暦の上で立冬を過ぎ、朝晩めっきり冷え込むようになってくると、冬野菜が美味しい季節です。数ある冬の野菜の中でも、その美しさでひときわ目を引くロマネスコは11月から2月にかけて旬を迎えます。アブラナ科アブラナ属に分類されるカリフラワーの仲間で、「世界一美しい野菜」とも呼ばれるロマネスコ。そのルーツはイタリアといわれ、現地ではローマのブロッコリーを意味する「ブロッコロ・ロマネスコ」または「ブロッコロ・ロマーノ」、ローマのカリフラワーを意味する「カーヴォルフィオーレ・ロマネスコ」といった名前で呼ばれているのだとか。イタリアでの呼び名の通り、ブロッコリーにもカリフラワーにも似ており、色はその中間にあたる明るいグリーンで、味わいも2つの間といった感じですが、歯ごたえのある食感はカリフラワーに似ています。
日本ではまだまだ新顔野菜で生産量も少ないのですが、北海道、宮城県、茨城県など各地で栽培されていて、直売所やスーパーなどでも見かける機会が増えてきました。その見た目や食感から、「カリッコリー」、「うずまき」、「サンゴ礁」、「カリブロ」、「やりがい君」などの名前で呼ばれることもあります。
芸術的な美しさの謎を紐解く
ロマネスコの複雑で精密な美しさは、まるで上質なアート作品のように見る人の心を魅了します。とがった円錐形の花蕾が規則正しくらせん状に並び、中心から外へ向かって大きくなっていきますが、このらせん構造はフィボナッチ数列に従っています。フィボナッチ数列とは、0、1、1、2、3、5、8・・・・・・と前の2つの数字を足した数を並べた数列のことで、ひまわりの種の配置や松ぼっくりのうろこ模様にもこの数列が見られ、自然界の美に潜む数字の魔術には本当に驚かされます。
さらに、もう一つの美しさの秘密は、ロマネスコのフラクタル構造にあります。フラクタル構造とは、形の一部分を切り取ったときに、それが全体と似た形状をしていることを意味します。ロマネスコの小房をじっくりと観察してみると、小房の中にさらに同じ形状の小さな突起が並んでいるのがよく分かります。このロマネスコのフラクタル構造を10年以上にわたって研究してきたフランス国立科学研究センターのチームは、ついにそのメカニズムを解明し、「蕾が一時的に開花したつもりになって無限増殖を引き起こしている」と、2021年に世界的な科学学術雑誌「サイエンス」で発表して話題となりました。とても科学的なニュースなのに、ロマネスコの勘違いだなんて、なんだか愛らしく感じてしまいます。
ロマネスコの栄養学
ロマネスコは植物学的にはカリフラワーの仲間とされますが、カリフラワーが淡色野菜であるのに対し、ロマネスコはブロッコリーと同様に100gあたり600μg以上のカロテンが含まれている緑黄色野菜です。カロテンは野菜に含まれる色素で、抗酸化作用にすぐれ、体内でビタミンAに変換されて粘膜や肌を健やかに保つのに役立ちます。他の栄養価はカリフラワー100gあたりを参考にすると、免疫機能の強化や美肌に役立つビタミンCは65mgで温州みかんの約2.5倍も含まれ、造血のビタミンとして知られる葉酸は94μg、体内の余分な塩分(ナトリウム)の排出を助けるカリウムは410mg含まれています。不足しがちなビタミンやミネラルを補える冬野菜として、ぜひ積極的に活用したくなりますね。
ロマネスコの選び方・保存法・調理のポイント!
美しい黄緑色で、花蕾が固く締まって欠けがなく、ずっしりと重く、切り口が新鮮なものを選びます。
購入後は野菜用保存袋やポリ袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で立てて冷蔵すれば、4~5日は保存できます。長く保存するなら硬めに蒸してから冷凍しましょう。
調理の際は、小房に切り分け、水に浸けてよく洗ってから加熱調理します。たっぷりの湯でゆでると断面からビタミンCが流出しやすくなるため、少量の水で蒸すのがおすすめです。小房に切ったものを耐熱皿に並べ、水を少々回しかけ、ラップをかけて電子レンジ加熱してもOKです。切り落とした太い茎は甘みがあって美味ですので、硬い皮をむき、食べやすい大きさに切り、花蕾の部分と一緒に加熱調理してお召し上がりください。
ロマネスコのチーズフォンデュ
ホットプレートで具材を焼きながら、チーズソースも具材も最後まで熱々で楽しむチーズフォンデュです。ピザ用チーズに片栗粉をまぶしておくと、チーズソースがダマになりません。今回の具材の他、じゃがいも、にんじん、ズッキーニ、アスパラガス、ベビーホタテ貝、鶏肉などもよく合います。
材料(2人分)
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チーズソース |
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ピザ用チーズ |
200g |
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白ワイン |
100ml |
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片栗粉 |
小さじ1 |
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ロマネスコ |
1個 |
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芽キャベツ |
8個 |
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黄パプリカ |
1/2個 |
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マッシュルーム |
4個 |
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ウィンナー |
6本 |
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ゆでた海老 |
6尾 |
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おろしにんにく |
小さじ1/4 |
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オリーブオイル |
少々 |
※子ども向けには白ワインを牛乳に変更してください
作り方
- ロマネスコは小房に切り分け、芽キャベツとともに蒸すか電子レンジで加熱します。ミニトマトは破裂しないように爪楊枝で3~4か所つついておきます。マッシュルームは縦半分に、黄パプリカとウインナーは食べやすい大きさに切ります。
- 小さめの鍋に白ワインを入れて中火にかけ、煮立たせてアルコールを飛ばし、おろしにんにくを入れて溶かし、片栗粉をまぶしておいたピザ用チーズを加え、よく混ぜながら溶かし、耐熱のココット皿やグラタン皿に入れます。
- ホットプレートを中温に熱し、中央に②のチーズソースを器ごとのせ、焦げ付かないようにオリーブオイル少々を薄く塗ってから具材を並べ、マッシュルームやウインナーに火が通ったらホットプレートが冷めない程度に温度を下げ、焼きたての具材に熱々のチーズソースをつけながらいただきます。