菜果図録
未熟なら野菜、完熟すればフルーツ!青パパイヤ

 初夏の気配を感じると、南国生まれの野菜や果物が恋しくなってきませんか。今回ご紹介する青パパイヤも、その一つです。熱帯アメリカ原産のパパイヤはトロピカルフルーツとして知られていますが、アジアの国々や沖縄では未熟果の青パパイヤが野菜として扱われ、またの名を野菜パパイヤとも呼ばれます。原産地は中南米で、16世紀の大航海時代、探検家に発見されて広まり、沖縄へは18世紀頃、中国から台湾を経て伝わったといわれています。

 国内では鹿児島県、宮崎県、沖縄県など温暖な地域で栽培されていますが、近年は千葉県などでも生産に力を注いでいます。農林水産省の令和元年産特産果樹生産動態等調査によると、パパイヤの全国の出荷量139.1トンのうち、1位の鹿児島県が45.9トン、2位の宮崎県が35.6トン、3位の沖縄県が33.6トン、4位の千葉県が24.0トンと続きます。
 青パパイヤ専用に改良された品種の他、トロピカルフルーツとして栽培される品種を青いうちに若採りする場合もあるのだとか。品種としては、沖縄で主流となっている「台農2号」、「オキテング」、「グランデ」をはじめ、実が大きく多収量の「ベジキング」、フルーツ用にも適した「フルーツタワー」、低いうちから実がなる矮性種の「洛陽」、葉柄が赤く完熟後はフルーツとして楽しめる「甘泉DX」など、様々な種類があります。
 ちなみに、パパイヤは他の果樹と同様、受粉すると果実をつけます。しかし、単為結果性があるため、受粉しなくても果実が実ります。雌株の果実は丸い球形や卵型に、両性株の果実は細長い卵型や洋梨型などになることが多いそうです。

青パパイヤは酵素の王様!

 未熟な果実とはいえ、栄養価にすぐれた青パパイヤ。100g当たりの栄養価を調べてみると、赤血球の生産を助け、胎児の健やかな生育にとって大切な葉酸は38μg、体内の余分な塩分(ナトリウム)の排出を助けてくれるカリウムは190mg、骨の健康に欠かせないカルシウムは36mg、腸内環境を調えてくれる食物繊維の総量は2.2gで、未熟果とはいえ多くの栄養素が含まれています。中でも、免疫力の維持や美肌に欠かせないビタミンCは、なんと温州みかんよりも多く、45mgも含まれています。
 また、青パパイヤに含まれる成分うち、注目株といえば、たんぱく質や脂質を分解するパパイン酵素です。完熟したフルーツパパイヤにはほとんど含まれず、未熟な青パパイヤに豊富に含まれています。そのパワーは、すりおろした青パパイヤに肉を長時間漬けこむと、溶けてしまうほど。収穫の際に切り口から出る白い汁が付いただけで、肌がかぶれることもあります。このパパインをはじめ様々な酵素を含むことから、青パパイヤは「酵素の王様」と呼ばれています。

青パパイヤの選び方、保存法、調理のコツ!

 店頭で選ぶ際は、濃い緑色で、表皮に傷がなく、ずっしりと重い物を選びます。
 購入後、保存する際は、低温障害を起こしやすいので、新聞紙などで包み、ポリ袋に入れて、冷蔵庫の野菜室で保存すれば、1週間は日持ちします。もっと長く保存するなら、角切り、薄切り、千切りなど、調理しやすい形状に切り、食品用保存袋に入れて冷凍すれば、1カ月は大丈夫です。
 調理のポイントとしては、調理の際に手が赤くなったり、かゆみが出たり、かぶれることがありますので、肌の弱い方はゴム手袋や使い捨て手袋をお使いください。また、ソムタムサラダなどで生のまま食べるときは、必ず水にさらしてアク抜きしましょう。


青パパイヤと鶏手羽元のスープカレー

 青パパイヤに含まれるたんぱく質分解酵素パパインの力を利用し、肉を柔らかく仕上げたのが、今回のメニューです。骨付き肉が短時間でほろりと柔らかく仕上がりますので、ぜひお試しを。

材料(2人分)
青パパイヤ(小) 1/4個
にんじん 1/2本
たまねぎ 1個
鶏手羽元 6本
オリーブオイル 大さじ1
おろしにんにく 小さじ1
おろししょうが 小さじ1
ひとつまみ
こしょう 少々
500ml
顆粒コンソメの素 大さじ1
カレーパウダー 小さじ1~2(お好みの量)
作り方
  1. 青パパイヤは縦半分に切り、皮をむき、種を除き、2センチ角に切り、塩こしょうをすり込んだ鶏手羽元と合わせ、軽く混ぜ合わせておきます。たまねぎはくし切りに、にんじんは早く火が通るように厚さ8ミリの輪切りにします。
  2. 鍋にオリーブオイル、おろしにんにく、おろししょうがを入れて強めの火にかけ、鶏手羽元を入れ、表面がこんがりと色づくまで焼き、たまねぎとにんじんも加えて軽く炒めます。
  3. ②に水を加え、ふたをして中火にかけ、沸騰したらコンソメの素を加えて15分ほど煮込み、仕上げにカレーパウダーを加えて味を調えます。白米、雑穀米、お好みでパンやナンを添えて。
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written by

堀 基子

/文・写真

野菜ソムリエ上級プロ。J Veganist。冷凍生活アドバイザー。アスリートフードマイスター3級。ベジフルビューティーセルフアドバイザー。ジュニア青果物ブランディングマイスター。アンチエイジング・プランナー。受験フードマイスター。第6回・第8回野菜ソムリエアワード銀賞受賞。