野菜ソムリエの思ひ出の味
新潟の道の駅で買って食べた生食のトウモロコシ

 数年前、全国を自転車で旅していた頃のこと。ふと立ち寄った道の駅で出会った「生のトウモロコシ」それが私の思ひ出の味である。

 特に目的があるわけではなく、純粋に日本全国を旅してみたいという気持ちではじめた気楽なひとり旅だった。7月に東京を出発して埼玉から群馬を通り、新潟へ到着。その頃には地元の食材を見るために、直売所や道の駅によることは習慣化していた。
 その日は夕飯の買出しを兼ねて「新潟ふるさと村」に立ち寄った。売り場に着くと、皮つきのまま1本ずつビニール袋に入れられたトウモロコシが目に入った。皮が少しめくられた状態で包装されていたのは、中の鮮やかな黄色を見せるためにあえてそうしていたのだろう。「ミルキースイーツ」という品種で、よく見かけるものよりも一粒一粒が小粒だった。POPには「生食おすすめ」と書いてある。それまでトウモロコシを生で食べたことなどなかったので、試しに1本購入した。

 夕方、走り疲れて宿へ到着。早速生のままかぶりついてみると、皮は薄く口の中にせんいが残るような感覚はない。噛んだ時にたっぷり甘い果汁が弾けるような、そんな感じがした。それまで食べたことがある茹でたトウモロコシとはまったくの別物で、まるでフルーツを食べているような感覚だった。そのまま一気に食べ進め、あっという間に食べつくしたことを覚えている。

 その後、自転車旅は山形から青森へと北上し、8月には北海道へ入った。新潟でのトウモロコシ生食体験を機に、夏の間に自転車で巡った東北・北海道では生食できるトウモロコシを見つける度に食べてみるようになっていた。その後、自転車旅は9月に北海道を出て南下。その旅でのトウモロコシの旬は終わってしまった。各地で食べてみたのだが、その旅では最初に食べた新潟のトウモロコシに勝るものはなかった。

 さて、野菜ソムリエの資格は自転車旅の前に取得していた。家族の食事をつくる立場として、自分を含め家族の健康管理のために野菜の栄養や使い方について勉強したいと思ったことからだった。新潟での体験は、知っている食べ方や調理方法にとらわれることなく、まず生で食べられるならそれを試してみるという習慣づけのきっかけになったのではないかと思う。

 トウモロコシの魅力は、品種や収穫のタイミングによって、生食・茹でる・蒸す・焼く等、様々な方法で調理でき、シンプルにかぶりつくものから、丁寧に裏ごししたスープなど、食べ方や手のかけ方のバリエーションが豊富なところだと思う。我が家では、茹できび(外皮を1枚残してレンチン)、いろんな夏野菜と一緒に揚げ浸し、あんかけの具、クリームコロッケなどにして食べるのを好む。もちろん、生食できるトウモロコシを入手できた時は、そのまま生でかぶりついてみるのだが。

佐々 智雄さんのプロフィール
東京都在住。野菜ソムリエプロ。食堂や料理教室などを通して、「楽しく続けて健康に」をモットーに食を伝える活動をしている。
ブログ https://ameblo.jp/moonsunmoon/
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written by

タナカトウコ

/取材・文

野菜ソムリエプロ、ベジフルビューティーアドバイザー。薬膳や漢方の資格も複数保有し、「食」を軸に多角的に活動中。書籍に「日本野菜ソムリエ協会の人たちが本当に食べている美人食」「毎日おいしいトマトレシピ」「旬野菜のちから−薬膳の知恵から−」等がある。
ホームページ http://urahara-geidai.net/prof/tanaka/
インスタグラム toko_tanaka