菜果図録
日本が誇る伝統野菜!かぶ

 木枯らしが吹く頃から、おいしくなる野菜の一つが、かぶ。11月頃から1月にかけて、もっとも多く出回ります。日本では非常に古くから愛されてきた野菜で、かぶらとも呼ばれてきました。お正月明けの1月7日、無病息災を願って食す七草がゆに用いる春の七草(セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ)のスズナは、かぶを意味しています。

 原産地はアフガニスタンや地中海沿岸の南ヨーロッパといわれ、日本へは弥生時代に伝わったのだとか。奈良時代にはすでに食べられていたようで、日本書紀にも「蕪」という文字が記されています。江戸時代には全国各地でさまざまな種類が栽培されるようになり、今もそれぞれの地域ならではの品種が大切に育てられています。ちなみに、生産量の第1位は千葉県、次いで埼玉県となっています(農林水産省 平成30年産指定野菜の統計より)。

全国各地に個性派いろいろ

 大きなもの、小さなもの、白いもの、赤いもの、丸いもの、細長いもの・・・形も色も多種多様なかぶ。たとえば伝統的な品種だけでも、日本最大のかぶで、中には5kgを超えるものもあるという、300年以上の歴史を持つ、千枚漬けでおなじみの京都の「聖護院かぶ」、特産品すぐき漬に使われる京都の「すぐき菜」、山形県鶴岡市温海(あつみ)地区で昔ながらの焼畑農法で栽培されている、濃い赤紫色の丸い「温海かぶ」、同じく山形県の新庄市周辺で昔から栽培されてきた「最上かぶ」、明治末期に東京の葛飾区で改良され、高級料亭などで愛された「金町小かぶ」、かぶら寿司に使われる石川県の「金沢青かぶ」、江戸時代後期から島根県松江市津田地区で栽培されている「津田かぶ」、大阪の「天王寺かぶ」、滋賀県の「万木(ゆるぎ)かぶ」や「日野菜」、宮崎県の「平家かぶ」など、個性を競い合うかのように、全国各地に実にさまざまな品種があります。
 また、定番の白かぶ他、中は白く皮だけが赤い赤かぶ、生育の途中で土の上に出た上部だけが美しい紫色に染まる「あやめ雪」、主にヨーロッパで栽培されている黄かぶなど、思わず食べ比べてみたくなるほど、かぶの品種は多彩です。

葉の栄養素にもご注目!

 かぶに含まれる栄養素といえば、まずは免疫力アップやコラーゲンの生成に役立つビタミンCで、100g当たり19mg含まれています。また、デンプン分解酵素ジアスターゼ(アミラーゼ)が含まれているため、胃もたれや胸やけの予防や解消が期待されます。また、赤かぶには抗酸化力にすぐれたアントシアニン色素が多く含まれています。
 さらに、葉には100g当たり2800㎍ものベータカロテン、根よりも多い82mgものビタミンCが含まれており、カルシウムや鉄分も含まれていますので、捨てたりせずに活用してくださいね。

かぶの選び方&保存法

 葉の緑色が鮮やかで、しなびておらず、白かぶなら変色がない真っ白なもの、赤かぶなら鮮やかな紅色のものを選びます。保存する際は、まず葉を根元から切り落とし、別々に保存します。いずれも水分が逃げないように、ポリ袋などに入れ、冷蔵庫の野菜室へ。葉は購入した翌日までに、根は4~5日以内に調理しましょう。葉はサッとゆで、水気を絞り、使いやすい長さに切って、冷凍保存してもOKです。


フライパンでOK!
かぶ、にんじん、エリンギ、鶏手羽中のロースト

 かぶ、にんじん、エリンギ、鶏の手羽中を、ハーブと塩を加えたオリーブオイルでマリネし、フライパンで焼き上げました。鶏のうま味がしみ込み、野菜の甘さや風味が引き立ちます。

作り方(2人分)
  1. かぶ2個は葉の根元の土を竹串かき出しながらよく洗い、根は縦4等分に、葉は長さ4センチに切ります。にんじん1本はよく洗い、皮ごと長さ4センチに切り、縦4等分に切ります。エリンギ2本は長さ4センチに切り、縦半分に切ります。鶏の手羽中6本は、火が通りやすくなるように、骨に沿って包丁で切込みを入れます
  2. ポリ袋に、オリーブオイル大さじ1、タイム1枝、ローズマリー適宜、塩小さじ1を入れ、鶏の手羽中を加え、軽くもみ込み、1の野菜をすべて加え、全体をなじませます。
  3. フライパンの中央に鶏手羽中の皮目を下にして並べ、周囲にかぶ、にんじん、エリンギを並べ、強めの中火にかけて鶏手羽中の皮がこんがりと色づくまで焼き、焼き色がついたら肉と野菜を裏返し、かぶの葉をのせ、ふたをして弱火にし、火が通るまで焼きます。
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written by

堀 基子

/文・写真

野菜ソムリエ上級プロ。J Veganist。冷凍生活アドバイザー。アスリートフードマイスター3級。ベジフルビューティーセルフアドバイザー。ジュニア青果物ブランディングマイスター。アンチエイジング・プランナー。受験フードマイスター。第6回・第8回野菜ソムリエアワード銀賞受賞。