野菜ソムリエの思ひ出の味
「さといも」を使った、初めての料理教室

2015年6月10日UP
先にジュニア野菜ソムリエ資格を取得した母が、交流の場を広げ、刺激を受けてキラキラと輝いていた。その素敵な姿を見て、「私も取得したい!」と思ったのがジュニア野菜ソムリエ受講のきっかけだ。資格取得後は、地元の生産者さんに協力を仰ぎながら、母の夢だった食育活動を親子で実施。そして、自分の夢だった料理教室講師としても活動出来るようになった。

初めて料理講師の依頼をされたのは、親子クッキング教室だった。テーマ食材は「さといも」。じつのところ、さといもはスーパーで特売品として販売されていても、皮をむく手間が面倒で敬遠しがちであった。しかし、さといもには胃腸の粘膜を保護する成分が含まれ、疲れている時や食欲のない時には積極的に食べたい食材だ。一般的には煮物のイメージが強いが、子どものおやつとしても食べてもらいたい。そこで考案した料理が「さといものころころぼーる」だった。

作り方はとても簡単だ。さといもを塩ゆでして皮をむき、いりごま、甘めの味噌、砂糖と一緒に軽くマッシュして丸める。片栗粉をまぶして、少なめの油で揚げるだけである。おいしく仕上げるための鍵は、さといものゆで加減だ。ゆで過ぎれば丸まらない。しかしゆで時間が短ければ中まで火が通らない。「さといものころころぼーる」は、悪戦苦闘しながら完成させたレシピだった。試作を重ねるうちに、さといもの皮を上手にむく方法をマスターした。塩ゆでした後に、水にさらしながらむけばよいのだ。子どもでも簡単に出来る方法のため、さといもを敬遠する障壁がひとつ取り除かれることとなった。

親子クッキング教室の当日、参加されたお母さんからは「今晩のごはんに早速作ります!」、小学生のお子さんからは「さといもってこんなに美味しかったんだ」といった嬉しい声を多数いただいた。準備段階で何度も失敗した分、喜びもひとしおだった。この小さな成功は、料理教室講師としての小さな自信につながった。

このことを機に、2ヶ月に一度実施していた保育園での食育活動でもさといもを食べてもらいたいと思った。食育セミナーでは、野菜が苦手で食べられず泣いてしまう子どももいる。どうにか今回は笑顔で食べてもらいたいという思いと、バレンタインの時期とが重なったため、チョコレートと野菜を一緒に食べる「チョコベジ」で食べてもらうことにした。さといもとチョコレートの組合せは甘さのバランスがよく、スイートポテトを食べているような味になる。いつも「食べられない」とこっそり話してくる野菜嫌いの子どもが、この日ばかりは「僕、さといもが食べられた!」と自信をもって話に来てくれた姿が印象的だった。子どもたちの中に野菜への好奇心を育ててあげられたことは、食育活動やジュニア野菜ソムリエとしての活動を続ける自信となり、本当によかったと実感した。

娘ふたりの母として野菜・果物の魅力をママ目線からもご提案できるよう、人と人の繋がりを大切にしながら、日々勉強していきたいと思っている。

橋元幸美さんのプロフィール
香川県小豆島在住。ジュニア野菜ソムリエ。料理教室『MOGU MOGU』を香川県、岡山県で開催中。小豆島の特産品であるオリーブオイルをエッセンスに加え、旬の野菜の機能性を生かした食べ合わせレシピを提案している。
ブログ http://ameblo.jp/rionkaela76/

取材 / 文:野菜ソムリエ / ベジフルビューティーアドバイザー タナカトウコ