菜果図録
朝顔菜!? 水のホウレンソウ!? 空心菜

 厳しい残暑が続き、店頭に並ぶ葉野菜が少なくなる中、青々とした元気な姿で目を引くのが空心菜です。東南アジアなどの湿地に自生してきた熱帯アジア原産の南国野菜で、7月から9月にかけて最盛期を迎えます。亜熱帯の沖縄では古くから湿地や水田で栽培されており、ウンチェーの名で伝統的農産物「島野菜」の一つにも数えられています。現在も沖縄県を中心に、温暖な九州などで栽培されていますが、近年は全国各地で生産されるようになりました。

空心菜はヒルガオ科サツマイモ属に分類され、小さな朝顔のような花を咲かせることからアサガオナとも呼ばれます。和名ではヨウサイ、エンサイとも呼ばれ、湿地を好むことから英語ではwater spinach(水のホウレンソウ)とも。しかし昨今は湿地ではなく、畑での栽培が主流となってきました。

栄養価にご注目!すぐれた健康野菜

 栄養面の特徴としては、鉄、カルシウム、ベータカロテンがとても豊富です。健康野菜として知られるホウレンソウと比べてみると、100g当たり、鉄は1.5mgでホウレンソウの約3/4、カルシウムは74mgでホウレンソウの約1.5倍も含まれています。また、すぐれた抗酸化力を持ち、体内でビタミンAに変換されて粘膜や皮膚を健やかに保つのに役立つベータカロテンは4300μgもあり、ホウレンソウと肩を並べる含有量です。さらに、鉄の吸収を助けるビタミンCは19mg、赤血球の生成に欠かせない葉酸は120μg、腸内環境を整えるのに欠かせない食物繊維は3.1g含まれていて、ぜひ積極的に食べたい非常にヘルシーな葉野菜なのです。

空心菜の選び方・保存法・調理のポイント!

 葉に傷みやがなく、しなびておらず、茎の断面が新鮮なものを選びましょう。傷みやすいので、できるだけ早く調理しましょう。保存する場合は、乾燥に弱いため、水をたっぷり含ませたキッチンペーパーで根元の切り口を包み、湿らせた新聞紙などで全体を包んでから、ポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室へ。他の葉野菜と同様に、葉を上に、茎を下にして、立てた状態で保存した方が長持ちします。
 葉は柔らかく、中が空洞になっている茎はシャキシャキとして、二つの食感が楽しめるのが空芯菜の魅力です。調理の際は、切ってから、もしくは切る前に、茎と葉を分け、先に茎を加熱調理し、後から葉を加えるのがポイントです。エグみやクセがないので、定番の炒め物の他、和え物やみそ汁の具にもよく合います。細かく刻んでカレーなどに加えても美味です。空心菜は火の通りが早いので、最後の方で加えましょう。暑さに負けない万能葉野菜の空心菜で、残暑を元気にお過ごしくださいね。


空心菜と厚揚げのオイスターソース炒め

 オイスターソース&鶏がらスープの素というWのうま味に、ごま油の香りが加わって、ご飯のおかずにも、ビールの肴にも、よく合う一品です。パプリカに豊富に含まれるビタミンCと、厚揚げに含まれるタンパク質が、空心菜に含まれる鉄の吸収を高めてくれるヘルシーなメニューです。

材料(2人分)
空心菜 1束
パプリカ(赤・黄) 各1/2個
エリンギ(小) 5本
にんにく 2片
厚揚げ(小) 1枚
オリーブオイル 大さじ1
オイスターソース 小さじ1
鶏がらスープの素 小さじ1
ごま油 小さじ1
こしょう 少々
作り方
  1. 空心菜はよく洗って水気を切り、茎の固い部分を切り落とし、長さ4センチに切り、葉と茎を分けておきます。パプリカは縦に幅1センチの薄切り、エリンギは縦半分に切り、にんにくは薄切り、厚揚げは厚さ1センチに切ります。
  2. 中華鍋にオリーブオイルとにんにくを入れて中火にかけ、いい香りが立ってきたらエリンギと厚揚げを入れて炒め、焼き色がついたら一度取り出しておきます。
  3. 空いた中華鍋に空心菜の茎とパプリカを入れて炒め、全体に油が回ったら空心菜の葉を加え、葉がしんなりとしてきたら②を戻して炒め合わせ、オイスターソース、鶏がらスープの素、こしょうで味を調え、仕上げにごま油を回しかけます。
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written by

堀 基子

/文・写真

野菜ソムリエ上級プロ。J Veganist。冷凍生活アドバイザー。アスリートフードマイスター3級。ベジフルビューティーセルフアドバイザー。ジュニア青果物ブランディングマイスター。アンチエイジング・プランナー。受験フードマイスター。第6回・第8回野菜ソムリエアワード銀賞受賞。