取材ノート
ミートボールで有名なあの会社は、マニアックな野菜好き集団だった!?(後編)

自社製品の直売コーナーやレストラン、キッズスペース、キッチン付きのワークショップルームまで完備している石井食品のコミュニティハウスViridian。後編では、広報担当リーダーの蜂谷さんに館内を案内していただきながら引続きお話をうかがいました。

前編はこちら

地元の方々でにぎわうカフェスペース

明るくて心地よい空間ですね。オープンしたのはいつですか?

2014年8月です。「食べる。話す。あそぶ。みんなで作る。ときには学ぶ。ここにくれば、いつでも楽しい食がある。」をコンセプトに地元の方に開放しています。
 
絵本・漫画など書籍の閲覧は自由。広めのキッズスペース、おむつ替えシートなどのご用意もありますよ。水分補給やトイレなど気軽な休憩スポットとして、災害時は避難所としてご利用いただければと思います。

それはいいですね! 近所なら通いたいです(笑)
あれ? こちらはキッチン付きのお部屋ですね。

こちらでは、地域の方の困りごとや興味にそった内容の食育イベントを実施しています。自社開催だったり、外部講師を招いたり、野菜講座、お弁当作り講座、おせち料理講座、タイやルーマニアなど各国の料理教室、親子クッキングなど、親子向けからシニア向けまで様々な企画を楽しんでもらっています。レンタルスペースとして貸し出しもしていますので、お友達同士の集まりにご利用される方もいらっしゃいます。

大型キッチンスペースは料理教室やパーティにも

レストランコーナーの脇にあるのは、セルフコーナーですか?電子レンジやお皿が並んでいますが・・・。

はい、そうです! 直売店で購入された商品をこの場で温めてお召し上がりいただくことが可能です。持ち込みもOKなので、例えば「おにぎり持参でおかずだけ購入」など、ご自分のスタイルで楽しんでいただけます。

幅広い年代が集う飲食ゾーン

レストランでは、どのようなメニューが楽しめますか?

旬の野菜をたくさん使用し、当社の商品にひと手間だけ加えたシンプルなメニューをご提供しています。ご自宅でアレンジメニューを作る際の参考にしてもらえたらと思い、レシピカードのご用意もありますよ。

それは嬉しいサービスですね! ドリンクメニューには千葉県の地酒もあるんですね。

ドリンクは気軽に楽しめる100円コーヒーの他、琥珀ヱビスビール、地元千葉県の日本酒、珍しいクロアチアワインのご用意もあります。イシイのミートボールのおつまみアレンジメニューもありますので、ちょい飲み感覚でお立ち寄りくださる方もいらっしゃるようです(笑)。地酒やワインは直売スペースで販売もしています。

こちらが直売スペースですね。商品数の多さに驚きました!

ここではほぼ全ての当社商品を販売しています。様々な味のミートボールやハンバーグの他に、工場直送ミートボール、地域特化型の限定商品など、直売店か通信販売でしか手に入らないレア商品も販売しています。

直売店にはレアな限定商品もずらりと並ぶ

食物アレルギー配慮商品も充実していますね。

前編でも少しお話しましたが、無添加調理を追求していった結果として、食物アレルゲンである乳・卵を使わずに、ミートボールやハンバーグを作ることができるようになりました。しかし食物アレルギー配慮専用施設での製造ではありませんから、当初は「食物アレルギー配慮」といった打ち出しはしていませんでした。
 
本格的に商品化へと至ったのは、お客様サービスセンターに届いた要望がきっかけでした。食物アレルギーによって普段の食事に苦労されているというお声がとても多かったのです。そこで、きちんとした専用施設を作ろうという経営判断がされました。

食物アレルギー配慮食品製造施設

専用施設では、納入口を分けるなど厨房ごとに食材が混ざらない工夫を施し、衣服や器具の区別・管理、徹底した水の管理、空調も独立させて空気からの混入も防ぐなど、あらゆるリスクを排除しています。

厨房ごとに作業着も色分け

商品化にあたっては、食物アレルゲンとなる食材を使わないだけでなく、おいしい商品をつくらなければなりません。しかしその両立は非常に大変なことでした。例えば「小麦」は調味料やつなぎによく使われている食材です。醤油や酢は小麦フリーのものに変え、つなぎは試行錯誤してサトイモを代用食材にしました。トマトソースはトマトのみで作ったトマトペーストを使用して素材本来の味を活かすなど、多くの工夫と試作と試食を重ねて今の商品があります。食物アレルギー配慮食品は、“無添加調理”の究極なんですよね。

無添加調理の究極とは!かわいらしいパッケージの背景にはそんな苦労が秘められているのですね。

じつはそうなんです! 例えば、「とうもろこしのスープ」でいうと、試行錯誤した結果、原材料は厳選したとうもろこしと食塩のみ。無添加調理の究極ですよね(笑)。最小限の材料ですがとてもおいしいです。飲んでみてください。

お、おいしい! とうもろこし本来の甘みと香りが生かされていますね。

ですよね(笑)。個人的にも気に入っている商品なんです。これら当社の食物アレルギー配慮商品は、「ご家族みんなでいっしょのお食事を」という思いから、「いっしょがいいね」というブランドでシリーズ化されていまして、カレーソースやブラウンソースなど、他にもいろいろな商品があります。

いっしょがいいねシリーズ「野菜入りハンバーグブラウンソース」「とうもろこしのスープ」「チキンライスの素」をつかっています。

非常食のラインナップもあるのですね。

2012年の夏から販売しています。東日本大震災がきっかけですね。元々あった社内用の非常食「おかゆとおかずのセット」を改良して商品化しました。食物アレルギー配慮専用施設での製造ではありませんでしたが、食物アレルギーのある方にも食べられるようジャコをキノコに変更したり、水も火も使わずにそのまま食べられる仕立てにしたり、無添加調理でも5年保存出来るよう包材の工夫もしました。また、スタンドパックにしたことで食器を使わなくてもお召し上がりいただけます。

非常食3日分セット

2016年からは、専用施設で製造した食物アレルギー配慮商品「リゾット3種セット」もラインナップに加わりましたよ。トマトの風味を生かしたイタリアンリゾット、とうもろこしの風味を生かした洋風リゾット、にんじん・ごぼう・しいたけの入ったかつおだしの和風リゾットです。これも温め不要で、開封したらすぐ食べられます。

リゾット3種セット

へぇ〜。リゾットの非常食ですか!

子どもでも食べやすい洋風のものをという声もあり、開発しました。商品名としては「非常食」ですが、食べごたえは抜群なので、普段の常備食として、キャンプなどのアウトドアでもご利用される方がいらっしゃるようです。

なるほど。いろいろな意味で特別な日のごはんなのですね。お忙しいなか、貴重なお話をありがとうございました。

実際にお話を聞いてみると、とことんお客様ファーストで、細やかな愛情がたっぷりの、マニアックな野菜好き集団だということがよくわかりました。機会があれば工場見学もしてみたいなと思った筆者なのでした。

取材協力・画像提供:石井食品株式会社 広報担当(阿部さん)
TEL:047-435-0141(本社代表)

photo
written by

タナカトウコ

/取材・文

野菜ソムリエプロ、ベジフルビューティーアドバイザー。薬膳や漢方の資格も複数保有し、「食」を軸に多角的に活動中。書籍に「日本野菜ソムリエ協会の人たちが本当に食べている美人食」「毎日おいしいトマトレシピ」「旬野菜のちから−薬膳の知恵から−」等がある。
ホームページ http://urahara-geidai.net/prof/tanaka/
インスタグラム toko_tanaka