そうめん、冷奴、刺身などの薬味として、夏の食卓に欠かせない青じそは、ねぎ、しょうが、みょうがなどと並び、日本人が愛して止まない香味野菜。食欲が低下しがちな暑い季節も、爽やかな香りが食欲をそそり、夏バテ予防にも役立ってくれます。
青じそはシソ科シソ属の一年草で、初夏から夏にかけて旬を迎えますが、年間を通じてハウス栽培のものが流通しています。農林水産省が発表した令和2年産地域特産野菜生産状況調査によると、全国で生産されている収穫量8470トンのうち、4割以上を占める1位は愛知県の3870トン、2位は宮崎県1080トン、3位は静岡県671トン、4位は大分県603トンと続き、群馬県、茨城県、高知県、京都府、三重県など全国各地で生産されています。
青じそのルーツと楽しみ方
しそには青じそと赤しそがありますが、漢字で「紫蘇」と書く通り、もともとは赤しそだったのだとか。青じそは赤しその変種として生まれたとされています。ちなみに、葉の表面は青じそのような緑色、裏面は赤しそのような赤紫色をした、「片面紫蘇」という交雑種もあります。また、ヘルシーな食用油の原料として人気を集めているエゴマは、シソの変種です。
青じその種類としては、葉が平らな「平葉」と、葉が縮れた「縮緬(ちりめん)」があります。また、成長した葉だけではなく、発芽して間もない「芽じそ」は刺身やサラダなどの料理の彩りに、若い花穂の「花穂じそ」は刺身のあしらいやてんぷらなどに、花が咲き終えた後の「しその実」は佃煮や塩漬け、しょうゆ漬けなどにして食べます。ちなみに、青じそが大葉と呼ばれるようになったのは、芽じそ、花穂じそと区別するために名付けられたのだそうです。プランターなどで栽培すれば、青じその葉、芽じそ、花穂じそ、しその実がすべて楽しめますので、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
青じその香りと栄養学
青じそ特有の清々しく爽やかな香りは、ペリルアルデヒドという芳香成分によるもので、食欲増進作用に加え、すぐれた防腐作用と抗菌作用で知られおり、傷みやすい刺身のつまとして青じそを添えるのは、とても理にかなった先人たちの知恵なのです。
100gあたりに含まれる栄養素をチェックしてみると、体内でビタミンAとなって粘膜や皮膚を健やかに保つ働きで知られるベータカロテンは11000μgでにんじんよりも多く、造血のビタミンとして知られる葉酸は110μg、止血のビタミンと呼ばれるビタミンKは690μgと豊富に含まれています。ミネラルも、体内の余分な塩分(ナトリウム)の排出に役立つカリウムは500mg、貧血予防に欠かせない鉄は1.7mg、亜鉛も1.3mg含まれています。ビタミンもミネラルも豊富な青じそは、ぜひ日々の食卓に取り入れたい健康的な緑黄色野菜です。ちなみに、梅干しの色付けなどに用いられる赤しその赤い色は、抗酸化力にすぐれた色素成分アントシアニンによるものです。
青じその選び方と保存のポイント!
葉がみずみずしく、緑色が濃く、葉先までピンとしていて、葉や切り口が変色していないものを選びます。
保存の際は、グラスに少しだけ水を入れ、青じその葉を上にして軸だけが水に浸るように挿し、乾燥しないようにラップかポリ袋をかけて冷蔵を。グラスの水は毎日換えましょう。薬味として千切りにする際は、葉を5枚ほど重ね、軸を切り落し、重ねた葉を丸めて筒状にしてから細く刻むのがおすすめです。
獲れたてのアジなどの鮮魚に、青じそ、しょうが、ねぎなどの香味野菜とみそを加えて、包丁でたたいた、千葉県は房総半島の漁師料理「なめろう」。青じその香りが魚の生臭さを消すとともに食欲をそそります。たっぷり作ったら、ハンバーグのような形にまとめ、表面に青じそ1枚をのせて焼いても美味です。
● | 刺身用アジ | 2尾 |
● | 青じそ | 5枚 |
● | 長ねぎ | 10センチ |
● | しょうが | 1片 |
● | みそ | 大さじ1 |
● | 白ごま | 大さじ1 |
- 青じそ3枚、長ねぎ、しょうがはみじん切りにします。長ねぎは縦4等分になるように十文字に切り込みを入れてから細かく刻むと、手軽にみじん切りができます。
- アジは3枚におろし、小骨を抜き、刺身に切ります。すでに切ってあるアジの刺身でもOKです。
- まな板に②のアジと①の薬味とみそをのせ、包丁でたたきながら全体を混ぜ、青じそを敷いた器に盛ります。