スーパーや直売所などの店頭で、ちょっと珍しい野菜に出会うと、嬉しくなって手に取ってしまうのは野菜ソムリエならでは。赤ワインを思わせる美しい色に心惹かれ、買いたくなる野菜の一つがトレビスです。紫キャベツと見た目が似ていますが、風味も食感もまったくの別物。紫キャベツはおなじみの緑色のキャベツと同じアブラナ科アブラナ属であるのに対し、トレビスはキク科キクニガナ属に分類されます。原産地は地中海沿岸とされ、イタリアやフランスなどでは古くから食用にされていたようです。
輸入されるトレビスはアメリカ産やイタリア産などが主ですが、北海道、宮城県、長野県、岡山県、愛媛県、鹿児島県など国内でも少しずつ生産が増えてきました。本来は冷涼な気候に向く作物で11月から3月にかけて収穫されますが、産地や栽培法によっては5月から10月にかけて収穫されるものもあります。
トレビスの仲間
トレビスは玉レタスと同様に丸く結球していて、やや厚い葉はサクサクと食感がよく、ほろ苦い味わいが魅力です。ちなみに、トレビスという名称はフランス語での呼び方で、イタリアの産地であるトレヴィーゾという地名に由来するのだとか。イタリアではラディッキオ、アメリカではレッドレタスと呼ばれています。
トレビスの仲間としては、円錐形で長さ20cmほどのトレビーゾ、葉が細長く結球しないタルティーボ、クリーム色に紫色の斑紋が散り、ゆるやかに結球した姿がバラの花のように美しいカステルブランコなどがあります。日本でも入手しやすいのは、同じキク科キクニガナ属のチコリーです。
トレビスの栄養学
トレビス100g当たりの栄養価を、同じキク科で結球するレタス(土耕栽培)と比べてみると、体内の余分な塩分(ナトリウム)の排出を助けるカリウムは290mgでレタスの約1.5倍、食物繊維総量は2倍近い1.1g含まれています。何よりも注目したいのは、トレビスならではの美しい色を生み出す天然の色素成分アントシアニンが豊富であること。アントシアニンは抗酸化力にすぐれたポリフェノールの一種で、紫キャベツ、紫たまねぎ、紫芋や紅芋、さつま芋の赤い皮、赤しそ、なす、ぶどう、いちご、ブルーベリー、プルーン、黒豆などの野菜や果物にも含まれています。アントシアニンについては近年、様々な研究が進んでおり、目の健康を維持する働きも期待されています。
トレビスの選び方、保存法、調理のコツ!
紫色が濃く、葉脈の白い部分が変色しておらず、葉がみずみずしく弾力があり、傷やしおれがなく、切り口が新鮮なものを選びます。
調理の際は包丁を使わず、手でちぎるのがおすすめです。サラダなど生食で使うことが多いトレビスですが、加熱すると特有の苦味が際立ちます。
生のままでも美味しいトレビスですが、アンチョビとにんにくを組み合わせ、ちょっとパンチの効いたソテーに。さっと加熱することでが引き立つトレビスのほろ苦さが、アンチョビとにんにくの風味によく合い、思わずワインが欲しくなる洒落た大人の一品に仕上がります。
● | トレビス | 1/2玉 |
● | オリーブオイル | 大さじ1 |
● | にんにく | 2片 |
● | アンチョビ(フィレ) | 1枚 |
● | 塩こしょう | 少々 |
- トレビス1/2玉は4等分に、にんにくは縦半分に切ります。
- フライパンにオリーブオイルと断面を下にしたにんにくを入れて中火にかけ、いい香りが立ってきたらアンチョビを入れ、木べらでアンチョビをつぶしながら、にんにくに火を通します。
- にんにくに火が通ったら火を強めてトレビスを入れ、サッと表面を焼きながらアンチョビをからめ、裏返して同様に断面を焼き、塩こしょうをふり、皿に盛り、にんにくを添えます。