2015年12月8日UP
9年前、スーパーに勤務し、青果部門を担当していた頃のことだ。地方の卸売市場で競り値が一番高い胡瓜があった。当時の上司に「なんでこんなに高いのか?」と素朴な疑問を投げかけると「食べてみなさい。」との答えが返ってきた。促されるままに丸かじりしてみると、種は小さく、カリっとした歯ごたえの良い食感、甘みがあって苦みはない。気がつけば1本完食していた程の美味しさだった。これが藤川農園の胡瓜との出会いだ。そして、競り値が高いのには理由があることを知り、生産者さんのこだわりに興味を持ち始めるきっかけとなった。
早速、藤川農園に連絡して圃場に伺い、どういう風に育てているのかを実際に見て、話を聞いた。藤川農園では、胡瓜の収穫が終わった後、牧草を植えて土の力を増進させているという。出荷時期は春と秋。その時期以外は出荷しない。長さや曲がり具合などの選別基準も厳しく、納得のいかない仕上がりの胡瓜は出荷しないというこだわりようだった。圃場で撮らせてもらった写真や生産者の想いは「藤川さんちの胡瓜」と題したポップにして、売り場に取り付けた。これを機に、良いものを作る生産者には自分から連絡をとり、直接話を伺って、ポップに反映させるようになった。
そうして生産者のこだわりを知っていくうちに、野菜についてもっと知りたいという気持ちが高まっていった。また、買い物をする時に野菜について色々と教えてくれる野菜ソムリエがいるスーパーはこの付近では他にないとも思い、野菜ソムリエの資格を取得した。そして、試食を出す時は野菜ソムリエスタイルで店頭に立つようにもなった。当初は仕事のための資格取得だったが、野菜ソムリエコミュニティ山口に参加して色々な職業の方と会うことで刺激をもらい、上司からの後押しもあって、内閣府主催「食育推進全国大会」での講話にチャレンジするきっかけともなった。講話では、広島県立大学の生徒と「野菜のおいしい見分け方とクイズ」「アンチエイジングジュースの試飲」を行った。
前職であるスーパーの青果部門勤務の繋がりから、農業を次世代に受け継ぐ基盤作りができればと思い、現在は、山口県内の農産物の流通・卸売の仕事に従事。野菜ソムリエとしては、仕事だけでなく視野を広げて様々なことにチャレンジするきっかけになった感謝から、野菜ソムリエコミュニティ山口の副代表を務めさせてもらっている。産地見学や農産物アピールの試食の企画をしたり、山口県長門市社会福祉協議会や公民館からの依頼で食育の講話や料理教室の開催をしたりしている。さらには、長門市のラジオ番組で食育のお話をさせていただいたり、スーパー勤務での知識を活かして食べ比べや野菜の見分け方などの講話やイベント企画の依頼を受けたりなど、多方面から野菜ソムリエとしての活動の場をいただいている。
佐藤 顕吾さんのプロフィール
山口県在住。ジュニア野菜ソムリエ。農業を次世代に受け継ぐ基盤作りができればと思い、長門市や萩市をはじめとする山口県内農産物の流通・卸売の仕事に従事。野菜ソムリエコミュニティ山口の副代表を務め、公民館など地域と連携して、食育、イベント、産地見学などを企画している。
取材 / 文:野菜ソムリエ / ベジフルビューティーアドバイザー タナカトウコ