高校時代はお弁当持参。私は部活の朝練があったため、母はその分早起きをしてお弁当づくりをしてくれていた。ある日、母の前で「私のお弁当は茶色い」とつい口にしてしまった。すると、時々お弁当の中に「アスパラベーコン」が入るようになった。母なりに彩りや可愛らしさを考えてくれたのだと思う。ベーコンが巻かれた中太の「グリーンアスパラガス」が、2巻きずつ楊枝で串刺しにされて入っていた。ピンクとグリーンの色のコントラストも可愛く、女子高校生の私にとってうれしいおかずだった。お弁当の蓋を開けた時、「アスパラベーコン」が入っているとテンションが上がった!母が入れてくれたアスパラベーコンがきっかけで、私はアスパラガスが大好きになったのだった。
アスパラガスの魅力は、まっすぐ天に向かって伸びていく力強い姿にもある。疲労回復やスタミナ増強に効果が期待されるアミノ酸の一種「アスパラギン酸」も含まれ、まさにパワーフード、パワー野菜だと思う。副菜としてだけでなくメイン料理としても味わいたい野菜である。
野菜ソムリエの資格を取得してからは野菜の成長過程にも興味を持つようになったのだが、アスパラガスの成長した「葉」を見た時は予想外の変身ぶりにとても驚いたものだ。同時にフワフワと生い茂る葉っぱを可愛らしくも思った。
家での「グリーンアスパラガス」の食べ方は、シンプルに茹でてマヨネーズをかけたり、斜め切りしてシメジと炒めて卵でとじたり…が定番だった。いつ頃だったか、どこのレストランだったかは忘れてしまったが、丸々一本ソテーして温泉卵をのせたものをいただいて、こんなにおいしい食べ方があるんだ~!と感激した。まったく同じとはいかないが、その食べ方も我が家のレパートリーに加わることとなった。
一方で「ホワイトアスパラガス」は、数年前までそんなに好んでは食べていなかった。缶詰のネガティブな印象(グニャッとした食感)が強かったからだ。しかし旅先のドイツで、そのイメージは一変した。茹でたホワイトアスパラガスにオランデーズソースがかけられた料理が名物として出され、それがとても爽やかでおいしかったのだ。
ホワイトアスパラガスの軟白栽培の大変さを知ってからは、なおのことありがたくいただくようになった。ほかにも紫アスパラガスやミニアスパラガスなど、様々な種類のアスパラガスも楽しみたいと思っている。
家庭料理ではその家ごとによく買う食材があって献立も偏りがちだが、レストランや旅先での外食体験がきっかけで家庭料理のバリエーションが増えることもある。人生も同じで同じ行動ばかりだとマンネリ化してつまらなくなってしまう…。年を重ねて落ち着くのもよいが、いつまでも新しいことにチャレンジして、ものの見方や考え方を広げていきたい。料理も日本の伝統料理から世界の料理まで視野を広げていきたい。そして、野菜の旬や料理のバリエーションを伝えられる野菜ソムリエを目指そうと思っている。
ホームページ:https://smileritz.net/
タナカトウコ
/取材・文
野菜ソムリエプロ、ベジフルビューティーアドバイザー。薬膳や漢方の資格も複数保有し、「食」を軸に多角的に活動中。書籍に「日本野菜ソムリエ協会の人たちが本当に食べている美人食」「毎日おいしいトマトレシピ」「旬野菜のちから−薬膳の知恵から−」等がある。
ホームページ http://urahara-geidai.net/prof/tanaka/
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