野菜ソムリエの思ひ出の味
お母ちゃんの実家の苗字「根木」こと「ネギ」

2015年4月28日UP
幼少時の苦手野菜「ネギ」。匂いも、生で食べるときの辛さやシャキシャキした食感も、熱を通した後の甘みやとろっとした食感も、長ネギも、玉ねぎも。「ネギ」と名のつく野菜はすべて大嫌いだった。学校の給食では食べ残すと遊びに行けないことから、牛乳で流し込み、家ではお皿の端に寄せて残していた。

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あろうことか、母の旧姓は「根木(ネギ)」だ。母の実家へはお小遣い欲しさに遊びに行ったものだが、食卓に決まって並ぶのは数々のネギ料理だった。苗字がネギだからか、母の実家でネギを作っていたからか、なぜかネギ料理が多かった。ネギ嫌いの私は、もちろん食べられない。その様子を見た大人たちからは「ネギが嫌いならオラホの家さ来るな~」と笑いながらからかわれ、毎年そんな会話が繰り返されていた。
中学生になった頃のことだ。冗談とわかっていても「オラホさ、来るな~」と言われるのは気になるし、お年玉やお小遣いも気持ちよくもらいたい。子供ながらに考えた末、我慢して美味しい振りをしてみることにした。思い切って口に入れ、きちんと噛んで飲み込むと、あれ? 下手な演技をする必要がない美味しさであった。
根木のおばあちゃんがつくってくれたラーメンに乗っていた大量の白髪ねぎだったのだが、主張しすぎることがなく、生の部分、少し熱が入った部分と、それぞれの風味すら美味しく感じられた。思えば、根木のおじさん、おばさん、おばあちゃんは、私のことをよくわかった上で、ネギ嫌いを治すきっかけを与えてくれていたのだろう。モリモリと完食した私を皆が褒めてくれ、とても嬉しかったことを覚えている。

以来、一転してネギ好きに変身。部活動から帰ったペコペコのお腹には、ネギ入りの納豆ごはんがとても美味しく感じられ、毎日のように食べていたほどだ。ラーメンには刻みネギをてんこ盛り、煮込み料理には大量の玉ねぎを投入、経営するお店で出すお通しにも万能ねぎはかかせない。今や、ネギは私の好きな野菜トップ3にランクイン。365日、ネギを触らない日はない。

野菜果物をよくわかった上で、旬を意識したカクテルやスムージーを店で提供したい、深夜でも体にやさしいフードメニューを充実させたいとの思いから、野菜ソムリエの資格を取得。「ベジフルスムージーを飲んでおくと翌日のからだの調子がよい!」の声もあり、リピーターが増えている。
最近では、キッズ野菜ソムリエのイベントスタッフとしても活動。自分自身がネギ嫌いを克服したときの気持ちを思い出しながら、子供たちが野菜を好きになる手助けをさせてもらっている。食べられない野菜が食べられるようになった瞬間に立ち会えると、幼い頃の自分を見ているようで、喜びはひとしおだ。

藤原ゆかりさんのプロフィール
岩手県盛岡市在住。野菜ソムリエでありバーテンダーの顔も持つ。「楽しく・美味しく・カラダにやさしく」をモットーに、夫と二人で居酒屋を2店舗経営。ベジフルスムージーとフルーツカービングもお客様に大人気。カービング教室開催をめざし、日々着々と腕を上げている。
ゆかりごはん

取材 / 文:野菜ソムリエ / ベジフルビューティーアドバイザー タナカトウコ