菜果図録
西青東白とは何の野菜? 長ねぎ

 寒さがつのる冬の夜、なによりのご馳走といえば、あつあつの鍋料理。冬場に最盛期を迎える長ねぎは、生で食べると辛みが強いのですが、加熱するとトロリとした食感になり、甘みがぐっと増して、鍋料理には欠かせない存在です。ねぎは、白い葉柄部分を食べる白ねぎと、緑色の葉柄を食べる青ねぎに大別され、関東では根深ねぎ・長ねぎとも呼ばれる白ねぎ、関西では葉ねぎ・万能ねぎ・九条ねぎなどの青ねぎが好まれます。確かに、そば、うどんなどの薬味でも、関東では白ねぎが添えられますが、関西では青ねぎが定番ですね。

 年間の都道府県別ねぎ出荷量では、第1位が千葉県56,700トン、第2位が埼玉県44,900トン、第3位が茨城県43,500トンで、以下、北海道、大分県、秋田県、鳥取県と続き、関東を中心に全国各地で生産されていることが分かります(農林水産省 平成30年産指定野菜の統計より)。特に関東周辺で栽培される長ねぎの約7割は冬場に出荷されます。

全国各地で個性いろいろ!長ねぎ品種

 長ねぎの種類は、千住ねぎと加賀ねぎに分けられます。おなじみの長ねぎは「千住ねぎ」で、根深ねぎの代表的な品種です。栽培時に土寄せを行い、白い部分を長く育てます。加賀ねぎの代表的な品種には、群馬県下仁田町の特産で上州一本ねぎや殿様ねぎとも呼ばれる「下仁田ねぎ」、金沢の伝統野菜「加賀野菜」にも選ばれている「金沢一本太ねぎ」などがあります。他にも、宮城県仙台や福島県郡山で育てられている「曲がりねぎ」、山形県庄内地方の伝統野菜「平田赤ねぎ」、茨城県の赤ねぎ「ひたち紅っこ」、茨城県水戸地方の伝統品種を改良した「レッドポアロ―」、青森県の「南部太ねぎ」、愛知県の伝統野菜「法性寺ねぎ」など、各地で大切に栽培されている品種がたくさんあります。冬に各地を旅行する機会があれば、その土地の直売所を訪ねて、その土地ならではの品種を探してみるのも楽しそうです。

長ねぎ特有の香りで疲労回復!

 長ねぎには、免疫力を高める効果が期待されるビタミンCが11mg、妊娠中や授乳期に欠かせない造血のビタミンと呼ばれる葉酸が56μg、含まれています(以上、可食部100g当たりの含有量)。また、長ねぎ特有の強い香りと辛みは、硫化アリルという成分によるもので、糖質のエネルギー代謝を助けるビタミンB1の吸収を高め、疲労回復に役立つ他、抗酸化力にもすぐれています。

おいしい長ねぎの選び方&保存法!

 店頭で選ぶ際には、葉が緑色でみずみずしく、白い部分が長く、巻きがしっかりと締まり、弾力があり、持ってみて重く、緑と白の境目がくっきりと分かれているものを選びましょう。葉がしおれて柔らかくなったもの、白い部分の巻きがゆるいもの、軽いものは、鮮度が落ちている場合があります。
 保存の際は、新聞紙で包み、立てた状態で冷暗所へ。使いやすい長さにカットする場合は、ポリ袋に入れるかラップで包み、冷蔵庫の野菜室へ。使い切れないときは、小口切りや斜め切りにして冷凍保存しておくと、すぐに使えて便利です。


長ねぎが主役!ねぎま鍋

 美食家で知られる北大路魯山人が好んだという、長ねぎを立てて並べたすき焼き。その手法を取り入れ、まぐろと合わせ、ねぎま鍋に仕立ててみました。まぐろは加熱しますので、筋の多い切り落としやぶつ切りでも十分おいしく仕上がります。

作り方(2人分)
  1. 長ねぎ2本は長さ4センチに切りそろえ、まぐろは食べやすい大きさに切ります。
  2. 昆布だし汁2カップ、しょうゆ大さじ3、みりん大さじ3を合わせておきます。
  3. 土鍋の中央に長ねぎを立てて並べ、周囲にまぐろを並べ、2を注いで火にかけ、長ねぎに火が通ったら出来上がりです。お好みで七味唐辛子や柚子胡椒を添えて。
photo
written by

堀 基子

/文・写真

野菜ソムリエ上級プロ。J Veganist。冷凍生活アドバイザー。アスリートフードマイスター3級。ベジフルビューティーセルフアドバイザー。ジュニア青果物ブランディングマイスター。アンチエイジング・プランナー。受験フードマイスター。第6回・第8回野菜ソムリエアワード銀賞受賞。