菜果図録
おなじみの結球タイプは名古屋生まれ! 白菜

 温かい鍋料理が何よりのご馳走になる10月から2月にかけて、その主役となる白菜が出荷の最盛期を迎えます。白菜はキャベツや小松菜と同じアブラナ科に属し、地中海沿岸が原産とされ、中国から伝来しました。白菜はその形状から、葉がしっかりと巻いたおなじみの結球タイプ、葉先が開き気味の半結球タイプ、葉先が開いた不結球タイプに分かれます。鍋料理や漬物などの和食に欠かせない野菜なので、古くから日本で愛されてきたのかと思ったら、その歴史は意外と浅く、わが国で栽培が始まったのは明治時代のことでした。明治8年(1875年)の東京博覧会に中国から出品された山東白菜を愛知県の植物栽培所が譲り受け、栽培に着手しましたが、なかなか結球せず、その育成は困難を極めたそうです。そして明治28年(1895年)に現在の名古屋市内で農業に取り組んできた野崎徳四郎氏の手により、ようやく日本初の結球白菜が誕生。その後、全国の農家さんへ伝えられ、広く生産されるようになりました。

 農林水産省の令和4年産の秋冬白菜の作況調査によれば、北海道から沖縄県まで全国各地で生産されており、全国の収穫量586,500トンのおよそ1/3を占める堂々の第1位は茨城県の194,500トンです。2位は長野県の59,400トン、3位は埼玉県の24,200トンで、以下、兵庫県の20,800トン、大分県の20,500トン、鹿児島県の20,400トンと続きます。

驚くほど多彩な白菜の種類

 よく見かける定番の白菜は円筒型の結球タイプで、上部がややとがった形の砲弾型もあります。よく栽培されているのは、「菜黄身(なおみ)」、「無双」、「黄ごころ」、「きらぼし」、「晩輝(ばんき)」などで、あいちの伝統野菜「野崎2号」、日本の白菜の原型の一つといわれる「松島白菜」の流れをくむ伝統野菜「仙台白菜」、ながさき伝統野菜の「辻田白菜」、江戸東京野菜の「下山千歳白菜」など大切に守り育てられている伝統的な品種もあります。また、ベータカロテンが豊富で断面がオレンジ色を帯びたオレンジ白菜の「オレンジクイン」、アントシアニンたっぷりな紫白菜「紫奏子(むらさきそうし)」、小ぶりなミニ白菜の「娃々菜(わわさい)」、「お黄にいり」なども人気です。他にも、細長い円筒型の「タケノコ白菜」、生食専用の「タイニーシュシュ」といった種類もあります。さらに、葉先がゆるやかに開いた半結球タイプでは「山東菜」や長崎の伝統野菜の「長崎白菜」など、結球しない不結球タイプでは「広島菜」などがあり、白菜の種類は実に多彩です。

白菜の栄養学

 白菜は緑黄色野菜ではなく淡色野菜で、100g当たり13kcalと低カロリーであるため、あまり栄養がなさそうだと思われがちです。しかし、100g当たりの生の白菜の栄養価をチェックしてみると、免疫力を高めて風邪などの予防に役立つビタミンCは19mg、体内の余分な塩分(ナトリウム)の排出を助けてくれるカリウムは220mg、成長期や骨粗しょう症の予防に欠かせないカルシウムは43mg、「止血のビタミン」と呼ばれるビタミンKは59μg、赤血球の生成に関わることから「造血のビタミン」とも呼ばれる葉酸は61μgと、意外に多くの栄養素が含まれています。ところで、白菜の白い軸にゴマ粒のような黒点が出ている場合がありますが、これはゴマ症と呼ばれるものです。土壌成分や収穫後の保存環境などが要因となり、ストレスを感じた白菜が抗酸化力にすぐれたポリフェノールを蓄積させて、黒い斑点ができるとされています。カビや病原菌ではありませんので、食べても問題はありません。

白菜の選び方、保存法、調理のコツ!

 丸ごと1玉を購入する際は、持ってみたときにずっしりと重く、葉先まで巻きがしっかりしていて、底の切り口が新鮮なものを選びます。半分や1/4にカットされたものの場合は、断面が盛り上がっておらず平らで、すき間がなく葉がぎっしりと詰まったものを選びましょう。
白菜はキャベツや大根と並んで重量野菜と呼ばれるだけあって、大きく重い野菜ですから、丸ごと1玉を使い切るのは、なかなか難しいもの。鮮度を守りながら保存するなら、1玉を丸ごと新聞紙などで包み、葉先を上にして立て、日光が当たらないベランダや玄関など冷しい場所で保存を。調理の際は外の葉から1枚ずつはがして使い、小さくなってきたらラップで包み、冷蔵庫の野菜室で立てて保存します。
カットされた白菜の場合は、芯の部分に成長点があるため、芯に包丁で切り込みを入れ、内側の葉から使います。数日で使い切れないときは、ザク切りにして生のまま保存袋に入れ、平たく広げて空気を抜き、密封して冷凍庫へ。調理の際は、凍ったまま煮汁に加えればいいので、とても便利です。
サラダなどで生食するなら、新鮮な白菜の柔らかい葉を選んで使い、白い軸は繊維を生かして縦に千切りにするのがおすすめです。

辣白菜(ラーパーツァイ)

 炒め物や点心など中華料理が食卓に並ぶ日に、ちょっと箸休めになる野菜料理が欲しくなりませんか。そんなときにぴったりなのが、この一品です。酸味と甘味に、ごま油の香り、ピリッとした辛味が加わった、浅漬け感覚の中華風サラダ。お子様向けには唐辛子としょうがを控えめにしてくださいね。

材料(2人分)
白菜の葉 3~4枚(250g)
小さじ1/2
しょうが 1片
唐辛子 1本
ごま油 大さじ1
<合わせ調味料>
りんご酢 大さじ2
砂糖 大さじ1
小さじ1/2
作り方
  1. 白菜の葉は5ミリ幅に、軸は縦に薄く切り、塩をふって10分ほどおいてから、水気を絞ります。
  2. しょうがは皮をむいて千切りに、唐辛子は種を除いて輪切りにし、①に加え、合わせ調味料も加えてよく和えます。
  3. フライパンにごま油を入れて中火にかけ、いい香りが立ってきたら②にかけ、全体をよく混ぜ合わせます。
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written by

堀 基子

/文・写真

野菜ソムリエ上級プロ。J Veganist。冷凍生活アドバイザー。アスリートフードマイスター3級。ベジフルビューティーセルフアドバイザー。ジュニア青果物ブランディングマイスター。アンチエイジング・プランナー。受験フードマイスター。第6回・第8回野菜ソムリエアワード銀賞受賞。