私は静岡で根菜類を主体に一人農業をしている。5年ほど前のある日のことだ。テレビで紹介されていた里芋アイスが福井県の「大野芋」でつくられていると知った。これが、大野芋との出会いだった。
大野芋に興味を持った私は、早速各種種苗店からカタログを取り寄せ、種芋を入手した。それを蒸して試食してみると、肉質がきめ細やかで歯ごたえもあり、海老芋よりは多いが土垂れほどではない適度な粘り感、且つのど越しがよい。とてもおいしく感じて気に入ったので、お客様に推奨したくなった。まずは10株程度で栽培。掘り上げた自家栽培の大野芋を試食してみると、種芋を試食した時と変わらないおいしさだった。そこで様子を見ながら徐々に株数を増やし、4年目からは販売をはじめた。大野芋は食感のバランスがとても良い。煮崩れしにくいので煮物やきぬかつぎ等に最適だ。親芋は粘りが少なくなるのでコロッケなどにおすすめしている。
大野芋の栽培を契機に各地の里芋を取り寄せてみるようになった。実際に自分で栽培してみて、気に入ったものを増やすようにしている。現在は、大野芋、釈迦堂、石川早生、大和芋、海老芋、セレベス、土垂れ、八名丸、竹芋の8種類を栽培中だ。料理や一般のお客様の好みに合った里芋を提供できるよう日々挑戦を続けている。
さて、私が野菜ソムリエになったのは昨年のことである。JAの広報誌で知ったのがきっかけだった。資格取得後は、販売の場で野菜の魅力を簡潔に表示するようになり好評を得ている。特に「里芋はどれも同じ」と思われていたお客様からは、「里芋でもいろいろな味が楽しめる」と喜ばれるようになった。それから世の中のニーズを感じて機能性野菜も積極的に栽培するようになり、お客様から感謝されている。今後の展望としては、根菜類は水洗いして出荷するのが主だが、鮮度保持のため土つき野菜を推奨していこうと考えている。
タナカトウコ
/取材・文
野菜ソムリエプロ、ベジフルビューティーアドバイザー。薬膳や漢方の資格も複数保有し、「食」を軸に多角的に活動中。書籍に「日本野菜ソムリエ協会の人たちが本当に食べている美人食」「毎日おいしいトマトレシピ」「旬野菜のちから−薬膳の知恵から−」等がある。
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