菜果図録
様々な野菜のご先祖様! ケール

 スーパーフードの一つとして注目を集め、人気を博している健康野菜ケール。中でも冬場に成長するものは、ほうれん草などと同様に、葉が凍結しないように糖度を上げるため、甘みが増して美味しくなります。

 ケールはアブラナ科アブラナ属に分類され、キャベツやブロッコリーなど同じアブラナ科の野菜のルーツとされています。原産地は地中海周辺といわれ、食用としての歴史は古く、紀元前にはギリシャで栽培されていたといいます。ヨーロッパを広く移動したケルト人が広めたことから、その名がついたという説もあります。やがてケールはアジアへと広まり、8世紀の中国ではケールの仲間であるカイランの栽培が始まり、日本へは江戸時代にオランダ船から伝わりました。当時は鑑賞用だったものが、後に葉ぼたんへと品種改良されたのだとか。そのすぐれた栄養価が注目されたのは、第二次世界大戦中の頃のこと。青汁の原料として着目されたのです。さらに時代を経て、健康意識の高まってきたアメリカでスーパーフードとして脚光を浴び、現在のケール人気へとつながります。
 海外では中国、インド、ロシア、韓国など各国で生産されており、国内では茨城県、島根県、岡山県、愛媛県、大分県、福岡県、鹿児島県、長野県など全国各地で栽培されています。

あのイタリア野菜もケールの仲間!?

 直売所などでおなじみのケールは「カーリーケール」と呼ばれる種類で、パセリのように葉が縮れているのが特徴です。苦味やクセが少なく、食べやすいため、スムージーやサラダなど生食に向いており、もちろん加熱調理にも使えます。ケールの新芽だけを摘んだものは「ベビーケール」と呼ばれ、茎まで軟らかく、苦味が少ないため、サラダに最適です。一方、平たく大きな厚みのある葉をしているのが、青汁に使われる代用的な品種の「コラードケール」で、ケール特有の苦味があり、加熱調理がおすすめです。歯のカールが強く、シワが少なめで、鮮やかな緑色をした小ぶりな「シベリアンケール」という品種もあります。
 また、近年、イタリア野菜として人気を集めているトスカーナ原産の黒キャベツ「カーボロネロ」もケールの仲間で、コラード系とカーボロネロを交配した別名カーボロリーフグリーンと呼ばれる「ゴズィラーナ」は2009年に品種登録されています。

ケールの栄養学

 ケールの最大の魅力は、そのすぐれた栄養価にあります。ケールから生まれた同じアブラナ科のキャベツと100g当たりの栄養価を比較してみると、まずひときわ目立つのがベータカロテンの含有量です。ケールには2900μgと、小松菜に迫るほど豊富に含まれています。ベータカロテンは体内でビタミンAとなり、粘膜を健やかに保つのに役立つため、乾燥や風邪などで鼻やノドの粘膜の健康が気になるこれからの季節には、ぜひ積極的にとりたい栄養素です。さらに、免疫力の維持や美肌に欠かせないビタミンCは温州みかんのおよそ2.5倍の81mgと非常に多く、赤血球の生成に関わることから「造血のビタミン」と呼ばれる葉酸も小松菜よりも多い120μg、丈夫な骨づくりに欠かせないビタミンKも小松菜と並ぶ210μg、体内の余分な塩分(ナトリウム)の排出を助けるカリウムは420mg、食物繊維総量はキャベツや小松菜の約2倍に相当する3.7gも含まれています。また、加齢黄斑変性症という目の疾患の予防に効果が期待されている色素成分ルテインも豊富であることが知られています。

ケールの選び方、保存法、調理のコツ!

 サラダなどで生食する場合は新鮮で葉が柔らかそうなものを、炒め物やスープなど加熱調理に使うなら葉が大き過ぎず硬すぎないものを、スムージーや青汁に使うなら葉が大きくしっかりと張りがあって緑が色濃いものを選びます。
 新鮮なケールはなるべく早く使い切るのがおすすめですが、食べきれないときは湿らせたキッチンペーパーで包んでからポリ袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で立てて冷蔵を。ただし、日ごとに苦味が増していきますので、生食するのは新鮮なうちに。大量に入手したときは、水を張ったボウルに浸け、よくふり洗いして水気をしっかりと切り、使いやすい大きさにカットし、食品用保存袋に平たく広げて入れ、空気を抜いて密封し、冷凍庫へ。加熱調理の際は凍ったまま加えればいいので便利です。

電子レンジでケールチップス

 電子レンジで手軽に作れる、ヘルシーなノンフライのケールチップスです。オリーブオイルをプラスすることで、ケール特有の苦味が抑えられて食べやすくなるうえに、脂溶性のベータカロテンの吸収率が高まり、一石二鳥!お子様のおやつに、ワインやビールの肴に、ぜひどうぞ。

材料(2人分)
カーリーケールの葉 3~4枚
オリーブオイル 大さじ1
2つまみ
作り方
  1. ボウルにたっぷりと水を張り、ケールの葉を浸けてよく振り洗いし、しっかりと水気を切ります。
  2. ケールを4センチに切り、キッチンペーパーではさんでしっかりと水気を拭き取り、食品用ポリ袋に入れ、オリーブオイルを加えて全体によくまぶします。
  3. 大きな耐熱皿に重ならないように②を広げて並べ、ラップをかけずに600Wの電子レンジでするまで4~5分ほど加熱します。パリッとしないときは、焦げないように20秒ずつ加熱を追加します。一度に並べきれないときは2回に分けて加熱してください。
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written by

堀 基子

/文・写真

野菜ソムリエ上級プロ。J Veganist。冷凍生活アドバイザー。アスリートフードマイスター3級。ベジフルビューティーセルフアドバイザー。ジュニア青果物ブランディングマイスター。アンチエイジング・プランナー。受験フードマイスター。第6回・第8回野菜ソムリエアワード銀賞受賞。