取材ノート
間引きみかんと耕作放棄地の有効活用!
愛媛発の新しい調味料「塩みかん」

塩レモンならぬ「塩みかん」をご存知ですか?

みかんの一大産地である愛媛県発の新しい調味料とのこと。そして、その誕生の背景には、野菜ソムリエが関わっているとか、いないとか。その謎を解くべく、商品開発をされた、農業生産法人 株式会社ミヤモトオレンジガーデンの宮本さんにお話を伺ってみました。

「塩みかん」とはどのような商品ですか?

当社で栽培している栽培期間中農薬不使用のみかんを、塩漬けにして熟成させたえひめの新しい調味料です。摘果みかん(間引きみかん)を使用した「青みかん」と、完熟みかんを使用した「完熟みかん」の2種類があります。
 
万能調味料として、みかん特有の優しさと柔らかさで、肉でも魚でも野菜でもいろいろな料理によく合います。

「青みかん」、「完熟みかん」の2種類にした理由はありますか?

「青みかん」は摘果みかん(未完熟の間引きみかん)を使っているので、酸味があり香りが強いのが特徴です。
 
「完熟みかん」は、「青みかん」を試されたお客様から熟れたみかんの「塩みかん」を試してみたいとのご要望をいただいて開発しました。

商品化するきっかけは何だったのですか?

私たちは、「みかんの新しい価値を創りたい」との想いで事業に取り組んでいます。
 
みかんを栽培する中で、みかんの良品をつくり木の負担を減らすために、7月から10月頃までの間、「摘果」という間引き作業を行います。間引きされたみかんは、その場に廃棄して土に返しており、何か有効活用が出来ないかと考えていました。
 
そんな中で、野菜ソムリエプロの小宅祐子さんから、塩レモンのことをお聞きして、たまたま耕作放棄の畑の話もあり、みかんでも同じように出来ないかと考えて挑戦しました。

摘果みかん有効活用への挑戦だったのですね。
開発段階で苦労したことや良かったことはありますか?

塩みかんを商品化するために、野菜ソムリエプロの小宅祐子さんと知久幸子さん、愛媛県庁、愛媛県産業技術研究所、愛媛県立農業大学校、愛媛産業振興財団等の専門家の皆様にご参加いただきまして「塩みかんプロジェクト」を立ち上げました。
 
私自身は、料理はもちろん、食品加工の知識が全くありませんでしたので、材料の選定、プロセス確立、製造条件、デザイン、活用レシピ提案等、本当にゼロから皆さんと一緒に商品を創りあげたのです。
 
また、今まで世の中にはない商品を創るという点では、塩みかんは塩分が約20%あり、塩みかんだけを食味すると塩分が強すぎて、みかんのイメージと異なる点をよく指摘されました。もう少し商品化を後にした方がいいのではないかというご意見もあり、正直なところ非常に迷いましたが、調味料選手権2015で奥田政行シェフより「審査員特別賞」をいただいたり、地元のテレビや新聞で取り上げられたり、愛媛でも老舗で皇室御用達の道後温泉ふなや様でご採用いただいたりして、本当にまだまだこれからではございますが、まずは世の中に出して良かったなと思っております。

使用しているみかんの品種にこだわりはありますか?

温州みかんで、「宮川早生」という品種です。「宮川早生」は、愛媛みかんを代表するみかんの中で一番おいしい品種になります。

みかんは皮ごと使用するため、当社栽培で栽培期間中農薬不使用のみかんを使用しています。もともと耕作放棄になった園地を引き継ぎましたので、栽培チームが本当に一生懸命になって畑を再生しているところです。大豆肥料を利用するなど有機JAS認証取得に向けて準備を進めています。
 
また、使用している塩は愛媛県産の「伯方の塩®」です。塩も愛媛県産にこだわっています。その他、加工食品を扱う上で、安心・安全には十分注意して取り組んでおります。

「塩みかん」は、心をこめて作られた商品なのですね。
食卓では、どのように活用したらいいですか?

調味料として、「塩みかん」の良いところは、みかん特有の優しさや柔らかさがあり、あまり出しゃばらずにまわりの素材を活かすところです。まずは塩の代わりとしてお使いいただきたいです。
 
「青みかん」は下味用として、シャープな香りで料理の引き締めにご利用いただけます。「完熟みかん」は最後の仕上げにひとふりで、熟れたみかんのまろやかな甘さと香りを楽しんでいただけると思います。
 
その他、いろいろな活用方法は下記をご覧いただければ幸いです。
 
塩みかんレシピ集 >
 

下味用と仕上げ用という使い分けですか!なるほど!
宮本さんが特に気に入っている食べ方はありますか?

道後温泉ふなや様で出していただいたメニューで、鯛のオリーブオイル焼きに添えられていた、白ワインとエシャロット、生クリーム、無塩バターに「塩みかん」を加えた、「ブールブラン」ソースが本当においしかったです。

他には、展示会でいつもご紹介している、塩みかんを使用した「かぶやキャベツの浅漬け」もシンプルですが、塩みかんの良さが出ておいしいですよ。

コク系もさっぱり系も合うのですね!
ところで、新しい商品展開の予定はありますか?

「塩みかん」をベースにしたドレッシングを開発しています。ドレッシングとしてそのまま利用することや、カルパッチョソースとしてもご利用いただける商品です。
今夏での商品化を目標に準備を進めております。

それは楽しみですね!
お忙しいなかありがとうございました。

取材協力・写真提供:農業生産法人 株式会社ミヤモトオレンジガーデン
http://www.orange-garden-inc.jp/

photo
written by

タナカトウコ

/取材・文

野菜ソムリエプロ、ベジフルビューティーアドバイザー。薬膳や漢方の資格も複数保有し、「食」を軸に多角的に活動中。書籍に「日本野菜ソムリエ協会の人たちが本当に食べている美人食」「毎日おいしいトマトレシピ」「旬野菜のちから−薬膳の知恵から−」等がある。
ホームページ http://urahara-geidai.net/prof/tanaka/
インスタグラム toko_tanaka