野菜ソムリエの思ひ出の味
家族で行ったわらび採り

2017年1月25日UP
 5月の連休の頃には父にわらび採りに連れていってもらうのが、物心つく前からの家族の恒例行事となっていた。実家のある団地から車で30分程行った先に、父の故郷の山がある。山といっても、わらびが生えているのはすごく山の中というわけではなく、適度に日のあたる雑木林の斜面などだ。子どもにはそう簡単には見つけられないものだが、ひょこっと1本生えているわらびを見つけられたときはとても嬉しかった。まるで宝探しのように、姉と弟とで競うように採ったものだった。皆で採ったわらびは父がゆでてアク抜きをし、しょうゆとかつお節をかけておひたしで食べた。苦くなく、とても食べやすくておいしかったと記憶している。

477_memory_l

 このように幼い頃から父が山へ連れていってくれて、わらび採りを経験させてくれたことが、私が山菜や野草に興味を持つことの原点になっていると思う。父が教えてくれた知識に加えて、自分でも興味を持って山菜や野草について調べて採るようにもなった。フキノトウ、ぜんまい、よもぎ、ミズブキ、ミツバ、ノビルなど、結構自分の身近なところに生えていることにも気がつき、今では近くの野山で山菜や野草を探して採ることが季節ごとの楽しみである。

 結婚して、山に囲まれた土地に住むことになった。なんと父の実家の近くである。しかし、歩いてすぐのところに山がある田舎育ちの主人は、意外にも山菜採りには全く興味がなかった。正直がっかりした。山が近くにありすぎるため山菜や野草は特別な存在ではなく、部活のほうに一生懸命な子ども時代だったらしい。また、主人の祖母はよく山へ行っていたのだが、義父母のほうは積極的に山に行くことがなかったということもあるだろう。子どもの頃からの経験とは大きいものである。
 山菜を採ることには興味がない主人だが、山菜を食べることは好きなようだ。山菜を採るのも食べるのも好きな私は、今も子どもの頃と同様に、実家の両親と毎年山菜採りに行っている。

 さて、自宅で開いている小さなパン屋の役に立てばと思って野菜ソムリエになったのだが、資格取得のための勉強をしたことで、兼業農家である嫁ぎ先で様々な野菜を育てる楽しみを知り、畑仕事だけでなく、山菜採り、ハーブ栽培などにも特に興味を持つようになった。フェイスブックなどで、野菜が育っている様子、花や、つぼみの写真、食べ方などを発信するようになり、まわりの人からも楽しみにしていると言われている。今では、変わった野菜を育てて投稿することが私自身の楽しみでもある。
 今後は、多くの生活者の皆さんに野菜や果物に関心を持ってもらい、食べ方や育て方をもっと発信していければと思っている。福井県の野菜、果物、生産者さんについても、世の中にもっと知ってもらいたいと考えている。

水嶋昭代さんのプロフィール
福井県在住。野菜ソムリエプロ。自宅で小さなパン屋を開きながら、家庭菜園や花づくりを楽しむ。野菜ソムリエ、だしソムリエとして食育活動もしている。
http://ameblo.jp/sakuraku21

※2017年1月10日より資格名称が変更しております。詳しくはこちら

取材 / 文:野菜ソムリエプロ / ベジフルビューティーアドバイザー タナカトウコ