2015年8月19日UP
子供の頃、暑い夏にスイカを食べた後、母が決まって作ってくれたのはスイカの皮の浅漬けだった。当初は、父の酒の肴として用意されたものだったが、一口食べさせてもらうととても美味しく、弟と取り合って食べたのを記憶している。食後のデザートやおやつとして食べていたスイカが、浅漬けに変身した姿は幼い私にとってとても印象深いものだった。
父方の祖父が畑をしていたこともあり、父は野菜の調理法に詳しかった。スイカの皮の浅漬けのレシピも、父が母に教えて我が家で作られるようになったものだった。スイカの白い部分を2ミリ程度の厚さに切って塩を軽くもみこみ、冷蔵庫に入れておいて食べる時には水気を絞り、ほんの少ししょうゆをたらしていただく。少し歯ごたえがあり、ほんのり残ったスイカの赤い部分がピンク色できれいだった。ピンク色の部分はうっすら甘みがあり、きゅうりの漬物でもたくあんでも味わえない甘しょっぱい感じがとても好きだった。実家での夏の思い出、懐かしの味である。
子どもの頃の私は、食べ物を無駄にすることなく最後まで美味しくいただく知恵と工夫について何とも思っていなかったかもしれない。しかし、親となって毎日の食事を準備するようになった今、無駄なく食材を使うことの大切さを自然と学んでいたからこそ、「食べる」ということを大切に考えるようになったのではないかと思う。
野菜ソムリエを目指したのは、地元スーパーのデモキッチンや小学校での食育活動で子どもの野菜嫌いを心配する保護者の方が多いことを知り、野菜のことをもっと深く学んでその魅力を伝えたいと思うようになったことからだった。資格を取得した後はさらに野菜への探究心が増し、市民菜園を借りて季節の野菜を育てている。種を播いたのに土が乾燥し発芽しなかったニンジン、うまく受粉できずに育ちきれなかったズッキーニ、食べ頃を迎えたが動物に持って行かれたスイカなど、テキストで学んだ通りにはいかない経験もまた学びのひとつだ。今後は、生活者視点で相手の必要に応じた情報を発信出来るよう野菜・果物と向き合い、生産者の思いもしっかりとキャッチ出来るよう自己研鑽していきたいと思っている。
大西真由美さんのプロフィール
広島県在住。アクティブ野菜ソムリエ。講師の依頼を受け公民館や地域の食の研究会などで季節の野菜・果物のレシピや食の情報を発信している。今年度より、コミュニティ広島代表として生産者訪問や広島でのキッズ野菜ソムリエイベント等企画準備中。
取材 / 文:野菜ソムリエ / ベジフルビューティーアドバイザー タナカトウコ