野菜の小ネタ
お盆にまつわる野菜ー精霊を迎える伝統と心

 お盆は、日本の大切な伝統行事であり、ご先祖様の霊を供養するための大切な期間。家族が集まり、先祖の霊を迎え、送り出すためにさまざまな儀式が行われます。今回は、お盆に使われる野菜の意味や背景について探ってみましょう。

精霊を迎える野菜

 お盆の期間中、精霊を迎えるためにさまざまな野菜が使われます。「精霊馬=きゅうり」「精霊牛=ナス」が有名ですが、その一つひとつに先祖の霊を快く迎え、送り出すための意味が込められています。

きゅうりの馬:速やかな帰還を願って

 きゅうりは精霊が乗るための「馬」として使われます。これは、「ご先祖様が足の速い馬に乗り、早く戻ってこれるように」との願いが込められているとか。割り箸を刺して足を作り、馬の形にするのが一般的です。また、きゅうりなどのウリ科の野菜には種が多く入っていることから、生命力や子宝、子孫繁栄を連想させる縁起の良い野菜とも言われています。

飾り方

 お盆の初日に仏壇や供物台に飾ります。地域によっては「ご先祖様が一刻も早く家に帰れるように」との願いを込めて玄関先に飾ることもあるようです。

きゅうりの豆知識

 冷やして食べるととても美味しいきゅうりは、代表的な夏野菜。古くから冷却効果があるとされ、暑い夏に精霊が快適に過ごせるようにとの意味も込められています。水分含有量が95%と高く、熱中症予防にも役立ちます。カロリーが低くビタミンやカリウムが豊富なため、美容と健康に敏感な方にはオススメの野菜です。

ナスの牛:ゆっくりとあの世へ戻れるように

 ナスは「牛」として使われます。ナスの牛には、精霊があの世にゆっくりと帰れるようにとの願いが込められています。きゅうりと同様に割り箸を刺して足を作り、牛の形にします。「ナス=成す」と読めることから「何事も成し遂げる縁起物」としてお供えされるようになったという説もあります。

飾り方

 きゅうりと同様に、お盆の初日に仏壇や供物台に飾ります。「ご先祖様がゆっくりあの世へ戻れるように」との願いを込めて、お盆最後の日に玄関先へ飾る地域もあります。

ナスの豆知識

ナスは「嫁に食わすな」といったことわざがあるほど、秋のナスが美味しいとされていますが、お盆の時期のナスもまた、旬を迎え美味しいものです。ナスの色素成分であるナスニン、アントシアニンには抗酸化作用があり、体内の活性酸素を除去する効果が期待されているため、美容や健康維持にも役立つ野菜です。

蓮の花:清らかな心の象徴

 蓮(レンコン)の花は、清らかな心を象徴する植物です。仏教において特に重要な花とされており、花が咲く様子は浄土へ導かれることを示しています。

飾り方

 蓮の花は、仏壇や供物台に美しく飾ります。蓮の葉を供物の皿として使うことも。花を水に浮かべ玄関やリビングに飾るのも、清涼感がありオススメです。

蓮の花の豆知識

蓮の花は朝に咲き、夕方には閉じます。このサイクルは、生命の無常や循環を象徴しているとも言われます。また、泥の中から美しい花を咲かせることから、苦境の中での成長を象徴しているとの考えも。蓮の根っこは、食卓でも馴染み深いレンコンですが、穴がたくさん空いていることから「見通しが良い」とされ縁起物としても有名ですね。栄養面では、ビタミンCや食物繊維、カリウムが多く含まれ、免疫力アップや消化促進、血圧を整える効果が期待されます。

その他、「生命力の象徴」であるサツマイモや、「たくさんの実をつける」とうもろこし、「円=縁」をつなぐ丸いフルーツなどをお供えする地域もあります。

お供えした野菜の処分方法は?

 お盆が終わったら、感謝の気持ちを込めて処分しましょう。自然に帰すという意味で土に埋めたり川に流したりという地域もありますね。焼却するときは焚き火で燃やすと良いでしょう。(地域や宗教によって異なります)

まとめ:お盆の風習を現代に生かす

 お盆の時期には、先祖の霊を迎え、供養するためにさまざまな儀式が行われます。お盆の風習とその意味を理解することで、先祖への感謝の気持ちをより深く感じることができるでしょう。日常の中で、こうした伝統的な知識を生かし、生活に彩りを添えてみてはいかがでしょうか。

 例えば、夏の暑い日にキュウリの冷製スープやナスのグリルを楽しんだり、蓮の花を飾って心を落ち着かせたりすることで、伝統と現代の融合を感じることができます。とうもろこしご飯やサツマイモのスイートポテトなどを作り、家族や友人へのおもてなしも素敵です。

 お盆の時期を迎えるにあたり、その意味と背景を知り、心を込めて先祖を供養する時間を大切にしたいですね。

 文:野菜ソムリエ 小松暁子