年間を通じて店頭に並んでいるイメージがある、セリ科の緑黄色野菜にんじん。あまり知られていませんが、4~5月、10月、12月と年に3回、収穫の最盛期を迎えます。都道府県別の出荷量ナンバーワンを見ると、春夏はダントツで徳島県の51,200t、秋はほぼ北海道産で188,200t、冬は千葉県の69,700tを筆頭に長崎県、茨城県、愛知県、鹿児島県などで生産されています(農林水産省 令和元年産作物統計より)。
原産地はアフガニスタンといわれ、12~15世紀頃にヨーロッパへ広がりました。おなじみのオレンジ色のにんじんは西洋種と呼ばれ、17~18世紀頃のオランダで品種改良によって誕生し、アメリカを経て日本へ伝わりました。一方、12~13世紀頃に中国を経て日本へ伝わったものは東洋種と呼ばれます。
色も長さも個性いろいろ!
現在、日本で生産されている代表的なにんじんは、栽培・収穫がしやすい短根種の西洋種「五寸にんじん」ですが、他にも様々な種類があります。
オレンジ色以外では、黄色の「金美にんじん」、外側が紫色で中心部はオレンジ色の「パープルスティック」、中まで紫一色の「ダークパープル」、だいこんのように白い「スノースティック」などがあります。
ごぼうのように長い長根種は伝統的な東洋種に多く、「京にんじん」の名でも知られる「金時にんじん」、沖縄伝統の島野菜の一つで黄色い「島にんじん」、伝統的な肥後野菜「熊本長にんじん」、戦前まで盛んに栽培されていた「滝野川にんじん」などがあります。
さらに、女性の指ほどの大きさの「ミニキャロット」、従来の品種よりもベータカロテンが豊富な「ベータリッチ」といった個性的な品種もあります。
にんじんの皮はむくべき?
にんじんに含まれる栄養素といえば、英名キャロットが語源になったといわれるカロテンです。とりわけすぐれた抗酸化力で知られるベータカロテンの含有量は野菜の中でもトップクラス。ベータカロテンは体内でビタミンAに変わり、粘膜や皮膚を健やかに保つのに役立ちます。
なお、ベータカロテンは脂溶性なので、油で炒めたり、油を使ったドレッシングなどと一緒に食べると、効率的に摂取できます。さらに、その後の研究により、にんじん自体に微量の脂肪分が含まれているため、水から煮るとより吸収率が高まることが発表されています。ちなみに、100gあたりのベータカロテンの含有量は、皮つきの生にんじんが6900μgであるのに対し、油で炒めたにんじんは9900μg、ゆでたにんじんは10000μgと格段にアップします。
おいしいにんじんの選び方・保存法・調理のコツ
おいしいにんじんを選ぶ際の目安は、葉の付け根にあたる軸の大きさです。直径が小さいほど、芯と呼ばれる硬い木部が細く、果肉の柔らかい部分が多くなります。また、肩の部分が緑がかっていないものを選びましょう。葉付きのものは葉に栄養を奪われるので、購入後はできるだけ早く葉を切り落します。保存の際は、新聞紙などで包み、冷蔵庫の野菜室へ。
なお、皮と呼ばれている表面は、特にベータカロテンが多く含まれる内鞘細胞という部分です。本当の皮はオブラートのように非常に薄いため、畑から収穫し、土を洗い流す際にほとんどむけ落ちてしまいます。食感や仕上がりが気にならない料理なら、ぜひ丸ごと召し上がってみてくださいね。
細い千切りのにんじんを、塩、酢、砂糖、粒マスタード、オリーブオイルで和えて作る定番のキャロットラペ。今回はマーマレード、レモン果汁、プルーンを使い、フルーティに仕上げました。
- にんじん1本(200g)は細い千切りにし(スライサーでもOK)、塩小さじ1/2をふり、しんなりとしたら水気をしぼります。
- プルーン2粒は5mm幅に刻み、くるみは粗く刻みます。
- 食品用ポリ袋に、マーマレード大さじ2、オリーブオイル大さじ1、レモン果汁小さじ2を入れてよく混ぜ、①をすべて加え、袋の上から全体を軽くもみこみます。冷蔵庫でしばらく置いて、味がなじんだら出来上がりです。