野菜ソムリエの思ひ出の味
初収穫したマコモタケ

2015年7月8日UP

私の農園でマコモタケの栽培を始めたのは平成14年のことだ。当時、主に栽培していたのは米と椎茸。ハウスを使用せず風土を生かして栽培出来るものは他に何かないかと探していたところ、行き着いたのがマコモタケだ。水がきれいなこと、日光がよく当たること、一日の寒暖差があることなど、マコモタケの栽培条件はこの地域の風土によく合うものだった。
マコモタケの栽培は西日本では初めての取り組みであったため、長野県の栽培農家さんたちに指導を賜りながら1年間試行錯誤を重ね、ちょうど父の誕生日でもある9月5日にめでたく初めての収穫に至った。地域の方々と一緒に天ぷらにして食べたところ、タケノコとも違う、アスパラガスとも違う、さつまいもとも違う、今まで経験したことのない食感と味に感動した。そして、マコモタケを地域おこしの起爆剤にし、地域の特産品に育てあげたいという意気込みが生まれた。私の人生ががらりと変わった瞬間だった。
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以来、マコモタケ栽培が本業となった。マコモタケは知る人ぞ知る中華の食材だが、まだまだ知名度は低いのが現実だ。しかし、中華料理に限らず、和洋中どの料理でもおいしくいただける。調理法や切り方で食感が変化し、淡白な味わいは様々な食材との相性もよい。相手を引き立てながら、自分もしっかりと主張してくる。そういうところが、魅力的で大好きだ。

マコモタケの栽培が軌道に乗ってしばらく経ち、愛媛県産マコモタケをより多くの方に知ってもらう方法を学びたいと思っていた頃、素敵な先輩野菜ソムリエさんたちに出会った。お互いに向上し合う姿に共感し、ジュニア野菜ソムリエの受講を決めた。資格取得後は、地元活性化のためのイベント活動や食育活動でマコモタケを使った教室の開催などをしている。昨年は、ついに全国マコモタケシンポジウムが開催された。野菜ソムリエの仲間がマコモタケ料理を作り、多くの方から好評を得ることが出来た。
また、クッキングスタジオを任されプロデュースをしている日本有数の直販所「さいさいきて屋」では、野菜ソムリエを講師に迎え、様々な講座の企画運営もしている。今はまだ初級のジュニア野菜ソムリエだが、いずれは中級の資格を取得し、野菜ソムリエとして活動したいとも思っている。

森智子さんのプロフィール
愛媛県今治市在住。ジュニア野菜ソムリエ、食育マイスター、愛媛県農業指導士。マコモタケやブルーベリーを栽培する「森のともだち農園」を経営。平成14年から地域活性化のためにマコモタケの栽培に力を入れる。日々、マコモタケの持つ不思議さに魅了されている。

取材 / 文:野菜ソムリエ / ベジフルビューティーアドバイザー タナカトウコ