野菜ソムリエの思ひ出の味
丸ごと食べたきゅうり

2017年3月22日UP
 私にとっての、野菜ソムリエの思ひ出の味。それは、幼稚園の頃に食べたきゅうりである。当時は夏休みになると母の実家へ泊まりに行って祖母たちと過ごしていた。祖母は家族で食べる分だけの野菜を畑で栽培していて、毎日畑へと行っていた。その日は私も朝早くに起きて祖母について行き、一緒にきゅうりの収穫をした。祖母が収穫したきゅうりをかごに入れて家まで運ぶ。それが私のお手伝いだった。

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 畑のすぐそばには、養老山脈からの支流で水が冷たくてキレイな川が流れていた。祖母は数本のきゅうりを小さな籠に入れ、川岸の足場のようなところにある囲いにそれをそっと沈め冷やしておいてくれた。おやつの時間になると、祖母と一緒に川縁に座り、足だけを水に浸しながら、並んできゅうりを丸かじりした。きゅうりの収穫も初めて、丸ごとかぶりついて食べるのも初めての体験だった。冷やしただけの何の味付けもしていないきゅうりだったが、本当においしかったことをよく覚えている。
 その日収穫したきゅうりは、夜ごはんにきゅうり炒めとして登場した。祖母のレシピは、10本程度のきゅうりをごま油と醤油で炒め、たっぷりのかつお節をかけただけのシンプルなものだが、とても味のよいものだった。母が言うには、自分でつくっても祖母のあの味は出ないのだという。祖母は、きゅうり以外にも白菜や大根、じゃがいもをつくっていた。それらの葉っぱは虫食いだらけだったが「虫も食べに来るほどおいしいお野菜なんだよ~」と言っていたことを思い出す。
 
 祖母の畑での初体験以降、近所の畑で野菜を見つけると何の野菜かな~と子ども心にも興味を持つようになった。今までは、きゅうりやトマト、大根なども食べる部分しか知らなかったため、畑での姿を見つけるのは非常に楽しかったように思う。
 大人になって「野菜・果物の魅力や感動を周囲に伝えることができる人」になろうと思い、当初から野菜ソムリエプロを目指した。また、受講中に限界集落での農業の話の本を読み、農業や生産のことについてもっと知りたいと思ったことも野菜ソムリエプロを目指す気持ちを強くしてくれた。資格取得後、農業を取り巻く様々な問題や食の安全についてさらに関心を持つようになった。現在は、生産者の声をたくさんの生活者に知ってもらえるような活動ができる野菜ソムリエになりたいと思っている。そして、まだまだ社会的に野菜ソムリエとは何をする人なのかという内容の認知度が低いので、野菜ソムリエを職業として成り立つようにしていきたいと考えている。

椙村清代さんのプロフィール
愛知県在住。野菜ソムリエプロ・冷凍生活アドバイザー。昨年野菜ソムリエプロになったばかりで、現在は名古屋の協会にてアテンドをしている。今年から自宅でのお野菜教室を開始。友達のカフェでも、食べ比べや農業についての話など、私なりのお野菜教室を計画中。野菜果物のことだけでなく、農業が抱える様々な問題や、食の安全についても生活者と一緒に考える機会を作っていけたらいいなと思っている。
ブログ http://ameblo.jp/sugi02-mura/

※2017年1月10日より資格名称が変更しております。詳しくはこちら

取材 / 文:野菜ソムリエプロ / ベジフルビューティーアドバイザー タナカトウコ