野菜ソムリエの思ひ出の味
母が作ってくれたアスパラガスのバター炒め

 5月から6月の時期、北海道では露地物の太くて柔らかいアスパラガスが出回る。毎年この季節になると思い出すのは、今は亡き母が作ってくれたグリーンアスパラガスのバター炒めである。大きめの斜めカットにしたアスパラガスを生のままバターで炒め、仕上げにさっと醤油で味付けしたものだ。旬の露地物は、採りたてならば生でも食べられる。歯ごたえがあるくらいに軽く炒めてあり、アスパラガスの甘みが感じられる一品だった。

 夕食の準備をしていた母がアスパラガスのバター炒めを作って食卓に載せると、子どもだった私はバター醤油のよい香りにつられてよくつまみ食いをしたものだった。一口食べると、もう一口となる。そのうち弟もつまみ食いに参戦し、しまいには夕食の前に山盛りのアスパラガスが全部無くなってしまうこともあった。そんな時、また始まったぁ〜という顔をしながら、怒ることもなくニコニコしていた母の顔がふと思い出される。

 私が子どもだった当時、アスパラガスは5月から6月にだけ出回る季節限定の野菜だった。バター炒めの他に、肉巻きやベーコン巻き、卵巻きなどお弁当にも彩りよくアスパラガスが入っていることが多く、この時期は特にお弁当が楽しみだった記憶がある。母が作るお弁当は、詰め方、カラーの使い方、野菜のかわいい切り方など工夫がいっぱいだった。
 私も今や3人の息子を持つ母だ。北海道の露地物アスパラガスが旬の時期になると、母の味を思い出しながらアスパラガス料理をつくり、お弁当に入れるようになった。野菜ソムリエプロとなり、お弁当講座が開催出来ているのも、母のお弁当があったからこそだと思う。

 野菜ソムリエを目指したのは、家族に野菜料理を食べさせたい!そう思って野菜の勉強をしたくなったのがきっかけだ。資格取得後は、講座や料理教室で野菜の話をするために道内各所を移動し、たくさんの方々との出会いを楽しみながら生活するようになった。専業主婦だった頃からは考えられない時間を過ごしている。今後は、3年前から活動してきた野菜の冷凍活用法についてもますます伝えていきたい。そしてより楽においしく野菜を食べてもらえるような提案を年齢性別問わず様々な方に聴いてもらえるような野菜ソムリエになりたいと思う。またアスリートフードマイスターの知識も合わせて、野菜の素晴らしさをお伝えしていきたいとも考えている。

 さて、北海道のアスパラガスのおすすめの食べ方は、1本そのままを塩茹でして丸かじりだ。北海道ならではの豪快さと極上の味わいが楽しめるだろう。私の最も好きなアスパラガスの食べ方は相変わらず母のレシピのバター醤油炒めだが、息子たちは一本そのままに豚バラ肉をくるくる巻いて焼いてかぶりついて食べることを好むようだ。年子の息子たちは現在三人とも大学生で自炊生活を送っている。野菜ソムリエとしては、親元を離れて自炊している息子世代にもおいしく野菜を食べられる話もしていければと思っている。

高橋 道子さんのプロフィール
北海道在住。野菜ソムリエプロ。べじふるらぼ代表。ライフオーガナイザー1級、アスリートフードマイスター1級、看護師。野菜や食についての知識をお伝えしながら、ストレスフリーな生活空間を提案している。講師活動の他、トータルフードコンサルティングも行なっている。
「野菜ソムリエみっちゃんのライフオーガナイズ生活」http://ameblo.jp/green-apple-friend/
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written by

タナカトウコ

/取材・文

野菜ソムリエプロ、ベジフルビューティーアドバイザー。薬膳や漢方の資格も複数保有し、「食」を軸に多角的に活動中。書籍に「日本野菜ソムリエ協会の人たちが本当に食べている美人食」「毎日おいしいトマトレシピ」「旬野菜のちから−薬膳の知恵から−」等がある。
ホームページ http://urahara-geidai.net/prof/tanaka/
インスタグラム toko_tanaka