野菜ソムリエの思ひ出の味
師匠や友達と一緒に作った「にんじんのフィナンシェ」

2016年12月21日UP
 私がジュニア野菜ソムリエになったきっかけは、小学校4年生の頃に参加した料理教室である。講師は遠州三河で活動しているシニア野菜ソムリエの山城知美さん。今では野菜ソムリエの師匠と慕っている方だ。
 山城さんには、直売所に出すため父が栽培したミニにんじん「エコエコキャロット」を吟味してもらっていた。また、山城さんはクッキングサロンを主宰されていたので、当時、お菓子づくりに興味を持っていた私のために、母が料理教室の開催をお願いしてくれたようだった。そして、春休み一日限りの特別版料理教室が開かれ、私は友達と一緒に参加をした。

474_memory_l

 レッスンで習ったのは、自分の家で採れたにんじんを使ったフィナンシェだった。友達と一緒に作ったことが楽しく、参加者みんなの顔にも笑みがあふれていたことが印象に残っている。フィナンシェを作ったのは初めてだったが、自らの手で作ったお菓子がお店のような味に仕上がったという喜びも笑顔の背景にあるだろう。
 出来上がったフィナンシェは、にんじんの臭みがなくとても食べやすかったことを覚えている。にんじん特有の苦みやエグみが出ないようにすりおろさないことやバターを使うなどレシピに工夫がこらされていたからだ。この体験から料理の楽しさを知り、食に興味を持つようになった。また、野菜ソムリエになりたいと初めて思ったのもこの日だった。

 父が栽培していたオレンジ色のミニにんじん「エコエコキャロット」は、今は「アムス」という名前にリニューアルしたようだ。種苗会社からは、オレンジ色の「アムス」と、黄色の「テルダム」で、使い切りサイズで皮ごと食べられるミニキャロット専用品種「アムス&テルダム」として出されている。

 最初は、「制服がかっこいい」というのが野菜ソムリエになりたい主な理由だったが、人付き合いの仕方などの勉強をはじめて、人間性そのものを高められると感じたことも、資格取得への後押しとなった。そして昨年の夏、念願かなってジュニア野菜ソムリエとなった。資格取得後は、農家見学、マナー講座、野菜の勉強会などを通して自らの知識を深めている。野菜ソムリエ同士の交流などから、細かいことに気を配ることができるようになったとも思う。今は高校受験を控えている時期だが、将来の夢のために野菜ソムリエの活動は続けていきたいと考えている。

谷野仁美さんのプロフィール
静岡県在住。ジュニア野菜ソムリエ。野菜に囲まれ育った女の子。農家の長女として生まれ、中学二年生の夏に念願だったジュニア野菜ソムリエに合格。現在、受験生だが先輩野菜ソムリエと一緒に活動する機会も増えている。将来は食農関係の仕事で活躍するのが夢。

取材 / 文:野菜ソムリエ / ベジフルビューティーアドバイザー タナカトウコ