菜果図録
「香り松茸、味しめじ」の正体は!? しめじ

 秋はきのこがおいしい季節。天然の本しめじは9月から11月にかけて旬を迎えます。ですが、スーパーの店頭には、季節を問わず、しめじが並んでいますよね。これは一体どうした訳なのでしょうか。

しめじの仲間いろいろ

 シメジ科シメジ属に分類される「本しめじ」は、古くから日本に自生していた、松茸と同様に菌根性のきのこで、北半球温帯以北の森や林に分布しています。アカマツなどの樹木を好み、木の根元の地面を占めるように生える様子から「占地」、湿った土地に生えることから「湿地」の名が付いたともいわれています。ふっくらと丸いカサの下に白く太い軸があり、うまみ成分が松茸や他のきのこを上回るほど豊富だいわれ、「香り松茸、味しめじ」と称えられるのは、この「本しめじ」のことです。人工栽培が難しいとされていましたが、ようやく成功して近年は生産者が増え、「大国本しめじ」などの名称で生産販売されています。
 一方、おなじみのしめじのパッケージには「ぶなしめじ」と表示されています。こちらはシメジ科シロタモギタケ属に分類され、盛んに人工栽培されているため、年間を通じて入手できます。「ぶなしめじ」を改良した真っ白なタイプも今ではすっかり顔なじみです。ちなみに、林野庁が発表した令和2年のぶなしめじの集荷販売実績を見ると、1位が長野県の約51,965トン、2位は新潟県の約23,163トン、3位は福岡県14,986トンとなっています。
 また、ぶなしめじを大きくしたような形状の「はたけしめじ」もあります。キシメジ科に分類されるきのこで、カサが平たく大きく、味が「本しめじ」に近いといわれています。近年では人工栽培のものが「大粒丹波しめじ」などの名称で生産販売されています。
 なお、かつて「しめじ」の名で販売されていた「ひらたけ」というきのこは、ヒラタケ科に属する別種です。

ぶなしめじの栄養価

 もっとも入手しやすい「ぶなしめじ」に含まれる100gあたりの栄養価を調べてみると、18kcalと非常に低カロリーで、ダイエットにぴったりな食材です。食物繊維は3.5gと多く、特に便のかさを増して便通を促す効果が期待できる不溶性食物繊維が3.2gと豊富です。
 とりわけ注目したいのは、成長ホルモンの分泌を促し、新陳代謝を活発にする他、肝臓の代謝や解毒の働きをサポートするといわれるオルニチンが100mgも含まれていること。これはシジミの約5~7倍に相当します。さらに、免疫力の活性化が期待される、食物繊維の仲間のβグルカンも1.8gと豊富に含まれています。
 また、糖質の代謝を助けるビタミンB1、肌や髪などの細胞の再生や粘膜の維持に役立つビタミンB2、造血のビタミンとも呼ばれる葉酸、カルシウムの吸収を助けるビタミンD、体内の余分な塩分の排出を助けるカリウム、リラックス効果で注目されるGABAなども含まれ、とても健康的な食材です。

ぶなしめじの選び方・保存法・調理のポイント!

 店頭で選ぶ際は、カサが開き過ぎておらず、密集しており、軸が白いものを選びます。
 3日以内の保存なら冷蔵庫の野菜室へ。もっと長く保存する場合は、石づきを切り落とし、ほぐしてから、食品用ジッパー付き保存袋に入れ、薄く広げて冷凍庫へ。調理の際は凍ったまま加熱します。冷凍すると、うま味成分のグアニル酸が増え、おいしさがアップしますので、非常にオススメな保存法です。
 市販の「ぶなしめじ」のほとんどは衛生管理された工場で栽培されるため、調理前の水洗いは不要です。「ぶなしめじ」に含まれるビタミンB群やうま味成分のグアニル酸などは水溶性であるため、水洗いすると流出してしまいます。
 調理の際は、石づきを切り落とし、ほぐして使います。汁物や煮物の場合は、水からじっくり通し、ぐらぐら煮立てずに火を通すと、うま味が引き出され、おいしく仕上がります。


ぶなしめじと舞茸のオートミール豆乳リゾット

 ぶなしめじと舞茸の風味を生かし、豆乳でクリーミーに仕上げた、オートミールのリゾットです。オートミールは歯ごたえのある食感が楽しめるロールドオーツのものを使っていますが、メーカーや商品によって加熱時間が異なりますので、お好みの食感になるように調整してください。

材料(2人分)
ぶなしめじ 1/2パック
舞茸 1/2パック
オートミール(ロールドオーツ) 30g
豆乳(成分無調整) 150ml
オリーブオイル 小さじ2
小さじ1/2弱
こしょう 少々
粉チーズ 小さじ2
パセリ(みじん切り) 少々
作り方
  1. ぶなしめじは石づきを切り落とし、ほぐします。舞茸は食べやすい大きさにほぐします。
  2. フライパンにオリーブオイルを入れて中火にかけ、①を炒め、火が通ったら豆乳とオートミールを加え、沸騰したら火を弱めて3分ほど煮ます。
  3. 塩こしょうで味を調え、器に盛り、粉チーズとパセリのみじん切りを振ります。
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written by

堀 基子

/文・写真

野菜ソムリエ上級プロ。J Veganist。冷凍生活アドバイザー。アスリートフードマイスター3級。ベジフルビューティーセルフアドバイザー。ジュニア青果物ブランディングマイスター。アンチエイジング・プランナー。受験フードマイスター。第6回・第8回野菜ソムリエアワード銀賞受賞。