菜果図録
北海道と青森県が2大産地!長芋

 風邪が心配なこの季節。のどが痛くて食欲がないときにおすすめなのが、古くから「山のうなぎ」と称されてきた滋養食、長芋です。
長芋はヤマノイモ科ヤマノイモ属に分類されるのですが、一般的にヤマノイモと呼ばれるものは、ヤマノイモ(山芋)、ジネンジョ(自然薯)、ダイジョ(大薯)の3種類に分けられます。そのうちのヤマノイモに、長形種の長芋、扁形種のいちょう芋、塊形種のつくね芋(大和芋)が含まれます。自然薯はもともと日本に自生していましたが、長芋の原産地は中国で、日本でも江戸時代には栽培の記録が残っています。

 全国の年間のヤマノイモ出荷量150000トンのうち、第1位は北海道69400トン、第2位は青森県51900トンで、2大産地となっています(令和3年産指定野菜及び指定野菜に準ずる野菜の作付面積、収穫量及び出荷量より)。収穫期は年2回で、11月から12月にかけての秋掘りと、4~5月の春掘りがあり、保存性が高いため低温冷蔵庫で貯蔵され、年間を通じて全国へ出荷されますが、今の時期は収穫まもない美味しさが楽しめます。

長芋の品種いろいろ!

 北海道や東北で多く生産されている長芋は、それぞれの土地で育ったものの中から、すぐれた品質のものが選抜され、様々な品種が生まれてきました。代表的なものをあげると、昭和45年頃に北海道音更で始まった長芋栽培の中で確立された「音更系統」、北海道幕別町で誕生した長芋特有のひげ根がない「和念じょ」、北海道十勝で生まれた新品種「とかち太郎」、青森県を代表する「ガンクミジカ」とその改良品種「ガンクミジカ大正」、ガンクミジカの突然変異を育成した「トロフィー」、バイオ技術で生まれた「ミニチューバ―」、千葉在来種の長芋「ずんぐり太郎」と大和芋を掛け合わせた強い粘りが人気の「ネバリスター(根張星)」などがあります。

ダイエットやインフルエンザ予防にも!長芋の栄養学

 加熱しないと食べられない芋が多い中、長芋や山芋はなぜ生のままで食べられるのでしょうか。それは、でんぷんを分解する消化酵素アミラーゼが含まれているからです。アミラーゼはヒトの唾液にも含まれている成分で、このアミラーゼが長芋そのものに含まれるでんぷんを分解してくれるため、加熱せずに食べられるのです。ちなみに、とろろにすると、長芋の細胞壁が壊され、よりアミラーゼの働きがよくなります。
 また、長芋のでんぷんはレジスタントスターチという消化されにくい性質で、食物繊維と同じような働きを持つため、腸内環境を改善する働きやダイエット効果が期待できます。ちなみに長芋100g当たりのカロリーは64kcalでさつまいもの約半分、筋肉などの材料となるたんぱく質は2.2gでさつまいもの約1.8倍と、やはりダイエットに適した食材であるといえそうです。
 ところで、青森県と弘前大学の共同研究によれば、長芋に含まれるディオスコリンαというたんぱく質は、インフルエンザ(Aソ連型・A香港型・B型)を抑制する効果があると発表されています。このディオスコリンαは加熱に弱いため、効果を期待するなら生食がおすすめとのことです。

長芋の選び方・保存法・調理のコツ!

 表面に変色や傷があるものは避け、手に持ってみて、ずっしりと重いものを選びます。カットされている場合は、切り口が変色している物を避け、切り口が白くみずみずしいものを選びましょう。
保存する際は、丸ごとの長芋がおがくずと共に箱に入っている場合は、そのまま箱のふたを閉じて、風通しの良い冷暗所に保存します。カットされたものは、切り口ラップで包み、冷蔵庫の野菜室で保存を。すりおろしたとろろは、冷凍保存できます。食品用密封袋に入れ、空気を抜き、平たく伸ばして冷凍しておけば、必要な分を割って使えるので便利です。
 調理の際、手がかゆくなるのは、長芋に含まれるシュウ酸カルシウムの針状の結晶が皮ふに刺さるためです。シュウ酸カルシウムは酸に弱いので、調理の前後や途中に用意した酢水で手を洗うと、かゆみが治まります。また、長芋の皮は非常に薄く、アクが少ないので、気になるひげ根だけ取り除けば、美味しく食べられます。とろろを作るときも、皮ごとすりおろしてOKです。ぜひ試してみてくださいね。


長芋ステーキ

 長芋を皮ごと使ったステーキです。長芋は生のままでも食べられますので、レアな焼き加減にすればシャキッとした歯ごたえを楽しめます。ホクホクとした食感がお好きな方は、弱火でじっくり焼き上げてください。今回はバターしょうゆで仕上げましたが、お好みでみりんを加えても美味です。

材料(3~4人分)
長芋 300g
バター 10g
しょうゆ 大さじ1
万能ねぎ 3本
作り方
  1. 長芋は皮ごとよく洗い、水気をキッチンペーパーで拭き取り、ひげ根を取り除き、厚さ1センチの輪切りにします。
  2. フライパンを中火にかけ、バターを入れ、溶けてきたら①の長芋を並べ、3分ほど焼きます。
  3. ②を裏返し、さらに3分ほど焼き、仕上げにしょうゆを加えて全体にからめ、器に盛り、小口切りにした万能ねぎを散らします。
photo
written by

堀 基子

/文・写真

野菜ソムリエ上級プロ。J Veganist。冷凍生活アドバイザー。アスリートフードマイスター3級。ベジフルビューティーセルフアドバイザー。ジュニア青果物ブランディングマイスター。アンチエイジング・プランナー。受験フードマイスター。第6回・第8回野菜ソムリエアワード銀賞受賞。