「お鍋でおいしい」「サラダでおいしい」など調理法別のタイトル、そして料理写真が大きくデザインされた商品パッケージ。一見して調味料?と思いきや、なんとその中身は野菜の種子!!
栽培の先を行く商品を開発した経緯について、株式会社サカタのタネ 広報宣伝部の力石さんと藤田さんにお話を聞いてきました。(開発担当の原田さんの話をお二人から代弁いただきました)
野菜の種子のパッケージとしてはとても斬新ですね。
品種名は小さく、料理や調理キーワードをメインに扱った背景を教えてください。
生活者に「食べる」という新しい側面から品種を選んでいただけるようにしました。また、料理はしても野菜栽培はしないという女性が意外と多いようです。料理写真はそういった方々の興味を引きやすく、野菜栽培の未経験者がチャレンジするきっかけになることを期待したからです。
なお、パッケージの表には料理写真をメインに、裏には料理のレシピに加えて園芸相談窓口の電話番号も載せています。栽培から調理までしっかりフォローするのも「サカタキッチン」シリーズの特徴です。
なるほど!
このアイディアがひらめいたきっかけは何ですか?
ナス「マー坊」やサラダハクサイ「タイニーシュシュ」のように、食べ方の説明が必要な珍しい品種について、どう伝えたらよいかと悩んでいたところ、レシピ紹介サイト「サカタキッチン」の料理写真とレシピで食べ方を伝えることを思いつき、社内コラボをすることになりました。
御社の品種を使ったレシピ紹介サイトですか?
はい。当初は「サカタ食堂」の名称で2010年からサービスを開始したレシピ紹介サイトです。後に「サカタキッチン」へ名称変更しまして、2017年9月現在で約300種類の当社品種を使用したレシピを掲載しています。レシピのコンセプトとしては、シンプルで使いやすく、素材の能力を生かせるレシピ、かつ、品種によってそれぞれ収穫時期が違うので、収穫される季節にあったレシピの提案をするように心掛けています。
少しずつ営業の場でも活用されてきており、直売所だけではなく、種苗店で料理画像を使ったり、チラシにも使われたりしています。
ところで、常識を覆す商品化にはご苦労があったのでは?
社内では「青果物の写真でないと売れない」との声が強く、社内調整などで商品化には苦労しました。上司の説得から始まり、生産部門、営業部門など、関係部署をまわって地道に説得を続け、2年くらいかけて商品化しました。
逆によかったことはありましたか?
ホームセンターに提案した時に反応が大変よかったことです。2016年秋に実施した試験販売も好調でした。ホームセンター、また一般のお客様は食べ方を説明する売り方を望んでいたことが分かりよかったです。2017年7月上旬の正式販売では、媒体にも多く取り上げられました。大きな評判を呼び、うれしかったです。
パッケージの料理はどのように選んだのでしょうか?
当社のレシピ紹介サイト「サカタキッチン」の中で、アクセス数が多かったもの、かつ、時短調理が求められる時代背景から、調理に手間のかからないものを選びました。
現在(2017年9月)の商品ラインアップは?
ダイコン『冬しぐれ』、カブ『あやめ雪』、キャベツ『金春』、ブロッコリー『緑帝』、ハクサイ『さとぶき622』、ハクサイ『タイニーシュシュ』、コマツナ『黒みすぎ』、チンゲンサイ『シャオパオ』、『オータムポエム』、レタス『リバーグリーン』、ネギ『永吉冬一本太』の計11品種です。
家庭菜園でよく作られる秋まきの品目のうち、栽培初心者でも作りやすい品種を選びました。
どこで購入出来ますか?
全国の種苗店、園芸店、ホームセンターのほか、サカタのタネガーデンセンター横浜直営のオンラインサイトでも購入が可能です。
「サカタのタネっと」 >
ちなみに、力石さんのお気に入りはどれですか?
ダイコン「冬しぐれ」です。
緻密な肉質で鍋にするとホクホクとおいしいダイコンです。
掲載レシピの試食をしている時にたまたま通りかかって食べたのですが、それが簡単でおいしくて。以来はまっています(笑)
藤田さんのお気に入りは?
カブ「あやめ雪」です。
葉っぱの付け根部分の紫色が自慢の可愛い色鮮やかなカブ。
普通のスーパーではなかなか売っていないので、是非とも家庭菜園で育てて食べてみてほしい品種です。プランターでも栽培出来ますし、育っている姿も絵になりますよ。
今後、新しい展開は予定していますか?
11品種というボリュームは変わらない予定ですが、季節に合わせてミニカボチャ「プッチィーニ」やナス「マー坊」、ミニパプリカ「セニョリータ」など春まき品種に一部入れ替える予定です。レシピ紹介サイト「サカタキッチン」で人気の出るレシピがあれば、それを使用した商品を作ることも検討しています。
また、絵袋種子としては、今後は栄養価が高くて育てやすい商品、今秋新発売した「カラフルニンジン」のような、目にも楽しいミックス商品なども作りたいと思っています。
種の世界はまだまだ奥が深いですね。
食卓をイメージしながら種を買い、数ヶ月後に調理する。
ありそうでなかった新しい野菜の楽しみ方に、私も試してみようかなと密かに思いました。
取材協力・写真提供:サカタのタネ 野菜統括部 TEL:045-945-8802
タナカトウコ
/取材・文
野菜ソムリエプロ、ベジフルビューティーアドバイザー。薬膳や漢方の資格も複数保有し、「食」を軸に多角的に活動中。書籍に「日本野菜ソムリエ協会の人たちが本当に食べている美人食」「毎日おいしいトマトレシピ」「旬野菜のちから−薬膳の知恵から−」等がある。
ホームページ http://urahara-geidai.net/prof/tanaka/
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