2016年7月6日UP
幼い頃、母が私に作ってくれた「レモネード」。それが私の思ひ出の味である。しんしんと雪が降り始めた冬の空。庭に咲く紅い椿の花に雪が積もる様子。母と窓の外を眺めながら、リビングで一緒に「レモネード」を飲んで温まった静かな時間。一つの絵のように今も幸せな思い出として記憶に残っている。レトロな雰囲気が漂う飴色の耐熱カップに入れられた母のお手製レモネードは、幼少の私が飲みやすいようはちみつの甘さを感じるやさしい味わいだった。4歳違いの妹は傍らでお昼寝をしていた時間が多かったように思う。今思えば、母にとっては育児の合間のゆったりとした息抜きの時間だったのであろう。私にとっては、母を一人占めできる温かい時間だった。
愛情のこもった美味しいご飯、そして楽しい食卓はお腹も心も満たしてくれる。そう実感し、そう思えるように育ててもらった私はとても幸せなのだと思う。大人になって、私も結婚し母親となった。二人の息子はすでに中学3年生と小学6年生に。この子たちにとって思ひ出の味となるのは何だろうか、そんなことを想像するのも楽しい時間である。この子たちが成長し家を出るまでの時間は意外と少ないのかもしれない。食卓を囲む時間を大切にしたい。そう、ふと思う。
結婚後、温暖な静岡県へ移り住んだ。嬉しかった事の一つは近所でレモン栽培が行われていることである。冬から春にかけて、地元産の無農薬レモンが手に入るのだ。レモネードを作って家族で味わうだけでなく、ジャム、はちみつ漬け、レモンピールにして焼き菓子を作るなど、静岡県産のレモンを存分に楽しんでいる。
結婚10周年の記念といえば、「スイート10ダイヤモンド」のプレゼントが一般的だと思うが、宝飾品よりも「食」に興味がある私は、「ジュニア野菜ソムリエ」講座の受講をリクエスト。「君らしい」と主人は快諾してくれた。資格取得後は、コミュニティ静岡にも加入し、ジュニア野菜ソムリエとして活動する場面も増えていった。その中で出逢う幅広い年齢層、職業、考え、立場の異なる方々から学ぶことは非常に多い。主婦として過ごしてきた私だが、ビジネスの最前線で活躍している異業種異年齢の野菜ソムリエ仲間との交流によって「周囲における自分の役割」と「社会人のマナー」をも意識するようになった。また、日々勉強の姿勢を意識するようになったことも、良い変化だと思っている。現在は、市役所での講座に登壇したり、カフェスペースを借りてイベントを催して「有機農家さんの野菜販売」を行ったりするなど、地域に密着した活動を展開している。
小櫛 香穂さんのプロフィール
静岡県在住。ジュニア野菜ソムリエ、ジュニア食育マイスター。野菜ソムリエコミュニティ静岡 副会長 兼 広報担当。結婚して嫁いだ静岡県で野菜の魅力にはまる。「私に関わってくれる人すべてを笑顔にしたい」そんな想いで地域密着の活動を展開。静岡県初のキッズ野菜ソムリエ認定講師としてこの夏「キッズ野菜ソムリエ育成講座」を県内各地で開催予定。
「Vege Taberu Table KAHO」
取材 / 文:野菜ソムリエ / ベジフルビューティーアドバイザー タナカトウコ