2016年2月10日UP
数年前、不眠症を患い心療内科で治療を受けていた頃のことだ。処方された薬を服用してもほとんど効果が見られず、副作用である一時的な軽い記憶障害や目眩に悩む日々が数カ月続いていた。そんな折、薬膳の先生から葉もの野菜をたくさん食べるよう勧められたことがあった。
数日後、贈答用の果物を購入するために立ち寄った地元の直売所で、「味に恋して」というシールの貼られたキャベツが目に留まった。当時、野菜には特段興味は無かったが、薬膳の先生からのアドバイスと、キャベツは元々好きだったこともあり、思い切って1玉購入することにした。副作用のあった薬の服用を止め、藁にもすがる思いでこのキャベツを千切りにして食べた。「味に恋して」キャベツは、甘くて瑞々しく、薬に頼っていた当時の私には「キャベツってこんなに美味しかったっけ?」と強く印象に残るものだった。そして、このキャベツとの出会いは、私にとって大きなターニングポイントになったのだった。
1日あたり4分の1玉分を食べはじめて数日が経った頃、不眠症の症状が改善している事に気がついた。同時に、便秘しやすい体質も改善され、毎日同じ時間帯にお通じのリズムが整うようになっていた。このことから「野菜の力って凄い!」と強く思うようになり、ジュニア野菜ソムリエ講座を受講するきっかけとなった。その後、野菜ソムリエ(中級)も取得し、個人で活動する中で地元の生産者さんと接する機会が増えていった。そんなある日、とあるマルシェの立ち上げでご一緒した若手生産者さんの1人が「味に恋して」ブランド野菜を作られている方だと知った。自分を助けてくれたキャベツの生産者さんと出会い、今は自分がその生産者さんをお手伝いする立場になっている。あまりにも運命的な出会いに心が震える程だった。
生産者さんから聞くところによると、「味に恋して」キャベツは「新藍」という品種で、滋賀県の農業技術普及員さんが計測された際、芯の糖度が10度もあったという。20代の若手生産者さんが自分のブランドを立ち上げ、品種にもこだわった質の高い野菜を栽培されていることは、本当に素晴らしいことだと思う。それ以上に、私にとっては、「味」だけではなく「野菜自体に恋する」きっかけを与えてくれ、さらには不眠症を克服させてくれたキャベツを世に出してくれたことに対して、敬意と感謝を表し現在に至っている。この想いは野菜ソムリエとしての私のバックボーンとなっている。これからも生産者さんのお手伝いを通じて、野菜・果物への恩返しを続けていきたいと思っている。
古川孝裕さんのプロフィール
滋賀県在住。野菜ソムリエ、メンタルフードマイスター。印刷会社に勤務する傍ら、地元東近江地区の野菜・果物の紹介やレシピ作成などを通じて生産者さんをバックアップ。体の中から男を磨く「野菜男子」を提唱。若い男性に野菜・果物を食べて頂ける様に努めている。お弁当男子。野菜ソムリエコミュニティ滋賀役員(広報担当)
野菜ソムリエコミュニティ滋賀のブログ http://ameblo.jp/shiga831blog/
取材 / 文:野菜ソムリエ / ベジフルビューティーアドバイザー タナカトウコ