菜果図録
インド版ほうれんそう!? つるむらさき

 夏になると直売所などでよく見かける、つるむらさき。原産は東南アジアといわれ、「インドのほうれんそう」を意味するインディアン・スピナッチとも呼ばれます。確かに、特有の土のような香りは、ほうれんそうの根元のあたりにも似ていますね。2000年以上も昔から食用として親しまれ、江戸時代には日本へ伝わっていたそうで、貝原益軒の「菜譜」(1704年)では「わかき苗も、葉もくらうべし」と紹介されています。また、亜熱帯の沖縄では、ジュビンまたはジービン(地紅)の名で、古くから愛されてきました。
 つるむらさきは、その名の通りに茎が赤紫をした赤茎種と、葉も茎も緑色の緑茎種があり、現在、国内で流通している多くは緑茎種です。福島県、宮城県、徳島県、山形県、埼玉県などで生産されています。


ビタミンCは温州みかんより豊富!

 つるむらさきはビタミンやミネラルが豊富で、とてもヘルシーな緑黄色野菜です。100gあたり、免疫力UPや美肌に役立つビタミンCは温州みかんよりも多い41mg、すぐれた抗酸化力で知られるベータカロテンは健康野菜ケールと同量の2900μg、骨や歯の形成に必要なカルシウムはほうれんそうの約3倍の150mgも含まれています。また、加熱すると、モロヘイヤのようなぬめりが出てくる、ねばねば野菜でもあります。猛暑のあまり店頭へ並ぶ葉野菜が少なくなる夏場に、ゆでても炒めても美味なつるむらさきは、とてもありがたい貴重な存在です。

つるむらさきの選び方・保存法・調理のコツ!

 店頭で選ぶ際は、葉が肉厚で、切り口がみずみずしく、成長し過ぎておらず、若くて柔らかそうなものを選びます。
 保存する場合は、湿らせた新聞紙で包んでからポリ袋などに入れ、冷蔵庫の野菜室で立てた状態で冷蔵し、できるだけ早く使い切りましょう。
 調理のポイントは、柔らかい葉と硬い茎を分けること。水洗いした後、葉だけを摘みとり、茎は根元の固い部分を切り落とし、まずは茎だけを1分ほど塩ゆでし、ゆで上がる寸前に葉も加え、しんなりとしたら、すぐにざるに上げて、冷水にとります。水気を切り、食べやすい大きさに切って、お浸し、白和え、ごま和えなどに。つるむらさき特有の土っぽい香りが苦手な方は、コクや香りの強い調味料やスパイスと組み合わせて調理するのがおすすめです。今まで好きではなかった方も、ぜひお試しになってみてくださいね。


つるむらさきの白和え

 定番の白和えですが、隠し味にピーナツバターを使いました。ピーナツバターの濃厚なコクが、つるむらさき特有の少しクセのある風味をカバーしてくれます。


作り方(2人分)
  1. つるむらさき1パックはよく水洗いし、葉と茎を分けます。にんじん(小)1/2本は、斜め薄切りにしてから3ミリ幅の細切りにします。
  2. 鍋に水2リットルと①のにんじんを入れ、沸騰したら木綿豆腐100gを入れ、3分ゆでて取り出し、ざるに上げて水切りします。鍋の湯に塩を小さじ2を加えて沸騰させ、①の茎だけを入れて1分ゆでてから、葉を加え、葉がしんなりしたら、ざるに上げて水気を切り、すぐに冷水にとります。
  3. つるむらさきの葉は水気をしぼってから食べやすい大きさに切り、茎は3cmに切ります。木綿豆腐はキッチンペーパーに包んでよく水切りしてから崩し、みそ小さじ2、ピーナツバター小さじ2、きび糖小さじ2、塩少々、白すりごま小さじ2を加えてよく混ぜ、にんじんとつるむらさきを加えて全体を和えます。
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written by

堀 基子

/文・写真

野菜ソムリエ上級プロ。J Veganist。冷凍生活アドバイザー。アスリートフードマイスター3級。ベジフルビューティーセルフアドバイザー。ジュニア青果物ブランディングマイスター。アンチエイジング・プランナー。受験フードマイスター。第6回・第8回野菜ソムリエアワード銀賞受賞。