秋に旬を迎える食材といえば、きのこ。中でもとりわけ身近なのが、しいたけでしょう。もともとは名前の通り、シイの木をはじめ、クヌギ、ナラ類、カシ類などの落葉広葉樹の枯れ木に自生していたもので、その姿はまさに木の子ですね。日本での歴史は非常に古く、平安時代には乾燥させたものを中国へ輸出していたのだとか。ただし非常に高級品であったため、庶民の口に入るようになったのは、原木栽培によって生産量が増えた江戸時代からだといわれています。
しいたけが好む樹木を手頃な大きさに切り、しいたけ菌を植え付け、天然に近い環境で栽培する原木栽培は、今なお広く行われています。原木栽培のものは春と秋に収穫期を迎え、秋に発生するものは秋子と呼ばれ、香り高いのが魅力です。冬を越した春のものは春子と呼ばれ、身が締まっていて、うま味があります。
一方、近年よく見かける菌床栽培は、昭和40年代からの研究が始まりました。オガ粉に米ぬかやフスマを加えて作った菌床に、しいたけ菌を植え付け、衛生管理されたハウス内で温度や湿度を調整して栽培するため、安全性が高く、年間を通して生産できます。この菌床栽培により、今では一年中、安定した品質のしいたけが入手できるようになりました。
生産量の第1位を見ると、原木栽培の乾しいたけは大分県、菌床栽培の乾しいたけは非常に少なく、原木栽培の生しいたけは静岡県、菌床栽培の生しいたけは徳島県となっています(農林水産省 平成29年特用林産基礎資料より)。
生しいたけvs.乾しいたけ栄養価勝負!
原木生しいたけの主な栄養価は100g当たり、カルシウムの吸収を促進するビタミンDが0.4㎍、ビタミンB12とともに赤血球の生産を助ける葉酸が75㎍、体内の余分な塩分(ナトリウム)の排出に役立つカリウムが270mg、腸内環境を整える食物繊維が5.5gであるのに対し、乾燥によって栄養素が凝縮された乾しいたけはビタミンDが12.7㎍、葉酸が240㎍、カリウムが2100mg、食物繊維が41.0gと圧倒的な栄養価となっています。さらに、乾・生ともに低カロリーなのも、健康が気になる世代にはうれしい食材です。
うまみ成分とビタミンDを増やす裏技!!
しいたけのうまみ成分グアニル酸は、生しいたけを冷凍してから加熱調理したり、乾燥→水戻し→加熱調理という工程を経ると、細胞壁が壊れ、うま味成分のグアニル酸がぐっと増えるといわれています。また、乾しいたけは、5℃程度の冷水でゆっくり戻すと、うま味がグンとアップするそうです。食品用ポリ袋に乾しいたけと冷水を入れ、空気を抜いて密封し、冷蔵庫へ。肉厚の「どんこ」なら10時間、肉の薄い「こうしん」なら5時間ほどかけて戻すのがおすすめです。
また、しいたけに含まれる成分エルゴステロールは、紫外線を浴びるとビタミンDに変化します。天気のいい日に、生しいたけは30分~1時間、乾しいたけは1~2時間、軸を上にして日に当てるだけで、ビタミンDを増やせます。
おいしいしいたけの選び方&保存法
生しいたけは、ふっくらと肉厚で、かさが開ききっておらず、軸が太く、かさの表面に傷みが無く、かさの裏側が白く、変色がないものを選びましょう。調理の際は、水洗いすると香りが落ちるので、汚れが気になるときは、湿らせたキッチンペーパーで軽く拭く程度に。3~4日の保存なら、ラップで包み、軸を上にして冷蔵を。使い切れないときは、冷凍すれば1カ月は保存OK!戻した乾しいたけも冷凍保存できます。いずれの場合も、使いやすい大きさに切り、食品用の密封ポリ袋に入れて冷凍し、凍ったまま加熱調理にしてください。戻し汁は製氷皿に注いで凍らせ、密閉容器で冷凍保存すれば、和え物などにもサッと使えて便利です。また、調理の際に切り落とした軸も、うま味たっぷり!捨てずに、きんぴら、炒め物、細かく刻んで餃子やハンバーグなどに活用してくださいね。
しいたけ、ししとう、長ねぎを、オーブントースターでこんがり焼いて、だし汁に浸すだけ。シンプルな調理だからこそ、素材の風味が生きる一品です。
- しいたけは半分に、長ねぎは長さ4センチに切り、オーブントースターで焼き色がつく程度に焼きます。
- だし汁大さじ3、薄口しょうゆ大さじ1、みりん大さじ1を合わせ、沸騰させてアルコールをとばし、焼き上がった1を5分ほど浸します。召し上がる際に、すだち、かぼすなどをお好みで添えても。