菜果図録
実験気分でクッキング! 紫キャベツ

 街に流れるクリスマスソングに心躍る季節になりましたが、クリスマスやお正月の食卓は意外と野菜が不足しがちになりませんか。そんなとき、食卓を美しく彩りながら、口直しの一品として活躍してくれるのが紫キャベツです。年間を通じて店頭に並んでいますが、春まきは初夏に、秋まきは秋から冬に収穫されるため、12月から1月にかけては入手しやすい時期です。

 

 紫キャベツはアブラナ科アブラナ属のキャベツの仲間で、おなじみのキャベツよりも小さく、レッドキャベツや赤キャベツとも呼ばれ、英語ではバイオレット・キャベッジ(violet cabbage)と呼ばれます。葉の表面は深く鮮やかな赤紫色をしている一方、葉肉や軸の内部は白く、切り口のコントラストの美しさにはいつも胸がときめきます。紫キャベツのスプラウトもその華やかな色合いから人気を博しています。ちなみに、以前に紹介したトレビスとも一見よく似ていますが、トレビスはレタスと同じキク科なので、まったく別の野菜です。

 紫キャベツの生産量は一般的なキャベツよりもはるかに少ないのですが、愛知県、長野県、静岡県、茨城県、群馬県など各地で生産されています。種苗会社によって、紫丸、レッドボール、ルビーボール、パワールビー、ネオルビー、レッドルーキー、レッドブライト、レッドベリーなど、様々な種類の種子が販売されています。

色素成分の活用法

 紫キャベツ特有の美しく鮮やかな紫色は、紫芋やブルーベリーなどにも含まれている色素成分で、プリフェノールの一種であるアントシアニンによるものです。この美しい色合いはアカキャベツ色素の名称で着色料として商品化され、紅しょうが、甘酢しょうが、柴漬け、だいこんの桜漬け、飲料、冷菓、歌詞、ゼリー、グミキャンディなど様々な食品にも利用されています。

 アントシアニンは水溶性であるため、紫キャベツを細かく刻んで煮出すだけで、簡単に色素を取り出すことができます。この水溶液に酸性の酢やレモン果汁などを加えるとピンクや赤紫色に、アルカリ性の重曹やアルカリイオン水を加えると青や緑、黄色に変化します。入れる量によって色が変わりますので、いろいろと試してみてくださいね。お子さんの冬休みの自由研究にもおすすめです。

紫キャベツの栄養学

 紫キャベツに含まれる栄養素としては、すぐれた抗酸化力が期待されるアントシアニンが有名ですが、他にもまだまだ実力を秘めています。一般的なキャベツと紫キャベツの100gあたりの栄養価を比べてみると、免疫機能の強化や美肌に役立つビタミンCはキャベツが38mgであるのに対し紫キャベツ68mg、体内の余分な塩分(ナトリウム)の排出を助けるカリウムはキャベツが190mgであるのに対し紫キャベツ310mg、鉄欠乏性貧血の予防に欠かせない鉄はキャベツが0.3mgであるのに対し紫キャベツ0.5mg、抗酸化作用にすぐれ体内でビタミンAに変換されて粘膜や肌を健やかに保つのに役立つベータカロテンはキャベツが24μgであるのに対し紫キャベツ36μg、腸内環境を整える働きで知られる食物繊維はキャベツ1.8gであるのに対し紫キャベツ2.8gと、多くの項目で紫キャベツに軍配が上がりました。ルックスの華やかさだけではなく、栄養価の面からも、ぜひ注目したい健康野菜なのです。

紫キャベツの選び方・保存法・調理のポイント!

 葉の色が鮮やかで張りがあり、葉の表面が粉をふいたように白っぽく、手に持ってみた際にずっしりと重く、切り口が新鮮なものを選びます。

 購入後は乾燥を防ぐために野菜用保存袋やポリ袋に入れるかラップで包み、冷蔵庫の野菜室で保存し、1週間ほどで使い切ります。少しずつ使う場合は、包丁でカットするよりも、外側から1枚ずつ葉をはがして使う方が日持ちします。使い切れないときは、ピクルスや甘酢漬けにするのもおすすめです。

 調理の際、紫キャベツは肉厚で巻きが固く、一般的なキャベツよりも葉に厚みがあり、食感がしっかりしているため、サラダ、ピクルス、甘酢漬けなどにするときは、薄く細かい千切りにすると食べやすくなります。また、ピクルスや甘酢漬けにすると、漬け汁が赤くなるので、他の食材は一緒に漬けない方がいいでしょう。スープなどの汁物にしても、赤い色になりますのでご注意ください。炒め物も美しい色を生かすならサッと短時間で仕上げましょう。

紫キャベツのカラフルコールスロー

 酢の作用で赤みを帯びた紫キャベツに、セロリの緑色、にんじんのオレンジ色、コーンの黄色が映える、カラフルなコールスローです。今回はりんご酢を使っていますが、お好みでレモン果汁やゆず果汁でもOK。また、はちみつをメープルシロップに代えても美味です。

材料(2人分)
紫キャベツ 1/2玉
セロリ 1/2本
にんじん 1/2本
ホールコーン(缶詰や冷凍で可) 100g
オリーブオイル 大さじ2
りんご酢 大さじ2
はちみつ 大さじ1杯半
小さじ1
こしょう 少々
作り方
  1. 紫キャベツとにんじんは細かく千切りにします。
  2. ①に分量の塩をよくまぶし、10分ほどおいてから手で軽く水分を絞ります。
  3. オリーブオイル、りんご酢、はちみつ、こしょうをよく混ぜ、②を和え、色が移らないように食べる直前に薄い小口切りにしたセロリとホールコーンを加えて混ぜます。
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written by

堀 基子

/文・写真

野菜ソムリエ上級プロ。J Veganist。冷凍生活アドバイザー。アスリートフードマイスター3級。ベジフルビューティーセルフアドバイザー。ジュニア青果物ブランディングマイスター。アンチエイジング・プランナー。受験フードマイスター。第6回・第8回野菜ソムリエアワード銀賞受賞。