野菜ソムリエの思ひ出の味
宮崎県の佐土原ナス

2016年6月8日UP
 2012年夏、静岡県掛川市で開催された「ap bank fes12」へ行った際のことである。フードエリアの「kurkku village」で肉バーガーを購入するために待っていると、シェフからスライスされたナスを手渡された。なんとそのシェフは、かの有名なアルケッチャーノの奥田政行シェフだった。渡されたナスは「宮崎県の佐土原ナス」だという。バーガーに挟むために2センチ程度にスライスされたものだったが、まだ焼く前の生の状態だった。有名シェフが目の前にいただけでも動揺していたのだが、それまでナスをそのまま生で食べた経験はほぼ無かったため、生のナスを食べることには一瞬だけ躊躇もした。だが、野菜を愛する奥田シェフがせっかく薦めてくれたものだ。口にしてみると、エグミは全く無く、むしろ甘みを感じた。とてもやわらかい食感で、あまりの瑞々しさに正直驚いた。
 当時、私はジュニア野菜ソムリエの資格を取得して数ヶ月の頃。ナスは好きな野菜ではあったが、焼きナスや味噌炒めで食べることが大半だった。この経験から、もっと他の食べ方を知りたいと思い、パスタやカレー、中華など、様々な調理法にもチャレンジするようになった。ナスには、蒸す・煮る・揚げる・茹でる・焼く・炒めるなど、どのような食べ方にも順応できる魅力がある。今では、味噌汁に入れるのもお気に入りの食べ方のひとつである。

佐土原ナス入りバーガー

 さて、私がジュニア野菜ソムリエとなったのは、野菜に元々興味があったこともあるが、嫁ぎ先が焼肉店を営んでいて「焼肉屋の嫁が野菜ソムリエっておもしろくない?」という安易な気持ちが実は一番の理由だった。しかし、受講を機に、野菜や果物に関心を持つ仲間が増え、皆と語り合ううちに、野菜はもちろん、たくさんの美味しい果物がある地元山梨県の魅力が多くの人に伝わっていないことに気が付いた。また同時に、そのために何かできないかと考えるようにもなった。そしてうまれたのが、山梨県甲府市×野菜ソムリエプロジェクト「こうふるふぁーむ」だった。甲府市や山梨県が主催するイベントで野菜や果物を使ったスイーツやスムージーなどを販売したり、観光列車に同乗して山梨県産の野菜や果物をPRしたり、伝統野菜の食べ方提案を行ったりしている。今後は親子を対象とした農産物収穫イベントなども企画する予定だ。
 現在の活動の主軸は、代表を務める「こうふるふぁーむ」にあるが、「野菜ソムリエコミュニティ山梨」の運営にも携わっている。山梨県ではまだ開催されていない「キッズ野菜ソムリエ養成講座」も実施したいと考え、登壇講師の資格も取得した。山梨県での野菜ソムリエ講座の開講があれば、野菜ソムリエ(中級資格)にもチャレンジしたい。なお、今は県内での活動に留まっているが、将来的には県外にも目を向けて発信をしていければとの思いもある。安易な気持ちで飛び込んだ世界だったが、当初は考えてもいなかったところまで活動範囲が広がっている。

村上由実さんのプロフィール
山梨県在住。 ジュニア野菜ソムリエ、パンアドバイザー。IT企業で務める傍ら、甲府市×野菜ソムリエプロジェクト「こうふるふぁーむ」代表として、他メンバーと共にフルーツ王国山梨を盛り上げる活動を展開中。「野菜ソムリエコミュニティ山梨」の事務局も兼務し、コミュニティを代表して野菜ソムリエアワードへも参戦している。
野菜ソムリエコミュニティ山梨のブログ http://ameblo.jp/yscy/

取材 / 文:野菜ソムリエ / ベジフルビューティーアドバイザー タナカトウコ