菜果図録
冬の瓜という名なのに夏が旬! 冬瓜

 本格的な夏の到来とともに、店頭に並び始める冬瓜。7月から9月にかけて最盛期を迎える野菜でありながら、冷暗所なら冬まで保存できることから、この名がつきました。すぐれた保存性が冷蔵庫のなかった時代から重宝され、奈良時代の「正倉院文書」や平安時代の「本草和名」などの書物にも名前が記されています。

 1~2kgほどのミニ冬瓜から、10kgを超える大きなもの、丸い球形から長い円筒形まで、サイズも形も様々ですが、現在の主流は、縦に長い形で濃い緑色のつややかな表皮が特徴の「琉球種」です。一方、完熟すると表皮全体が白い粉をふいたようになる、丸型の「大丸冬瓜」のような種類もあります。この白い粉は、ブドウ、ブルーベリー、マンゴーなどの表皮にも見られるブルームという天然成分で、水分の蒸発を防ぐために植物が自ら分泌しているものです。
 冬瓜の都道府県別の生産量の第1位は2756tの沖縄県で、全国生産量9202tのうち約3割を占め、沖縄県の伝統的農産物として島野菜の一つにも数えられています。第2位の愛知県は1572t、第3位の神奈川県は1252 t、第4位の岡山県は1092tで、この上位4県を合わせると国内生産量の75%を超えます(2018年農林水産省の調査結果より)。

ビタミンCたっぷり!ダイエットにもオススメ

 熱帯アジアを原産地とする冬瓜は、3世紀頃には中国へ、5世紀頃には日本へ伝わりました。その伝来のルート上にあるインドの伝承医学アーユルヴェーダや中国の中医学に基づく薬膳においては、冬瓜は利尿効果、解熱効果、解毒効果を持つとされ、それぞれの地で愛されてきました。
 冬瓜は現代の栄養学から見ても非常にすぐれた食材です。100g当たりの含有量では、美肌や免疫力アップに欠かせないビタミンCは39mgで、温州ミカンよりも豊富です。また、利尿作用を持ち、体内の余分な塩分(ナトリウム)の排出を助けるカリウムは200 mg含まれており、むくみや血圧が気になる方におすすめです。さらに、100g当たり15kcalと低カロリーなうえ、腸から吸収された糖が脂肪として蓄積されるのを防ぐ働きが期待されるサポニンという成分も含まれていて、ダイエットに最適な食材でもあります。

冬瓜の選び方・保存の裏技・調理のコツ!

 購入の際は、ずっしりと重く、表面に傷のないものを。カットされている場合は、切り口が新鮮で、果肉が白く、傷みがなく、種の周囲まですき間なく果肉が詰まったものを選びましょう。
 購入後は、丸ごとなら風通しのよい冷暗所で保存します。包丁を入れると傷みやすくなるため、カットしたものは断面をラップで包んで冷蔵し、早めに使用してください。使いきれないときは、用途に合わせて角切りや薄切りにし、ラップで包むかジッパー付き保存袋に入れて冷凍保存を。凍ったまま加熱調理すると、生のものよりも火の通りが早く、時短にもなり、とても便利です。


ひんやり夏のミネストローネ

 暑さで食欲が落ちる夏は、具だくさんの冷たいスープで野菜不足の解消を。冬瓜にトマトのうま味がしみ込んで、噛むごとにジューシーなミネストローネです。温かくても美味ですが、動物性の食材を使用していないので、冷やしても油脂が固まることがなく、おいしく楽しめます。冷製スープパスタにもよく合います。

材料(2人分)
冬瓜 120g
たまねぎ 1個
トマト 2個
パプリカ 1個
オクラ 4本
おろしにんにく 小さじ1
オリーブオイル 大さじ1
200ml
ハーブソルト 小さじ1
作り方
  1. 冬瓜は皮をむき、種を除き、1.5センチ角に切ります。トマト、たまねぎ、パプリカも1.5センチ角に切ります。オクラは小口切りにします。
  2. 鍋にオリーブオイルとおろしにんにくを入れて火にかけ、いい香りが立ってきたらたまねぎを入れて炒め、透明感が出てきたらトマトを加え、トマトが崩れてきたら冬瓜、水、ハーブソルトを加え、フタをして煮ます。
  3. 冬瓜が透明になってきたらパプリカとオクラを加え、ひと煮立ちしたら完成です。
photo
written by

堀 基子

/文・写真

野菜ソムリエ上級プロ。J Veganist。冷凍生活アドバイザー。アスリートフードマイスター3級。ベジフルビューティーセルフアドバイザー。ジュニア青果物ブランディングマイスター。アンチエイジング・プランナー。受験フードマイスター。第6回・第8回野菜ソムリエアワード銀賞受賞。