野菜ソムリエの思ひ出の味
ゴロゴロに大きく切ったカボチャの煮物

2017年2月8日UP
 秋から冬の時期、我が家の定番おかずはカボチャの煮物だった。両親が共働きだったため、台所は主に祖母が担当していた。祖母がつくるカボチャの煮物は、5センチ角ほどにゴロゴロと大きく切ったカボチャを、両手で抱えるくらいの大きな鍋で煮たものだ。しょう油で味付けされてほっこりと煮上がったカボチャは、温かいうちに大皿に盛られて食卓へと出されるのが常だった。子どもの頃の私は嫌いなものが多かったが、このカボチャの煮物だけは大好きだった。何度もおかわりをしたり、余って冷たくなった煮物をそのままつまみ食いしたりした記憶さえある。甘くてホクホクのカボチャは、一番好きな野菜だったのだ。

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 ずっと食に無頓着で、好きなものを好きなだけ食べるという生活をしていた私だが、出産を機に家族の健康について考えるようになった。そして、健康=野菜という単純な考えから野菜ソムリエの受講を決めたのだった。そうは言っても私は野菜全般が相変わらず苦手だった。その中ですんなり入っていけたのが、子どもの頃から好きだったカボチャだった。勉強をしていくうちに、カボチャでもいろんな品種があり、品種ごとに味や食感、香りが違うことに気づいた。しだいに他の野菜・果物の品種にも興味が沸き、それらの魅力にハマっていった。そして、もっと野菜・果物のことが知りたくなり、その上の資格である野菜ソムリエプロを目指した。 
 資格を取得してから私は大きく変わった。それは野菜・果物が大好きになったことだ。また、それまで全くダメだった料理だが、野菜ソムリエになってからはスーパーに行って食材を選び、料理するのが楽しくなり、品種の特長をいかしたレシピを考えるまでにもなっている。野菜・果物を通して、いろんな方々と交流できることも楽しく、様々な面で広がったことが、私にとってとても幸せなことだ。

 私の野菜ソムリエの原点とも言えるカボチャの煮物だが、今では、ダッチオーブンを使って蒸し焼きにして、調味料は加えずにカボチャそのものの味を楽しむのが、我が家流のカボチャの煮物になっている。家族で囲む食卓では、「今日の品種は前に食べた時のものより甘い!」「食感がホクホクだ!」などと会話が弾む。特に新しい品種を食べる時は、まず本来の甘さを確かめるのが、我が家の最初の儀式のようにもなっている。儀式を経て我が家のお気に入りとなったカボチャは、夏から初秋に多く出回る「ダークホース」だ。甘味が強くてホクホクしているのが特徴で、毎年、家族皆で出荷を楽しみにしている。また、9月中旬から10月下旬まで出荷される「宿儺(すくな)カボチャ」もおいしい。岐阜県高山市の伝統野菜でへちまのような形と白皮が特徴だ。こちらも甘味が強くてホクホクしている。

 こうして家族で野菜・果物の魅力を楽しんでいるが、今後は、この魅力を一人でも多くの方に知っていただけるよう、外に向けての発信もしていきたいと思っている。また、子どもの食育も重要だと思っているため、自分自身がもっと勉強して、食の大切さや素晴らしさも伝えていきたいと思っている。最近では、「まつのベジフルサポーター」を務めさせていただくようになり、地元富山県の野菜について勉強することが多くなった。地元富山県の野菜・果物についても、より多くの方に知っていただけるよう、頑張っていこうと思っている。

明野 依里佳さんのプロフィール
富山県在住。野菜ソムリエプロ。ジュニア食育マイスター。アスリートフードマイスター3級。夫、小三の息子の3人家族。富山で開催される野菜ソムリエ講座のアテンドや、キッズ野菜ソムリエの講師を務める。「まつのベジフルサポーター」としても活動している。

※2017年1月10日より資格名称が変更しております。詳しくはこちら

取材 / 文:野菜ソムリエプロ / ベジフルビューティーアドバイザー タナカトウコ