーブオイル | 大さじ2 |
● | 白ワイン | 大さじ1 |
● | カレー粉 | 小さじ1 |
● | クミンシード | 小さじ1 |
● | 塩 | 小さじ1/2 |
- エリンギの軸は厚さ8ミリの輪切りに、傘の部分は縦に薄切りに、ズッキーニ厚さ8ミリの輪切りに、にんじん厚さ5ミリの輪切りにします。にんにくはすりおろします。
- フライパンにオリーブオイル、カレー粉、クミンシード、すりおろしたにんにくを入れて木べらで混ぜ、中火にかけ、いい香りが立ってきたらにんじんを並べて焼き、軽く火を通してから、エリンギとズッキーニも加えて炒め合わせます。
- 全体に調味料と油が回ってなじんだら、白ワインを加え、フタをして焦げない程度に火を弱め、3分ほど蒸しながら火を通し、仕上げに塩で味を調えます。