菜果図録
日本各地で異なる名を持つ伝統野菜 金時草

2016年8月31日UP
 暑い夏に旬を迎える金時草は、熱帯アジア原産で、キク科サンシチソウ属の多年草です。
「金時草」といえば石川県金沢の加賀野菜として知られていますが、実は熊本では「水前寺菜」と呼ばれており、日本へ伝来して間もない頃から栽培されてきたそうです。さらに愛知県では「式部草」と呼ばれ、沖縄では島野菜「ハンダマ」の名で古くから不老長寿と血の薬として親しまれています。このように各地で別の名前を持ちながら、それぞれの地で伝統野菜として大切に育てられてきた作物というのは、ちょっと珍しいかもしれませんね。

 金時草の最大の特徴は、葉の表面は濃い緑色なのに、裏面は鮮やかな紫色をしていること。この美しい紫色は、ブルーベリーなどに含まれていることで知られる、抗酸化力にすぐれたポリフェノールの一種のアントシアニンによるもの。他にも、ビタミンB2、カロテン、鉄分なども多く、とても健康的な野菜です。肉厚の葉を生のままで食べると、パリッと軽い歯ごたえがあり、色合いの美しさからもサラダによく合います。また、火を通すとぬめりが出てきて、ちょっとスパイシーな個性的な香りが引き立ってきます。葉だけをさっと湯通しして、おひたし、和え物、酢の物などにしますが、ゆで汁が鮮やかな紅色になりますので、その湯でご飯を炊けば美しいピンク色に炊き上がりますし、寒天やゼリーなどのお菓子作りにも活用できます。
 葉を摘み取った後の茎は、水を入れたコップに挿しておき、根が出てきたら土に植えると、上手く育てば再び葉が育ち、収穫が楽しめます。ぜひ試してみてくださいね。

金時草とひじきの鉄分補給ジャーサラダ

金時草とひじきの鉄分補給ジャーサラダ

 鉄分豊富な金時草とひじきを使ったサラダには、鉄分の吸収を助ける良質なたんぱく質のツナを加え、ビタミンCを豊富に含むレモン果汁を使ったドレッシングを。貧血の予防にオススメのメニューです。

作り方
 熱湯消毒した瓶に、オリーブオイルとレモン果汁、塩こしょうを混ぜたドレッシングを入れます。さやから取り出したエダマメ、水で戻したひじき、輪切りのキュウリ、油分をきった缶詰のツナ、茹でたインゲン、半分に切ったミニトマトを順に詰め、最後に金時草をたっぷりと詰めてふたを閉じ、冷蔵庫へ。食べる直前に瓶ごと振り、ドレッシングを全体になじませ、器に盛ります。

文/写真:野菜ソムリエ 堀基子