初夏から夏にかけて、太陽をたっぷり浴びて育ったししとうが店頭に並びます。ししとうはピーマンやパプリカと同様にとうがらしの甘味種の仲間で、英語でもSweet pepperと呼ばれます。

農林水産省が発表した令和5年産の作況調査の収穫量では、第1位が全国の収穫量5,570トンの約1/3を占める高知県の1,940トン、第2位は千葉県の728トンです。ちなみに、年間収穫量の約7割を占める夏秋産は計3,900トンで、第1位は千葉県の670トン、高知県の604トン、山形県168トン、愛媛県148トン、大分県141トン、鹿児島県126トンと続きます。一方、冬春の収穫量は計1,680トンで、うち約8割を高知県産が占めています。
ししとうの歴史と種類
ししとうはナス科トウガラシ属に分類されますが、とうがらしの原産地は中南米で、大航海時代の15世紀にコロンブスの手によってヨーロッパへ持ち込まれ、16世紀にインドやアジアへ広まりました。世界には色や形、大きさ、辛みなど、さまざまな3,000種近いとうがらしの品種があるといわれていますが、ししとうもその仲間です。
おなじみのししとうは長さが5~6センチですが、江戸時代から京都の伏見地区で栽培されてきた長さ15センチに育つこともある大型で細長い「伏見甘長とうがらし」、大正末期に「伏見甘長とうがらし」とピーマンの品種「カリフォルニア・ワンダー」を交配して生まれた長さ10センチを超える「万願寺とうがらし」、大和の伝統野菜(奈良県)の一つでさやいんげんのように細長く10~15センチほどの長さになる「ひもとうがらし」、黒みがかった紫色ですが加熱すると緑色になる「紫ししとう」なども、ししとうの仲間です。
ししとうの栄養学
ししとうの100g当たりの栄養価をピーマンと比べてみると、まずはたんぱく質が1.9gとピーマンの2倍強も含まれています。抗酸化作用にすぐれたベータカロテンは530μg、止血のビタミンと呼ばれるビタミンKは190μg、赤血球の生産を助ける葉酸は33μgと軒並みピーマンよりも多く、ビタミンB1、B2、B6、ナイアシンなど代謝やエネルギー代謝に関わるビタミンB群、健康維持に欠かせない鉄や亜鉛といったミネラルも、ピーマンよりも豊富に含まれていることに驚かされます。
ししとうは熟す前に緑色のうちに収穫されます。熟すととうがらしのように赤くなりますが、辛みが増えることはありません。しかし、ときおり非常に辛いししとうに出会うことがあります。これは乾燥など強いストレスを受けて、辛み成分カプサイシンが増えるためとされています。また、受粉不良により小ぶりで種が少ないものは、辛みが強い場合があります。
ちなみに、辛みのある果実がまったく発生しない新品種「ししわかまる」が育成されていますので将来的には辛味のあるししとうにめぐり合う確率は今より低くなるのかもしれません。
ししとうの選び方、保存法、調理のポイント!
購入の際は、ヘタまで鮮やかな緑色で、張りとつやがあり、実の先端がくぼんでいて、しなびておらず硬いものを選びます。
保存の際は、常温ではしなびやすく、かといって温度が低すぎると低温障害を起こしてしまうので、パックのままポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室へ。
焼いたり、炒めたり、煮浸しにしたり、天ぷらや素揚げにしても美味ですが、揚げ物にする際は破裂防止のために包丁の先や爪楊枝で数か所に穴を空けてください。ししとうはもちろん、伏見甘長とうがらしや万願寺とうがらしも種ごと食べられますが、気になる場合は切れ込みを入れて種を取り除きましょう。
ししとうとチーズの生ハム巻き
大きめのししとうに切り込みを入れ、スティックチーズを詰め、生ハムを巻いてフライパンでサッと焼いたら、ビールによく合う一品になりました。スティックチーズがなければ、ししとうの大きさに合わせて拍子木切りに。チーズと生ハムの塩気があるので、味付けは不要です。お弁当にもよく合います。

材料(1人分)
● |
ししとう |
5本 |
● |
スティックチーズ |
3~4本 |
● |
生ハム |
5枚 |
● |
オリーブオイル |
小さじ2 |
作り方
- ししとうは洗って水気を拭き取り、できるだけ長く切り込みを入れます。
- ししとうの大きさに合わせてスティックチーズを切り、切れ目からししとうの中に詰め、生ハムで巻きます。
- フライパンにオリーブオイルを入れて火にかけ、②を並べて中火で焼き、こんがりと色づいたら出来上がりです。
*ナス科トウガラシ属
・ヘタまで鮮やかな緑色で、張りとつやがあり、実の先端がくぼんでいて、しなびておらず硬いものを選びましょう。
・種類:定番のししとうの他、「伏見甘長とうがらし」、「万願寺とうがらし」、「ひもとうがらし」、「紫ししとう」などがあります。