2015年11月11日UP
子どもの頃の食卓の記憶。それは「ほうれん草のおひたし」である。魚の煮付けや焼き魚のつけあわせとして、わが家では定番であった。忙しかった母にとって、さっと茹でるだけで食べられる「ほうれん草のおひたし」は、ビタミンAが豊富な野菜を家族に食べさせるための便利な存在だったのであろう。中学校で家庭科の教師をしていた母は、家族には栄養を考えた食事を出さなければならないという強い意識があった。母は、子供の頃に家族を結核で亡くすなどの経験をしているので、それは脅迫観念に近いものだったかもしれない。
しかしながら、仕事から帰宅後、大急ぎで炊事をしていた母が用意した「ほうれん草のおひたし」は、かつおぶしとしょうゆをかけただけの何の変哲もないもの。子どもの味覚では美味しいと思えなかったが、「薬と思って食べなさい。」という母の言葉に従い、頑張って食べていた。
小学生の時分にしっかりと刷り込まれた「とにかく野菜を食べるように」という母の教えは、成人して就職し、実家を離れてからも消えることはなく、食事の時には出来るだけ野菜を食べるよう心がけていた。結婚をし、「ほうれん草のおひたし」を妻が作ってくれるようになった頃には、自分の味覚も大人になり、ほうれん草の素朴な味わいを充分に楽しめるようになっていた。その後、単身赴任をきっかけに自分でも料理をするようになり、薬と思わなくても食べられる野菜を使った美味しい料理が、短い時間でも簡単に作ることが出来ると気がついた。そして、自分で作ったほうれん草の白和えやサラダなど晩ご飯の写真は、SNSにアップロードするようにもなった。
野菜ソムリエを目指したのは、家庭の状況から単身赴任を続けるのは難しく退職を考えた頃だった。退職後に何をしようかと考えた時、単身赴任で自炊をしている方に向けて、ヒントになるようなレシピやノウハウをブログで情報発信しようと思い立ったのがきっかけだった。ただのおじさんが発信するよりも、「野菜ソムリエ」と認定されているおじさんが発信する方が情報に説得力があると考えたのだ。そして、初級であるジュニア野菜ソムリエを通信講座で受講し、続けて中級の野菜ソムリエも取得した。
現在は、両親を含めた家族とともに暮らし、前職で培ったITのスキルを活かして、ブログの執筆と農業経営に関するデータ管理を便利にする営農ソフトの普及をメインにした自営業を生業としている。さらに青果物ブランディングマイスターの資格も取得し、農業の収益性向上に役立つべく活動中だ。
野菜ソムリエとしては、野菜に関しての身近な観点から大きく社会的に問題とされていることまで、例えば、流行り始めた野菜の美味しい食べ方や栄養という観点から、世界での遺伝子組み換え作物の現状ということまで、それなりに自分の意見が持てるような人でありたいし、また、それを必要とすると思われる方に分かりやすい方法で伝えていきたいと思っている。
近藤裕昭さんのプロフィール
徳島県在住。アクティブ野菜ソムリエ、青果物ブランディングマイスター。IT関係の会社に勤務していたが、食べることへの興味が押さえきれず、東京での単身赴任中にサラリーマンをquit。自分の経験や考えが、単身赴任で自炊をしているお父さんのヒントになればとの思いでブログを綴る。
自炊で野菜を応援blog http://kaguyadk.net/
取材 / 文:野菜ソムリエ / ベジフルビューティーアドバイザー タナカトウコ